二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

グランがガチで宇宙人というだけのお話

INDEX|2ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 

 エイリア学園の仲間は同士であり、グランにとって人としても好感を抱く人物ばかりでした。そこで同志に囲まれ日々をすごすうちに、グランは彼らに仲間意識を抱くようになっていたのです。
 『義父から贔屓をされている』と難癖をつけられることもありますが、皇帝の息子であるが故に同年代の友人のいなかったグランにとって、彼らを嫌う理由にはなりませんでした。

 たった一人、知り合いのいない故郷から遠く離れた星から訪れた異星人。
 それを受け入れてくれた仲間たち。
 復讐に取り付かれ、亡くなった息子に重ねられているとはいえ、確かに感じる義父星二郎からの無償の愛。

 そもそも他の星への侵略行為はあくまで父――皇帝の命令であり、平和主義のグランの望むところではありません。地球侵略は、元々グランにとって遂行すべき任務でしかなかったのです。
 仲間と共に義父の願いを叶えたい。それが彼の望みでした。
 しかしその一方で、友達のいない自分の心の支えとなってきたサッカーを暴力の手段にすることに密かに心を痛め、疑問を感じていました。


「おいおい、また出かけるのか?」
 ユニフォームからこの星の一般人の服に着替えるグラン。出かける準備を始めたグランを見咎めたガイアの仲間たちは、傍に寄ってきました。
「今からかい?夜も練習はあるよ」
「遅れたら許さないクポー!」
「フン……せいぜい油断していろ。すぐにキャプンテンの座を奪ってやる」
 苦笑いを返して、グランはドアに手をかけました。
「大丈夫、すぐ戻るよ」

 何はともあれ、目下やらなければならないことは必殺技の取得でした。

――もしかすると、この星で生活するうちに出来るようになるかもしれない。

 そう考えたグランは、仲間の目のある星の使徒本部から抜け出し、必殺技の特訓をするようになりました。仲間に必殺技が出来ないことを悟られては元も子もありません。
 しかし努力は身を結ばず、身体能力とサッカーの技術を磨くだけの特訓にしかなりませんでした。


 途方にくれたグランは、外出したもののいつものように特訓する気も起きません。気づけば知らない学校のグラウンドへたどりついていました。
 今はレーゼが率いるジェミニストームが各地の学校を破壊しているはずですが、ここはまだ難を逃れているようです。
「セカンドランクは大変だな。……ん?」
 耳を打ったサッカーボールの音。
 そこには広いグラウンドに一人でサッカーの特訓をしている少年がいました。特訓の内容から、彼が中々の腕を持つことが分かります。
「普通の地球人か……。そうだ、彼に相談してみようか」
 エイリア以外の人間のアドバイス。何か得るものがあるかもしれないと考えたグランは、少年に話しかけました。
 この時は必死で気づきませんでしたが、これがグランの初めて自分から行った地球人へのコンタクトでした。

 サッカー馬鹿同士、通じるところのあったグランたちはすぐに打ち解け、二人の会話は弾みました。
「俺たち、日本中をまわってサッカーの強い奴をスカウトしてるんだ」
「そっか……。じゃあ、もう守と会うこともないかもしれないんだね」
 グランはこの一夜の出会いをとても惜しく感じました。贔屓と言われ避けられる傾向があるとはいえ、ここまで馬の合う人間は彼が初めてでした。
「なーに言ってんだよヒロト!サッカーを続けていればまた会えるさ!」
「……そうだね」
 グランの悩みも吹き飛ばしてしまいそうな笑顔に、つられてグランも破顔しました。
 初めてのともだち。宇宙人ネームを名乗るわけにはいけないと分かっているものの、本当の名前を呼んでもらえないことはやはり寂しいものです。基山ヒロトと名乗ったことをグランは少し後悔しました。

 しかしポジティブな返事をするものの、彼――円堂守も一期一会の縁を惜しんだのでしょう。少しだけ表情を翳らせて、実は悩みがあるのだと告白しました。
「初めて会ったやつに、こんなこと言うなんてどうかと思うけど……。でもヒロトになら、言えるって思ったんだ。誰に言ってもどうしようもないことだし、結局は誰かに聞いてもらいたいだけなんだよな」
 ……あ!迷惑じゃなければ、でいいんだけどな!
 そう付け足して、守は茶化して重い空気を誤魔化します。しかし守が真剣に悩んでいることはグランにしっかりと伝わりました。
「もちろん。守が悩んでるなら何でも聴くよ」
 相談するつもりが相談される側になっていることに気づき、奇妙な気分になりながら、グランは自分でよければと了承しました。
 守は感謝の言葉を述べると、彼らしくない力のない口調で語り始めました。
「実は、信じてもらえないかもしれないけど――」
 守は一度言葉を切り、気合を入れるように両手で頬を挟むように叩き、一呼吸置きました。うつむいていた顔を上げ、真っ直ぐな目で守はグランを見つめます。
「俺……もしかしたら、こことは違う世界から来たかもしれないんだ」
「えっ」
 思わず絶句するグランに追い討ちをかけるように、守は続けました。

「なんでこの世界のサッカー選手って、火とかペンギンとか出せんの?」
 それはグランと全く同じ、切実過ぎる悩みでした。



 円道少年かく語りき。
 時は遡り、フットボールフロンティア開催間近のまだ弱小サッカーボール部のころ。天才ストライカー豪炎寺修也を口説き落とし、帝国学園に逆転勝利。守が浮かれていたある日の練習で変化は起こりました。エースストライカーのボールが燃えたのです。原因は分かりません。目の前で派手に自然発火が起こったというのに、それを疑問に思っているのは守だけでした。

 その時から、守の周りでは不思議なサッカーが繰り広げられました。付き合いの長いチームメイトがドラゴンサモナーになっていたり、幼なじみが人間の限界を超えた速さでフィールドを駆け抜けたり。しかも超人技を持つのは他の学校の選手も同じでした。

 現状は全く理解できないものの、切実な問題として自分はキャプテンであり、唯一のゴールキーパー。しかもFFが始まる日はすぐそこ。混乱する暇もなく、反則シュートを止める力を得る必要がありました。
 それこそ血の滲むような努力をして、守はトンデモシュートを受け止めるための特訓を繰り返しました。しかし守はグランと同じく、生まれつきTPを溜めることのできない体質でした。いくら特訓を繰り返しても、自分がやっていたという必殺技の話を聞いても、祖父の残したと言うノートを読んでも、決して努力が報われることはありませんでした。
 しかし特訓は思わぬところで実を結びました。FFで彼はシュートを全て通常キャッチで守りきり、チームを優勝に導いたのです。必殺技に回される何らかの力が肉体強化として働いたのかもしれません。

 グランはエイリア石が地球に落ちた時に、その不思議な影響をこの星に与えたのではないかと考えました。彼が言うように守が別の世界からやってきたにしろ、守だけがエイリア石の影響を受けなかったにしろ、原因は他に考えられません。

 語り終えて一息ついた守は、肩の力を抜いて空を見上げます。彼の目にこの世界はどう映っているのだろうとグランは考えました。