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BACK TO THE 1999

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「スーツでしょ」
「ハカマだってハカマ! 日本人はハカマ!」
「ド金髪で何言ってんスか。つうか世良さんがハカマとかいかにもすぎて笑うしかねえッスよ」
「はー!?」
 シャワー室から出てくるなり半裸でそんなことをギャーギャー言い合う世良、赤崎といういつもの2人組を見て、ジーノなどは「まるで子犬の喧嘩だね」なんて言っている。村越としては、決してそんなファンシーな光景には見えないのだが……。おまけにふと気が付けば2人の後ろにはいつもどおりにオドオドする椿がいて、どちらかと言えば東東京幼稚園カッパ組の光景か何かのように――いや、これもファンシーか。
「ハカマはカッケーの! 男度が5割り増しなの!」
「ぜってースーツっすよ。アンケート取ればはっきりしますって」
「んだよ、ハカマだって……ねえコシさん!」
「あ?」
 まさかこっちにやって来るとは。
 意味不明な言い争いに巻き込まるのは勘弁したいが、村越を見上げる世良の目は『俺かわいい後輩ッスよねかわいいッスよね無視とかできねッスよね』という輝きを放っている。世良のこれは一種の才能だ。
「コシさんはぜってーハカマだ! 同じ男である俺にはわかる!」
「……なんなんだ、その、さっきからスーツだのハカマだの」
 これ以上世良の後輩の目にあてられるのも、と村越は思わず一番話の通じそうな椿に視線を向けたのだが、案の定さっと反らされてしまった。まあ、気まずさも最高潮なのだろう。
「成人式ッスよ成人式! 世良さんヤンキーだから成人式は純白のハカマとか言うんス」
「ヤンキーじゃねえよ! 純白でもねえよ! なあ椿、ぜってえハカマだからな。ハカマでビシッと決めて一発逆転だ」
「なんで既に負けてること前提なんスか。椿、お前はスーツだって。そんな奇をてらっても別にいいことなんかねえからな」
「奇をてらうってなんだよ!」
「意味わかんねえんスか? バカなんスか?」
「意味はわかるよバカ!」
「バカって言ったほうがバカ」
「じゃあお前のがバカ!」
「え、ええっとー……」
 ああそういうことか、と、村越はキャプテン生活で鍛え上げられた推理力を働かせ、ようやくある程度の事態を把握した。つまり、椿は今年二十歳で、ということは来年の1月に成人式があって、そこにどんな服を着ていくのか――そういう話だろう。多分。
「成人式なら、俺は袴だったが……」
 ホラー! と、叫び出しそうになる世良を片手で抑えて、村越は続けた。
「爺さんのを無理矢理着せられただけだ。俺はスーツが良かったんだが、どうしてもって言われてな」
 今度は赤崎がホラー! と叫び出しそうだったので、こちらは視線だけで抑えておいた。世良よりは、やや聞き分けが良い。
「しかし、何着てくかなんて椿の自由だろ。お前たちがギャンギャン言ってやるな」
「……ッス」
「はい……」
 ヨッ、大岡裁き! と、廊下からいけすかない監督の声がした。
 ようやく子犬たちは大人しくなったわけだが、そもそも話の発端である椿はすっかり萎縮して縮こまっているわけで――大丈夫だろうか、と、また余計な心配をしてしまうキャプテン村越である。迷って迷って、魔女にでも助けを求めてしまったりはしないだろうか。

