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グランがガチで宇宙人というだけのお話

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エイリア石。
 『素晴らしい力』を手に入れられる一方、意味不明の超次元現象――つまり副作用によって謎の現象が起こることに定評のある、ハイリスクハイリターンの超資源。 宇宙最大と謳われる巨大エイリア石は、惑星エイリア最大の宝でした。

 比較的平和なエイリアですが、その事件は唐突に起こりました。
 石の副作用により、エイリア石緊急発射装置になっていたトイレのウォッシュレットのスイッチを皇帝がONしたために石は地球へタッチアンドゴー。
 エイリア石の力で宇宙征服を企んでいたエイリア皇帝ですが、手元に残ったのはポケットに入れたまま洗濯したことで無事だった小さな石だけでした。

 しかし転んでもただでは起きないのがこの皇帝。
 エイリア石の奪還と、『どうせ地球くんだりまで行くので』ということで、ついでに地球征服を計画。地球人はとんだとばっちりです。全責任が自分にあるだけに発覚を恐れ、皇帝はこれを極秘任務としました。
 それを任されたのはエイリアの未来を背負う若きハイソルジャーの少年。皇帝の息子であるグランでした。
「くれぐれもバレんように、内密に頼むぞグラン。お前の働きに期待している」
「分かりました。お任せください、父上」
 快く引き受けたグランは、餞別として最後のエイリア石を受け取ります。
 そして免許を取ったばかりの腕で宇宙船に乗り込み、単身で地球へと向かいました。事故りました。


 気がつけば、グランは地球人の基山ヒロトになっていました。エイリア石による奇跡かもしれません。まるでクローンか双子かと思うほど、グランとヒロトは似ていました。

 このヒロトという少年はなかなか不幸な身の上でした。
 幼くして孤児になり、施設に預けられた後に現在の義父にひきとられ、その後事故で植物人間生活。
 意識を取り戻す可能性は絶望的。しかし死ぬまで命を繋ぐだけの運命にあった少年は、グランによって復活しました。
 少し複雑ですが、すんなり潜入できたことはグランにとってもラッキー。そもそもこの星を侵略しに来た身。このまま眠り続けるしかなかった一人の少年と、その家族を救えただけでもよしとする事にしました。

 更に運のいいことに、グランは地球に不時着したエイリア石をすぐに発見。それは基山ヒロトの義父の会社、吉良財閥が所有されていました。
 これを取り戻せば仕事は半分終了。しかしこの石の力を使って地球を侵略してから持ち帰ることが得策だとグランは考えました。

 そうと分かれば任務を遂行するのみです。持ち主である吉良星二郎には気の毒ですが、ここはせめて全ての真実を明かしてあげてから石を奪うことがせめてもの情けでしょう。
 ちょうど話があると義父の部屋に呼び出されたグランは、全てを打ち明ける決意をしました。
 星二郎の私室である立派な和室に招かれ、ザブトンというクッションの上でこの星特有の座り方ドゲザをして向き合います。
「ちょうど良かったよ父さん。俺も父さんに話が……」
「植物期間が長かったせいか、事故のせいか。お前は一部の記憶を失っていたのでしたね」
 基山ヒロトのポジションを強引に引き継いだせいか、グランが得た基山ヒロトの記憶は曖昧な部分がありました。無理やりグランの発言をさえぎった星二郎に彼らしくないと記憶と照合して考えつつ、グランは頷きます。
「うん、そうだけど。父さん、それよりも実は俺……」
「お前は覚えていないかもしれないが……私たちは遠き星エイリアから来た宇宙人として、このエイリア石を使って地球を支配するため活動していたんだ」
「えっ」
「ヒロト、お前はこれからグランと名乗りなさい。お前にも私の夢の実現を手伝ってもらう」
「えっ」
 地球征服計画、先越されてました。
 しかも設定がモロパクリです。

 実は正体がばれているのではないかとヒヤヒヤしましたが、本当に偶然の一致の模様のようです。
 こうして、遠き星エイリアから来た宇宙人グラン――のふりをした地球人基山ヒロト――のふりをした遠き星エイリアから来た宇宙人グラン、という非常にややこしい状況が完成しました。

 吉良星二郎が創立した星の使徒――通称エイリア学園は、サッカーを使って世界征服に乗り出すという一風変わった悪の組織でした。

 皇子のグランには幼少の頃から友人と呼べる存在はいません。冷たい父親、孤独な子供時代。そんな彼の心を支えたのがサッカーでした。朝から晩まで時間が許す限りサッカーをしていたほどです。地球でもまたサッカーができるというのは嬉しい誤算でした。

 エイリア石の力を得られて、地球も征服できる。しかもプランは全て向こうでやってくれる。サッカーができる。
 利害は一致するどころかいいことづくめだったため、グランは星二郎に従うふりをすることにしました。全てが終わった後に掻っ攫えばいいのですから。


 エイリア学園の戦士たちは、ヒロトが幼少期を過ごしたおひさま園の子供たちでした。
 病み上がりのせいか、ガイアというノンエイリア石のチームに入れられるという誤算もありましたが、そこはハイソルジャー。めきめきと頭角を現し、グランはチームのリーダーへとのし上がります。

 全て順風満帆と思われたエイリア学園生活。
 ところが、ここでグランにはどうにも無視できない問題が浮上しました。

「俺の知ってるサッカーと違う」

 そんな彼の記憶では、サッカーはボールを使ったシンプルなスポーツ。ボールを蹴り、敵チームのゴールに入れて点を取るというものです。靴のトゲトゲは敵チームを蹴るためにあるのかもしれませんが、比較的安全な遊びでした。
 罷り違っても、鳥類を召喚したり、星を操ったり、亜空間への扉を開いたりする超能力者必殺技激突バトルではなかったはずです。サッカーで悪事をはたらく以前に、はたらきようがないもののはずです。
 グランはカルチャーショックのあまり頭が爆発しそうでした。しばらく話しかけられても茫然自失状態でしたが、ただの屍になっている場合ではありません。

 『とりあえずサッカー強い奴は必殺技が出せて当然』というのが、この星の通常の認識。
 今、グランはハイソルジャーのずば抜けた身体能力に助けられ、チームの頭として認められるほどの実力です。しかし必殺技の一つも出せないとバレればクビレースまっしぐら。
 侵略しに来た本物の宇宙人のくせに戦力外通告とは、笑えない冗談です。

 焦ったグランは、頼りになりそうなウルビダというチームメイトに相談しましたが、
「必殺技?そんなもの、ボールが回ってきた時にTPがあれば後は気合でどうにかなる」
 まるで参考になりませんでした。

 そうこうしている間にどんどん周りはレベルアップしていきます。超人的な力を得ている彼らに、グランはコンプレックスを抱くようになりました。
 この星の人間でないグランは、そもそもTPなるものを持っていませんでした。

――必殺技ができないことから、正体がばれてしまうかもしれない。拒絶されれば、彼らを失うことになる。