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しょーとしょーと 5作

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心配性



「ん」

 小さな声に振り向けば、色白の手が差し出されていた。
 長い指、大きな手。傷ひとつついていない彼の商売道具は、どこもかしこも綺麗で思わず目を奪われてしまう。
 握り返してもよいものか、僅かに迷ってからウソップは手のひらに自分のそれを乗せた。途端、腕を強く引かれ引きずられるように歩き出す。

「つかぬ事をお聞きしてもいいかね、サンジくん」
「ああ?なんだ」
「恥ずかしくねェの」
「なにが」
「いや、これだよ。これですよ。この状況」

 真っ昼間。人込みでごったかえす街の市場。その中で、明らかに浮いている男二人。
 意味が分からないわけではないだろうに、サンジから返ってくる言葉はどれもはぐらかすような疑問符ばかりである。ウソップは、やれやれと肩を落とした。

「今日は、めろり〜んにはならねぇのか?綺麗なお姉さんなら、あっちこっちに一杯いるぞ」
「んなこた、見りゃ分かる。右も左も麗しいレディばっかりだ」
「なら、そっち行けよなー。なんで俺に構うんだよ」
「俺の勝手だろうが」
「そりゃそうだけどよ……女の尻追っかけないサンジなんて、俺の知ってるサンジくんじゃないもん!」
「キモイから止めろ」
「しかも今日のサンジ、めちゃくちゃノリ悪ィし」
「ああ?いつも通りだろうが」

 単調なリズムしか刻まない言葉に、短い溜息を返す。
 一体それのどこかいつも通りだって言うんだ、このぐる眉エロコックめ。

「心配してくれなくても、俺はぐれたりしねぇよ?」

 僅かな間とタバコの煙を吐き出してから、サンジの手に力が加わった。繋ぎ合った手を離すものかと訴えているのが分かって、やはり彼らしくなくて、でもなんだか胸の奥がくすぐったくて、ウソップは困ったように笑った。


作品名:しょーとしょーと 5作 作家名:oruba