比翼の鳥
「イギリスさん。御茶にしましょう」
「おう」
例えばのお話を一つ、してみましょうか。とても、とても不躾なお話です。
ですのですぐに忘れてしまいましょう。これは私の愚かな戯言なのです。
私と貴方は見目性質、生まれつき持ち合うものはそれぞれ異なるけれど、それでも思い描いてしまったのです。
貴方と共に飛ぶ事を。共に片翼を並べ空を舞うことが出来れば。と、今日のような晴れ渡る空を見上げ何度も考えました。
穏やかに、青々と広がるこの秋晴れに富んだ大空の中を。
私と貴方では上手く風を切ることが出来るでしょうか。バランスを失って落ちてしまわないでしょうか。
私は貴方と比べれば体も小さく、なにをやったところで見劣りしてしまいます。
私が貴方と並んで立った時。ほんの少しだけ、いつもより背筋を伸ばし視線を上げていることを知っていますか?
「今日は以前イギリスさんに教えて頂いたスコーンというものを作ってみたのです」
「どうりで!キッチンからそれっぽい匂いがしてると思ったんだ」
「お飲み物は如何いたしましょう。煎茶ではやはり合わないでしょうか…」
「そうだな…」
私の料理を美味しいと褒めてくださる度、私がどれほど嬉しく歓喜に満ち、ほんの僅かな自信を感じることが出来ているなど。貴方は余程知らないでしょう。
私の家を物珍しさに訪れてくださる度、貴方の名残を忘れないようこっそり数えているなど。そんなことは知られてたまるものですか。
どうか、教えてください。
その碧色の瞳で見る世界はどのように映っているのですか?
その麗しき異国語で語る唄はこの世のどこまで届くのでしょうか?
共に一つとなれば私にも知り得ることが出来るのでしょうか?
貴方の世界を、私は見てみたいのです。