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あさりのじゃれあい

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 鈍く光るトンファーが壁を抉る。ああ、また仕事が増えたということも今はどうでもよかった。なぜなら自分の命がかかっているから!先輩で大魔王の雲雀さんは、至近距離からぎらぎらした目で俺を見つめてくる。正直に言おう、超恐い。

「ねえ、綱吉。僕は君を結構気に入ってるんだ。いや、もっと言えば好きなんだ」
「はあ」
「でも、せっかく僕が君のことを好きでも君が僕を好きじゃなかったら意味がないと思うんだ」
「はあ」
「でね、相思相愛じゃなかったら殺してしまっていいと思うんだ」
「なんであなたはそんな極論になっちゃうんですかあああ!!!」

 誰だ誰だ!雲雀さんを壊したの!思い当たる人間は何人かいるが、とりあえずここから逃げなきゃ殺られる。
 そのとき、ばんと扉が開いて獄寺くんと山本が入ってくる。壁に挟まれ、雲雀さんに詰められている相当すごい体勢を見て、二人は一瞬呆気に取られた顔をしたが、そのあとそれぞれのリアクションをとった。獄寺くんは十代目!!と青褪めた顔で叫んでどこかへ飛んでって、山本はごそごそとポケットから携帯を取り出して、何か操作し、そしてかしゃっと俺たちを撮った。

「何してんの、山本ー!!」
「いや、これ小僧とか骸のやつとかに送ったらどうなんのかなーって」
「どうもしないよ!俺が殺されるだけだよ!!」
「ワオ。いいね、それ。あとで僕にも、それ送ってよ。山本武」
「おう、いいぜ」
「そこで、変な約束するなあああ!!!」

 冗談じゃない冗談じゃない!ていうか、山本助ける気ないだろ!!
 そこでやっと、どこかへ飛んでいた獄寺くんが戻ってきた。

「はっ!じゅ、十代目!!今、お助けします!!」
「うん、お願い。ただし、ボムはやめてね」

 俺の制止も虚しく、獄寺くんはボムを投げる。隣で山本は苦笑する。雲雀さんもさすがにふいと離れた。迫ってくるボムをスローで見ながら、もうあいつら右腕左腕降格でいいかなと思った。


***


 もうもうと立ち込める煙の中、扉に向かってダッシュし雲雀さんから逃げおおせた。あの瞬間、しゃがんで致命傷を負うことだけは避けれた。とりあえず、過程はどうあれ雲雀さんから逃げれたのだ、降格はなしにしておこう。きっと今頃、あの部屋では二人が闘っていることだろう。あと、何分、いや何秒持つだろうか。決して、彼らが弱いのではなくあの人が強すぎるのだ。彼らの名誉のために、それだけは言っておこう。ぼろぼろになるであろう、部屋を想って溜息が出た。ああ、始末書は何枚になるだろうか。

「大変そうですね」
「ああ、全くだよ。一体、誰が雲雀さんを壊したのか・・・・・・って、なんでお前、こんなときに出てくんだよ」
「クフフ。おや、後ろでトリがすごい形相で追いかけてきますね」
「超こえええええ!!!」

 捕まったら何をされるか、想像もしたくない。それよりも、パイナポーと一緒に死ぬなんて死後でも付き纏われそうで、ご遠慮したい。

「失礼ですね。なぜ僕があんなトリに負けなきゃいけないんですか」
「負けないんだったら、今すぐ雲雀さんと闘ってきてくれ。健闘を祈る」
「嫌ですよ。トリ頭が綱吉くんを頂こうとする前に、僕が横取りしてやるのが僕の理想なのですから」

 だから、一度捕まってくれませんか。
 お前は鬼か。
 ああ、クローム。俺の癒しのクロームに逢いたい。このパイナポーめ、クロームを返せ。
 と、嘆いていると向こうの廊下から誰か出てきた。あ、ボンゴレと手を振るランボを引っ張って走らせた。

「な、何するんですか!ボンゴレ」
「ランボ!お願いだから後ろ見て、状況察して!!お前だって死にたくはないだろう?」

 そう言うと、ランボは素直に後ろを振り返って、そして黙って全速力で走ってくれた。ああ、嬉しい。泣き虫だった彼が、今はちゃんと空気が読める人になってくれるだなんて!泣き虫だけれど、数少ない常識人。ランボの存在に、あれ?なんでだろう、涙が溢れてきそうだ。
作品名:あさりのじゃれあい 作家名:kuk