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【APH】本気出して菊菊について考えてみた

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繰り返し人は



私の起源がどこにあったのかと言う話をするとき、ときどきそれは大陸からやってきた侵略者の末裔の血が混ざっていると疑られることがあります。かつてこの土壌にありながらその正確な所在さえ分らなくなったあの「くに」が滅びるのと同じ頃に始まったのが今の私だというのが現代の定説のようです。
ところで、新しい勢力というのはどの時代も大抵乱暴で粗野で、逆説的には生きるということそのものに貪欲で必死だと思います。そういう人々のいき方や考え方はそのまま私たちに影響を与え、私は今から想像できないほど好戦的な一面もあったと思います。そのため知らぬ間に、なのかどうかは正直忘れたのですが、同じ土地に目覚めていた兄を滅ぼしたのです。私はそのことに気づくわけもなく貪欲に必死に成長をしていました。おそらく兄だけでなく似たような新芽のような兄弟はいたのでしょうがそれらを巻き込んで私は成長したのです。そのように成長させたのは皇帝の一族でしょう。古い血統を残している一族の源流に近い人々が私にとっても最初の上司だったに違いありません。
さて、私はおそらくとても貪欲でした。
ですから大陸にいる「兄」と彼の秘める力が怖くて仕方なかったのだと思います。所詮あの頃のあの人の考えでいえば私なんて東にある小さな島の貢物を捧げにくる程度には学のある蛮人、だったのでしょうから。いえ、私もあの頃のごちゃごちゃした内部事情は知りませんが昔のあの人はそういう横柄なところがより強く出ていたと記憶しているので。つい最近までその傾向は残っていただなんて口が裂けてもいえません。ともあれ、このまま弟の位置に甘んじているのがいやになり私は彼の弟と言う位置を捨てることをいつしか決めていました。私も大陸のものとは少し違うものだという自覚が出てきたのかもしれません。そのためにまず先立って大陸の皇帝とかかわりのあった同じ家の「兄」とはまったく違うものだと説明をした覚えがあります。どうやら「兄」と違うものだというところは分ってくれたものの、私の実力はどこまで認めていたのかは実はよく知りません。それでも彼の兄弟という大きな傘から抜け出しましたがあの、耀さんの影響力は私たちには大きかったものですからとても大きなばくちだったと今でも思います。耀さんがその気になれば、海を越えることも難しくはないだろうと当時思っていました。結果としては無事に耀さんの兄弟であると言う認識は解かれましたが、私は耀さんのことを兄弟間にありがちな対立心のある親しみよりも年上の親戚に対する憧れに似た感情のほうが強かったかもしれません。
耀さんの脅威が薄れて私の家の中を地方を有権者が各々分割して治めるようになり目を醒ましたきょうだいがたくさんいました。そんな兄弟の中にひとり異色を放つのが彼でした。私と同じ立場で同じ頃に目を醒ました兄達はずいぶん前に見なくなったというのに、ただ一人はっきりと残った彼は遠の昔にくにとしての母体を失い、かといってなにかと対立する私のところに来ることもできず長らく放浪していたらしいです。たとえ私が自分のことをわかってきて人々にその意識が定着してもそれに応じない人が呼ぶのだと彼は苦笑しながら言ったこともあります。たとえば北に追われた衰えた王朝の末裔、あるときは二派に割れた皇帝の片側、あるときは覇権の交代により玉座をめぐり争う一族、そういう民が一つの国を形成した証明のように彼を呼ぶのだといいました。会えば戦しかないその合間に彼は優しい兄として私の前に現れました。

これはどの時代のことでしょうか。まだ春の花といえば桜よりも梅のほうが人気だった頃の話です。
例のごとく私の前に宿敵として現れた彼は休戦を申し込みました。たとえ私と彼の勢力が逆転しつつあるといえど彼が見守る一族は一度栄華を極めたものであり相応の主張や知略があるもので、そうやすやすと都を明け渡すわけがありません。しばらくのにらみ合いが続くその合間のできごとでしょう。梅の花を愛でながら取り留めのないことを話し合っていました。
「おまえは猫のようなやつだ」
と、これは彼が言ったことです。
「家や土地について、人が変わっても大して気にしない」
「そういう化け物じみた言い回しやめてください」
「的をいてると思うが」
「そういう問題じゃありません」
小首をかしげる彼に私がすねて見せると彼はいたずらっぽく笑って見せました。この頃はあまり歓迎されなかった歯を見せるような大げさな笑い方とひき付けのような笑い声を彼はします。しばしばそれなりに偉い人と一緒にいる私よりはあちこちをふらついている彼のほうがよっぽど表情が豊かでした。
「私が猫なら、あなたはなんですか」
「そうだな、なんだろう。狐だろうか」
「きつね、」
「騙す、莫迦す、狐つきにになったら家も人も破綻するだろう。そっくりじゃないか」
「だからそういう化け物じみたものはやめてください」
「的をいていると思うんだが」
「的中だったとしてももっとましな言い回しがあるでしょう」
彼はやっぱり首をかしげてさも不思議そうにしていました。それからため息混じりにぐちぐちというのです。
「雅の人が考えることなんておれは知らないな」
「町人でもも美しい歌を読む人は多くいます」
「学が違う」
「彼らより何年長く生きていると思っているんですか」
「なら、おまえは己を何と例える」
彼はむっつりしたようでいいました。無遠慮に私の顔を覗き込み元々あまりよろしいとはいえない涼やかな甘茶色の目つきで私の目を一直線に見ています。この頃の私達の姿は――彼の成長も私とほとんど同じか少し背丈が高いくらいでした――まだ元服するかしないか絶妙な年頃でした。中身はいろいろな知識の蓄積はあったはずですが私と彼は小難しい話はなるべくしないで和気藹々とした雑談に花を咲かせました。
「なら、私は鴉にでもなりましょうか」
「カラス?太陽に住む導きの鴉か?そういえば王師のところにそんな名前で文を書いたらしいな」
「ええ、彼から見てより日の昇るのが私のほうが早くて私から見て日が落ちる方角にあなたはいますねって、内容でした」
「なかなか挑発的だと思うよ。まったく」
「虚栄も戦略だそうです」
「見誤ると死ぬな」
そういって彼はからからと笑います。私と離れてている間、彼が何をしているのか彼も語らないし私も追及しないけれど彼のほうはその頃の背景は良く知っている風でした。
「それかおまえは金鵜なら、おれが玉兎とか」