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1cm

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 「兄さん、その髪はどうしたんだ・・・」
 「髪?あぁ、そう言やちょっと伸びたな。」

 ちょっと所じゃない!!

 俺が最後に見た兄さんの髪はまだこんなにも伸びていなかった。
 もし、俺と会っていない間一度も散髪をしていないのなら、1ヶ月:1cm=6ヶ月:6cm伸びている計算になる。

 「あ、このヘアピンカッコイイだろ。こないだ日本に遊びに行った時に見つけたんだぜ。」

 ・・・俺と会う時間はないが、日本に遊びに行く時間はあるのか。

 突然ユラリ、とした感情が湧き上がってきた。

 「お、おい、ヴェスト!?」

 抱きしめていた兄さんの腕を取り、バスルームに向かった。
 上着を脱いでおくように、と言い残して洗面台の引き出しと物置をあさり、すぐさま兄の元へ戻った。
 言いつけどおり上半身を晒していた兄を持ってきた折りたたみ椅子に座らせ、タオルで首元をまいた。
 新聞紙で床を覆うのも忘れない。
 ビニール袋で作った即席のポンチョを被らせれば準備は万端だ。
 俺は散髪用の鋏を構えた。

 「さぁ兄さん、髪を切ろうか。」
 「今からか!?」
 「明日は行きつけの床屋の定休日だし、兄さんだってその頭はうっとおしいだろう。」
 「いや、別に/」
 
 バリカンを構えなおす。
 
 「ではこちらにするか?」
 「鋏でお願いします。丁寧に優しくお願いします。」

 
作品名:1cm 作家名:akira