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仮面ライダー烈戦伝 第1話

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「そうさ。人生はな・・・生きるってことはな、辛いことや悲しいことばかりだよ。でもな、どんなときでも光はある。その光は手の届かない天空にあるのでも、誰かが持ってきてくれるものでもない。その光は、君の心の中でいつも輝いているんだ。それに気づけ! そして、おれの姿を見ろ。おれは、来た。君のために来た。なぜなら、おれは、これを受け取ったからだ」

 仮面ライダーは、かろうじて動く右腕で、少女の眼前に一枚の手紙をつきつけた。

「君の涙でぐしゃぐしゃになったこの手紙。字がにじんでほとんど読めなかったよ。でも、おれは来た。ここに書かれていることがウソだとしても、君のこの涙はホンモノだとおもったからだ!」

 ライダーの声は、少女のうつろな心を、熱と風を巻いて激しく貫いていた。
 少女の両目が大きく見開かれた。
 悲しみとは違う涙が、あふれでて、頬を伝い落ちた。

「君が望む限り光は、君を見捨てない。君の心の輝きは、失われてなんかいない。だが、君の心の光が扉に閉ざされてしまったら、それを開ける手助けをする者は必要だ。おれは、仮面ライダーは、そのためにいるんだッ!!」

 そういう人が求めるなら、おれは、何千キロの道のりだって越えてゆける。
 夢や希望を不当に奪うものがいるのなら、おれの名を涙と共に叫ぶがいい。おれは、必ず駆けつける。百万光年彼方の声だろうと、おれの耳には届いている。

 その瞬間、ライダーのタイフーンが全力回転を開始した。風は暴風と化し、熱を、光を呼び、白熱する光輝とともに、ライダーを囲繞していた糸の群れは溶け、崩れてしまったのだ。

「こ、このオレのワイヤー・シルクが・・・!」

 呪詛をこめた爪がライダーの五体を引き裂こうと襲来する。だが、鋼鉄をも突き抜くライダー・パンチが発動し、コマンダー・バットを弾き飛ばし、大地に叩き伏せる。

 仮面ライダーは、少女を見た。

「おれのこの姿、怖いか?」

 少女は、一瞬、あっけにとられた。だが、その顔は、すぐに明るい笑顔になった。

「怖くない、怖いわけない! だって・・・」少女は、あらん限りの声を振り絞って叫んだ。「あなたは優しい人だから。わたしのちっちゃな声を信じて遠い遠い国からやってきてくれた優しい人だから。あなたは、タケシ・ホンゴウ。わたしに笑顔を返してくれたあなたの姿は、とても・・・とっても美しいわ!」

 そのとき、少女は、仮面に隠されたその素顔が、微笑んだような気がした。

 仮面ライダーは、全脚力を開放して、天空に飛翔する。

「バカめ! オレに翼があることを忘れたか! 空中戦なら貴様などに負けん」

 自らを奢り、コマンダー・バットも両翼をはばたかせ、一気に高空へと躍り上がる。

(改造されたおれのこの顔を、この姿を美しいといってくれた君のために、おれは戦おう。その思いに報いるために、おれは何度でも立ち上がってみせるよ。そうやって、おれは、おれより遥かに強い悪鬼どもを討ち倒してきたんだ!)

 コマンダー・バットは、上昇する仮面ライダーを追尾できない自分に驚愕する。

「そ、そんなことが・・・! オレは、マッハ7もの速度で飛んでいるのだぞ。そのオレが、あんな旧式の改造人間に追いつけないのか?!」

 恐怖と敗勢に見開かれたコマンダー・バットの両眼の中で、大地から屹立する深紅の巨柱が見える。
 その頭上にたれ込めていた黒雲が、ライダーの上昇にしたがうように晴れていくのだ。

 そこに開かれた蒼穹。そこから差し込む太陽の輝き。その真っ赤な輝きを背に、仮面ライダーは、急降下を開始した。

 全身を大気との摩擦熱がつつみ、あたかも邪悪を撃つ神の鉄槌のような炎の直撃がコマンダー・バットに急接近する。

「ありえん! あり得ないことだ!!」

 慌てて回避しようと、旋回を試みるコマンダー・バットの五体に、灼熱の彗星が激突した。

「ライダー・キック!!」

 悪魔が放つ最後の絶叫さえも呑み込む凄絶な炎が地上に降り立ち、その炎の中から仮面ライダーが不滅の勇姿を現す。
 彼は、撃砕され爆発するコマンダー・バットを静かに見上げた。

「ホンゴウ!」

 少女が駆け寄り、変身を解いた本郷猛に抱きつく。その小さな体を抱き上げ、本郷は、空を見つめた。

 雲が去っていく。雲間から差し込む光の筋が、二人を優しくつつんでいく。

「あたたかい」
「ああ、太陽ってのは、いっつもあたたかいものさ」

 そう答える本郷を見上げ、少女は、笑いながら頭を振った。

「あたたかいのは、あなたよ、ホンゴウ」

 その声に、本郷は微笑みを浮かべて、こう言った。
 ありがとう。
 その一言のもつ重みと喜びを、人間・本郷猛は、誰よりもよく知る男だった。