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Happy Future Wedding(仮タイトル)

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 とにかく、話を振ってしまったのは自分なのだから(こんなことになると思っていなかったとはいえ)なにか言わなければ、そう思うのに何も言葉が出てこない。そもそも、円堂が冗談を言っている可能性も――そう思って円堂の目を見る。
 なんだかもう新必殺技が繰り出せそうなくらいに真剣だった。
 真剣? 何に? オレと結婚することに?
 どうしよう、どうしよう、という気持ちがぐるぐると渦を巻いている。
「オレもさ、そのことこの間思い出して、吹雪に相談したんだ」
 吹雪かよ。
 そう言いたくなるのをぐっと堪える。なんでよりによって吹雪。せめて鬼道か豪炎寺辺りにしておいてくれれば良かったのにと思いながら吹雪に目をやれば、吹雪は凄まじい笑顔で親指を立てていた。
 が、ん、ば、れ。
 吹雪は声は出さないで唇を動かしてみせる。その瞬間、円堂になにか変なことを吹き込んだに違いないと確信した。
「吹雪が教えてくれたんだ! 男同士でも結婚できる国があるんだって! だからちゃんとお嫁さんになれるから安心してくれよな!」
「あ、いや、円堂……」
 どういう話の飛躍だと一人盛り上がる円堂を諌めようとする
と、円堂は更にとんでもないことを口走った。
「あ、すまん。風丸は風丸がお嫁さんの方がいいのか?」
 ぶほっと食堂のどこかで誰かが噴きだした音が聞こえた。
 畜生、泣きたい。
 しかし、完全に真面目に話してくれている円堂に面と向かって「うるさい迷惑だ」なんて言えるはずもない。円堂はただ、昔交わした約束を守ろうとしてくれているだけで、風丸を笑いものにしようという気があるわけではないのだ。
「無理、しなくていいんだぞ。あれってほら、結婚の意味もよくわかってなかった頃の話であって……」
 そもそもあの歳での「結婚しよう」なんて約束は男女間であったとしても守られることは稀であるだろうことは風丸にもわかっている。

「無理なんかしてない! オレは今でも風丸が一番好きだ!」

 ばん、とヒートアップした円堂が机を殴った。うっかり必殺技を出しかけて机に皹が入ったのは誰もが気付いただろうが、今この瞬間に突っ込みを入れられる人物は誰一人としていなかった。
「円堂、落ち着け。オレは、男だ」
「だーかーら! 最初からわかってるっつーの! だから外国行くって言ってんじゃん!」
「……あ、そう、か。そう、だよな」
「風丸は?」
「えっ……」
 急に、聞かれても。円堂のことは好きか嫌いかで言えば、大好きの部類であることは間違いない。一番なのかといわれたら、確かに一番好きな人物であることも間違いない。
「えーと、オレも、一番、かな……」
 でも、結婚は――そう続ける前に、周りからどっと拍手が沸き起こった。
「円堂さん! オレ、その円堂さんの愛を貫こうとする姿勢に感動しました! 二人ともお幸せに!」
「円堂! お前超カッコいいぜ! そうだよな、男か女かなんてこの海の広さに比べりゃちっぽけなもんだぜ!」
「キャプテン、おいら感動したでやんす!」
「え、ちょ、ちょっと待てよ……!」
 既に結婚することが決定したかのような口ぶりで祝福の言葉を連ねる仲間たちをなんとか止めようと試みるが、風丸一人の行動で止められるはずがなかった。そもそも、誰がふざけていて誰が本気なのかもわかったものではない。
「お幸せにね」
 感激のあまりに(何に感激しているのかはわからないが)半泣きの立向居はともかく、向こう側で微笑む吹雪からは悪意しか感じられないのは何故なのだろう。悪意どころか「染岡くんが居なくてつまんないから、なんかおもしろいことないかな」という意思まではっきりと見えそうな笑みだ。
「ま、まあ、二人が幸せならそれで……」
 青い顔で呟いている鬼道には悪いことをしたと思うが、今は鬼道を慰めている場合ではない。というよりも、むしろ自分が泣きたい。
 しかし風丸のそんな気持ちを汲むものは誰一人なく、意味不明な感動の渦はとめどなく広がっていくのであった。

 ***

「オレはまた円堂とペアか」
「そうみたいだな」
 あの一件以来、バスも飛行機も部屋割りも、何かにつけては円堂と組まされるようになった。それが気を利かせてなのか面白がってなのかは人による(風丸の感覚では前者であると感じる者も多いため、一概に怒るわけにもいかなくなっている)。
「みんな気をきかせてくれてるみたいだけど」
「でもさ、別にいつも通りだよな」
「まあな」
 グループを作るとき、円堂は特に理由がない限り風丸のところにやって来る。それは中学に入るよりも前からの話で、今に始まったことではない。
「でも、前よりも少しお前と居る時間、増えた気がする。最近はお前、みんなからキャプテンキャプテンって引っ張りだこじゃないか」
「そうかなあ」
「みんなのキャプテン、独占してるみたいでちょっと、悪い気がするかな」
「大丈夫だって! オレだって風丸と一緒の部屋だと嬉しいしな!」
 少しだけ申し訳なさそうに顔を伏せた風丸の元に、円堂が勢いをつけて飛び込んでくる。それを両手で受け止めながら、こうして体に触れるようなスキンシップをするようになったのはやはりあの一件以来であるということに気が付いた。
 正確に言えば、自分がイナズマキャラバンを降りてダークエンペラーズになる前に戻った、と言うべきだろうか。
 わだかまりはなくなったつもりでいたが、それでもなんとなく残っていた溝を埋めてくれたのがあの一件であったと思うと自分の暇つぶしのために円堂をけしかけてきた(と、風丸は思っている)吹雪にも感謝すべき点はあるのかもしれない。
「へへっ、やっぱオレの目に狂いはなかったな!」
「……なにが」
 円堂は風丸の膝の上に乗り、その上でにやにやと風丸の顔を見ている。
「あの頃にちゃんと予約しといてよかっら」
「予約って、お前」
 せめて婚約といえばムードもあるのに、予約と言い切ってしまう色気のなさが円堂らしい。
「おっきくなっても風丸はきれいなまんまだ」
「褒めてもなんもでないぞ」
「うん」
 別に風丸がいればいいよ、と胸の辺りに抱きついてくる円堂を引き離すこともなく、風丸は円堂の頭を撫でた。ぐりぐりと頭を押し付けてくる円堂の体温を感じながら、これはこれで幸せだと感じている辺りやっぱり自分も相当円堂のことが好きなんだと思う。
「もっと大きくなったらちゃんとプロポーズするから、そしたらドレス着てくれるか?」
「期待しないで待ってるよ」
 あと、ドレスは嫌だと付け足すと、円堂が不満そうに呻いた。