***

「――ていうことがあったんス」
「へー」
 台所に立つ堺の背中を眺め、小皿に出してもらった漬物をポリポリしながら、世良は小学生よろしく今日1日の報告をした。
「どうでもいいけど、くだらねえことにコシさん巻き込むなよ」
「うっ……スンマセン」
 流石にそろそろ頭も冷えてきて、世良も「なんてくだらないことでムキになってたんだ」と反省しはじめているところだ。それだけに、冷静な堺の言葉はチクチクと胸を刺した。
「で、椿は結局どうすんだって?」
「えーと、親と姉ちゃんに相談して決める、って言ってました」
「ま、お前らに相談するよりはよっぽど良いな」
 更に棘が増えた。けれどちょうどそこで堺がくるりと振り返って、コトン、とテーブルに置かれたのはホカホカのご飯、お味噌汁、かぼちゃの煮付けに、ばってら、お揚げと菜っ葉を炒めたやつに、お豆腐のハンバーグ……
 堺の作る食事はあまりまとまりが無いし、妙に所帯じみていているけれど、世良としてはそれが、いかにも「堺さんちのご飯」という感じで嬉しい。実家と微妙に違う味付けを舌に感じるのにも、「これは母ちゃんのじゃない、堺さんのメシなんだ……!」と、いちいちじんわりしてしまう。
「で、お前は袴だったのか」
「そうッス、男はハカマっす」
「ハッ、金髪ヒゲで袴っていかにもすぎるだろ! ネタか?」
 いただきます、と2人で手を合わせながら堺にまでそんなことを言われて、くっそー、と世良はご飯をかっこんだ。どうも、袴派が生き辛い世の中だ。
「じゃあ、堺さんはスーツだったんスか」
「俺? 俺は行ってねえよ」
「えっ!?」
「なんだよ」
 行かなきゃいけねえのかよ、と、世良をじろりと睨みながら堺はかぼちゃを口の中に放り込んだ。
「えっ……あ、そっか、堺さん地元大阪ッスもんね! 遠いですよね」
「遠かろうが近かろうが関係ねえよ」
「そうなんスかー……!?」
 そういえば、以前丹さんとガミさんが、「堺は地元が合わなくて東京に逃げてきたんだよ」とか言っていたのを思い出した。冗談かと思っていたのだけれど、もしかして本当だったりするんだろうか。そう思うと、なんだか、寂しいというか、切ないというか――
「……堺さん、堺さんの地元は……俺ッス! 俺んとこに帰ってきてください!」
「はー!?」
 てめえ何勘違いしてんだ、と向かい側からばってらに汁を絞った後のレモンが飛んできた。びたん、とちょうど額に当たる。
「ハタチっていうと、ちょうど俺はサテライトからトップに上がるかでごちゃごちゃしてたんだよ!」
「えっ……あ、あ、そっか。そッスか……」
「お前絶対失礼なこと考えてただろ」
 いい加減丹波とガミの言うことは信用すんなよ、と、世良のおでこを、身を乗り出した堺の指がぐいと拭った。レモンの汁でもついていたのだろうか。
「はー、そっか、堺さんハタチか……。えっと、堺さんがハタチだと、俺が11で……で、今が2010年で、10年前が2000年だから、あー……1999年だ!」
「計算遅ェな」
 ポリ、と、世良の小皿から堺が漬物を掠め取った。堺は時々行儀が悪いけれど、世良的にはそれも「堺さんカッコイー!」となるポイントだから、気にしない。というか、元は堺の浸けたキュウリだ。どうぞどうぞ、と差し出す。
「99年とか、俺、ノストラダムスに超おびえてました。今でも覚えてますもん。兄ちゃんにすげえ脅かされて……で、7の月をなんとか乗り越えたと思ったら、なんか、計算が違うとか言いやがるでしょ! マジこわかったッス」
 そう言ってぶるりと震えてみせる様に、堺は思わず、毛布を被って恐怖の大魔王襲来に怯える11歳の世良を想像してニヤニヤしそうになった。それは味噌汁を飲むふりでなんとか誤魔化したけれど、いかにもすぎて、駄目だ笑える。
「しかしあれかー、世紀末かー……。堺さん、世紀末は何してました?」
「サッカーしてたよ」
「あ、そっか」
作品名:BACK TO THE 1999 作家名:ちよ子