あいのうた
ららら、と小さくメロディーを刻む声
時にはしかめっ面、時には涙ぐんで、時には嬉しそうにと変化させる表情
そのどれもが、一つの“歌”を作り出すのに欠かすことの出来ない、大切なもの
「サイケ君、次はこれ歌ってみる?」
『もうできたの?みかどくんはやーい!』
「サイケ君がいつも楽しそうに歌ってくれるから、僕も作るのが楽しいよ」
液晶越しの会話、そして送られてきたデータにサイケは心底嬉しそうに笑う
『こんかいはどんなかんじなの?』
「今回はね、ちょっとポップな感じにしてみたんだ」
『ぽっぷって…えっとえっと…げんきなかんじ、だよね?』
「そうそう、元気で明るい、そんなイメージだよ」
『わかった!えっと、じゃあうたうからきいていてね!』
流れ出すメロディーに乗せて、サイケは歌を紡ぎだす
ちゃんとした歌詞ではない、意味の通った日本語でもない
感情のままに歌っているだけ
それでも、本当に楽しそう歌うその姿に、帝人も顔を綻ばせる
―先程サイケが言ったように、帝人は確かに曲を作るスピードがはやい
しかしそれは、サイケがいるからこそだと帝人は思っている
サイケの歌声、表情、感情、そしてつくりだす世界
帝人のメロディーにはそんなサイケの“色”がふんだんに詰め込まれている
だからサイケが心の底から感情を込めて歌ってくれるから、帝人は次々に曲を生み出すことが出来るのだと
(あぁ、またメロディーが浮かんできたなぁ)
次はどんな曲調にしようかな、そんなことをぼんやりと考えながら
帝人はサイケの歌声に耳を傾けた
<あふれるおとと、きみのうたごえ>
(かさなって、ひとつになる)
***
今でこそ様々なジャンルの歌を歌いこなし、帝人の細かの要望にも応えられるサイケ
帝人と出会った当初は当然、音の取り方も分からない状態からのスタートであった
『……♪…♪……♪』
「んー、最後がちょっと外れたかな」
「もう一回歌ってみようか、ね?」と訊ねる帝人に、サイケは泣く一歩寸前の顔で小さく頷いた
それを見て帝人は苦笑する
ここずっとサイケはこんな感じだ
一生懸命頑張ってくれているのを帝人は知っているから、多少上手く歌えなくとも帝人はサイケを責めたりなどしない
それでもサイケは心底申し訳な表情をする
「…ねぇ、サイケ君」
『っあ……なぁにみかどくん?』
じっと歌詞データを黙視していたサイケに帝人はそっと話しかける
サイケはびくりと肩を揺らして、慌てて顔を上げた
泣いてはいない、それでもぎりぎりで耐えているのが分かる
帝人はもう、そんな表情を見たくはなかった
「あのね、上手く歌おうとしなくていいんだよ」
『……え?』
「サイケ君が頑張って上手く歌おうとしてくれてるのは知ってるし、それは僕も嬉しい。
けどね、僕は無理して上手く歌おうとするよりも、楽しそうに歌ってくれるほうがずっと嬉しいかな」
帝人の言葉をじっと聞いていたサイケは、『…でも、でも、』と漏らす
それにまた苦笑すると、帝人は「そうだ!」と大きな声を出した
「じゃあサイケ君、一緒に歌おうよ」
『…いっしょ、に?』
「そう、一緒に歌ったらきっと楽しく歌えるよ」
まぁ僕も人に聞かせられるほど上手くないけど、と頬を掻きながら呟く帝人
サイケはぽかんと帝人を眺めていたが、ぎこちなくだが笑顔を溢した
(やっと、笑ってくれた)
「よし、じゃあ歌おっか」
『うん!』
<いっしょにうたえば、きっとたのしい>
(もっとひろがるおとのせかい)
時にはしかめっ面、時には涙ぐんで、時には嬉しそうにと変化させる表情
そのどれもが、一つの“歌”を作り出すのに欠かすことの出来ない、大切なもの
「サイケ君、次はこれ歌ってみる?」
『もうできたの?みかどくんはやーい!』
「サイケ君がいつも楽しそうに歌ってくれるから、僕も作るのが楽しいよ」
液晶越しの会話、そして送られてきたデータにサイケは心底嬉しそうに笑う
『こんかいはどんなかんじなの?』
「今回はね、ちょっとポップな感じにしてみたんだ」
『ぽっぷって…えっとえっと…げんきなかんじ、だよね?』
「そうそう、元気で明るい、そんなイメージだよ」
『わかった!えっと、じゃあうたうからきいていてね!』
流れ出すメロディーに乗せて、サイケは歌を紡ぎだす
ちゃんとした歌詞ではない、意味の通った日本語でもない
感情のままに歌っているだけ
それでも、本当に楽しそう歌うその姿に、帝人も顔を綻ばせる
―先程サイケが言ったように、帝人は確かに曲を作るスピードがはやい
しかしそれは、サイケがいるからこそだと帝人は思っている
サイケの歌声、表情、感情、そしてつくりだす世界
帝人のメロディーにはそんなサイケの“色”がふんだんに詰め込まれている
だからサイケが心の底から感情を込めて歌ってくれるから、帝人は次々に曲を生み出すことが出来るのだと
(あぁ、またメロディーが浮かんできたなぁ)
次はどんな曲調にしようかな、そんなことをぼんやりと考えながら
帝人はサイケの歌声に耳を傾けた
<あふれるおとと、きみのうたごえ>
(かさなって、ひとつになる)
***
今でこそ様々なジャンルの歌を歌いこなし、帝人の細かの要望にも応えられるサイケ
帝人と出会った当初は当然、音の取り方も分からない状態からのスタートであった
『……♪…♪……♪』
「んー、最後がちょっと外れたかな」
「もう一回歌ってみようか、ね?」と訊ねる帝人に、サイケは泣く一歩寸前の顔で小さく頷いた
それを見て帝人は苦笑する
ここずっとサイケはこんな感じだ
一生懸命頑張ってくれているのを帝人は知っているから、多少上手く歌えなくとも帝人はサイケを責めたりなどしない
それでもサイケは心底申し訳な表情をする
「…ねぇ、サイケ君」
『っあ……なぁにみかどくん?』
じっと歌詞データを黙視していたサイケに帝人はそっと話しかける
サイケはびくりと肩を揺らして、慌てて顔を上げた
泣いてはいない、それでもぎりぎりで耐えているのが分かる
帝人はもう、そんな表情を見たくはなかった
「あのね、上手く歌おうとしなくていいんだよ」
『……え?』
「サイケ君が頑張って上手く歌おうとしてくれてるのは知ってるし、それは僕も嬉しい。
けどね、僕は無理して上手く歌おうとするよりも、楽しそうに歌ってくれるほうがずっと嬉しいかな」
帝人の言葉をじっと聞いていたサイケは、『…でも、でも、』と漏らす
それにまた苦笑すると、帝人は「そうだ!」と大きな声を出した
「じゃあサイケ君、一緒に歌おうよ」
『…いっしょ、に?』
「そう、一緒に歌ったらきっと楽しく歌えるよ」
まぁ僕も人に聞かせられるほど上手くないけど、と頬を掻きながら呟く帝人
サイケはぽかんと帝人を眺めていたが、ぎこちなくだが笑顔を溢した
(やっと、笑ってくれた)
「よし、じゃあ歌おっか」
『うん!』
<いっしょにうたえば、きっとたのしい>
(もっとひろがるおとのせかい)