変化と想いと日常と
あ、杉田君が追手内君の隣に突っ込んだ。
当然の如く、それに巻き込まれた追手内君が吹っ飛ぶ。
流石宇宙一ついてない男。
その様子を、教室の窓から眺めつつ。
「………えー何この総受け………」
私は、脱力と共に呟いた。
………あれ、何この感想。
まぁ、間違っちゃいないわよね?
溜息を吐く。
大体、何で私があの追手内洋一の事でこんな動いたりしてやんなきゃなんないのよ。
不運のせいだとしても、あいつには色々酷い目に遭わされてんだから、こんなに気にしてやる義理も無いってのに。
私を好きだってのはまぁ、嬉しいわよ?それが正確に伝わったのが、他に好きな奴が出来たから、ってのが呆れる程についてなさを強調してる訳だけど。
私が好きなのはラッキー様だし、それはあいつも知ってるし。
本当なら、関わる必要も無い筈なのに。
…でも。
あいつら見てると苛々すんのよねー。
解ってない杉田君も勿論だけど、何よりも。
…生まれついての不運のせいなんだろうけど、とっくに諦めてる追手内君の方が、特に。
中学の時はもう少し、足掻いてた感じするのにね。
いつだったか、杉田君の事、離れて見てた時があった。
どこか優しくて、でも諦めた様な、複雑な顔。
それが妙に気になって、杉田君の事好きなのー?とか訊いてみれば、吹いて、引いて、でも慌てて。
だからちょくちょくそれを前提に話を振ってみれば、その内諦めた様に肯定の意。
でも、決定的な言葉は絶対に言わない。
言ったら、終わっちゃうんだって。
…多分それは、事実なんだろうけど。
「…あれも“ついてない”に入るのかしら…」
目の先では、追手内君の取り合いが続いてる。
物の見事に男しかいないって、凄まじいわねー。
です代ちゃんも未だに追手内君に迫ってるけど、やっぱメインはこっちだしねー。
…いつか。
あの宇宙一ついてない男が、本気で望んで手に入れた幸運を、見てみたい気もするなぁ、なんて。
思う様になっちゃった私もなんか、ついてない気がするわ。
まぁ、その時あいつの傍にいるのは、どうせあの馬鹿弟子なんでしょうけど。
…そうなったら、おめでとうの一言くらいくれてやるから。
精々頑張りなさいよね。
相変わらず騒がしい校門前を眺めながら。
私はそう、内心でのみ呟いた。