二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

アニマ -6

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

「では母は」「本当の父はどこに」「なぜ俺を謀ったのか」
 老人の声はシンプルな答えを発しました。
「本当の父は、お前が殺した。母は、お前を治すために儂に体を売っておったのだよ」
 青年は、老人を投げ出して、おののき、少しどうしていいかわからない様に視線を動かして、寺を出て走り出しました。何ともドラマチックなことにそのときは桜の季節で、はらはらと桜が散っていました。桜の中を延々と走り続けた後、疲れ果て、喉も枯れ、ひどい空腹感が襲ってきて彼は桜の園で倒れ込みました。
 こんなことになるのなら、見えなければよかった。見えない方が幸せでした。この世は醜い。彼にとっての世界は酷いものだったのです。
 もう死んでもいいと思って目を閉じると、あろう事か、仏様が現れました。
「仏などいらない。この世界に救済は無意味だ」
 彼は仏が口を開くより前に否定の言葉を口走って、わずかな力で目を開きました。するとどうでしょう。小さな足が見えるのです。青年によってきました。
「お兄さん、大丈夫?」
 栗色の髪をした少年でした。青年は少年など見たこともありませんでした。少年は彼を少々手荒に扱って、ずるずると川縁まで運んでゆきました。少年は彼の唇をすこしずつぬらし、水を飲ませてゆきました。
 活力は戻っては来ませんでしたが、歩くことはできるようになりました。何も考えることができないまま、彼はふらふらと栗色の髪をした少年の後をついて行きました。少年は天涯孤独の様でしたが、彼に少しばかりの食物と、休息を与えました。
「妹が死んだばかりなんだ」
 少年がそういうのを青年は聞き逃しませんでした。彼は少年に報いようと、近隣に強盗に入るようになりました。金品じゃありません。食べ物を盗るのです。それ以外、彼らはどうやって生きてゆけたのでしょう。
 醜い欲望の行き先を見いだせないままの青年は、少年を抱くことでなんらかの安息を得ました。彼の心は渇望したまま、次第にその空虚さは宗教へのアンチテーゼにすり替わってゆきます。
 彼はもう仏など信じませんでした。その上、彼は適当な神を作って今で言う、まぁ、新興宗教の教祖みたいな存在になり始めました。彼は平然と嘘をつき、その権力を守るために人を殺し続けました。正当性のために女性を強姦して、彼のものになった少年を守るためならなんでもしました。
 ある日、少年は暗い顔で彼に言いました。
「こんなことしたら天国に行けなくなっちゃうよ……」
 青年は少年を激しく責めました。二人はつかみ合いになり、哀れな青年……あぁ、もうすでに大分中年にさしかかっていましたが……は、あっけなく死んでしまいました。
 これが僕の六道巡りの出発点です」
 俺は酷い眠気に抗いながら彼の話を聞いていた。たっぷり午後を使ったその話のせいで、喫茶店の窓の外は酷く暗かった。
「行こう、閉店時間だ」
 話し終えて少しつかれた印象の骸をつれて、喫茶店を出た。冬が近いせいで、頬に当たる風が冷たかった。
作品名:アニマ -6 作家名:ペチュ