観測者と一等星
一番知りたかった、何故僕を頼ってくれたのかってことに別に意味なんて無かったのが正直ショックで、思わず頭を抱えてしまった。最初の一手をかわされてしまって、何だか拍子抜けだ。拗ねておざなりに返事をする僕に構わず、臨也さんはその褐色の瞳を実に楽しげに細めてみせた。いつものあの、さて、という一言と共に告げるゲームの始まりの瞬間のように。そうしてふと言葉を切って、こちらの瞳の奥の方を、まるで虹彩の色を確かめるように注意深く覗き込む。僕は息をするのも忘れて、強い視線を受け止める。否、正直に言おう。見惚れてしまった。
「なんで君のこと、忘れられなかったんだろう」
その表情は実に人間味溢れた、けれど僕の知る臨也さんからは想像も付かないくらい、ちょっとした感傷と諦観が見て取れる、例えばそう、まるで昔を懐かしむ大人の男みたいな、弱った人間のそれだったのだ。
end.