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1cm

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何の巡り合わせか、俺と兄さんはここ半年顔を合わせていない。

 別に喧嘩をした訳ではなく、ただ単に間が悪かった。
 俺が会議から帰ると兄さんがスイスへ出稼ぎに行ってしまっていて、兄さんが帰ってくる頃に俺が上司から召集を受ける。長々しい上司との話し合いを切り上げるとテーブルに『アントーニョん所のトマティーナ行って来るぜ dyお兄様』等と書かれた書置きがあったりと、見事に6ヶ月もの間兄の顔を見ていなかった。

 2日と間を空けずに送られてくるメールや電話、彼のブログで現状の心配はしていなかったものの、一抹の寂しさを感じる。
 今日はやっと枢軸強化合宿を終え、3週間ぶりの帰宅だった。
 すっかり日は暮れて、辺りは真っ暗だ。
 当然無人の家は周囲に溶け込んでしまうのだが・・・。
 3週間ぶりに見る俺と兄さんの家はしっかりと輪郭を保っていた。



 「お帰りヴェストォー!!」

 戸を開くと同時に兄さんが腹に突撃してきた。
 いつもなら「もし俺じゃなかったらどうする!?ちゃんと人を確認して戸を開けろ!」か「犬じゃあるまいに。」と躾けるのだが、今日は大目に見ることにした。

 「ただいま、兄さん。」

 俺だって会いたかったのだ。

 後ろ手に鍵を掛け、ぎうぎうと締め付けてくる兄に応えて抱きしめる。
 俺が幼かった頃よりも随分痩せた体はすっぽりと腕に納まった。
 懐かしい兄のにおい。
 半年会っていないとこうも懐かしいのか。
 自分の頭より幾分低い位置にある髪に顔を埋め、鞄を持っていない左手で髪を梳いた。

 ・・・違和感が生じた。

 「どした?」

 強張った俺に気付いた兄が見上げてきた。
 少し長めのベリーショートだった髪が、ショートまで伸びていた。
 よくよく見ると黒色の輪ゴムのようなもので後ろを括り、銀髪の尻尾がお情け程度に揺れていた。
 前髪は目にかからないようにヘアピンで留められている。
 ヘアピンには黄色い小鳥が笑っていた。

 とても可愛らしい小鳥だった。

 
作品名:1cm 作家名:akira