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【APH】本気出して菊菊について考えてみた

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「いやちょっと各地を巡っていて、上司にその報告をしに」
「あぁ、最近何かと不穏な動きがありますからそのことを調べているのですか?」
「まぁ、そんなところだよ」
その男は穏やかな物腰でそんなふうにいった。
「菊」
「はい」
「菊だよな」
俺が言うと男は不思議そううに何度か瞬きをしてからうなずいた。その姿を見ておれは悟られないように注意しながらため息をついた。またか、と思わなくもない。菊は昔からそうだ。まるで人間のように昔のことを忘れていく。俺が覚えていることも忘れていて言われてみてそういえば、ってうなずくようなやつだった。菊だけじゃなく耀さんや勇洙もそうだから本来そういうものなのかもしれない。忘れないわけじゃないしい風化した記憶もたくさんあるはずだのに菊が覚えていることと俺が覚えていることっはずれていく。例えば、俺がその時代いたかいなかったかとか。次に来る言葉は分っている。こうだ。
「失礼ですがどちらさまですか?」
寸分違わぬ言い方に我ながら懲りないと息を吐いた。
「申し遅れた。俺はムツバナという」
「そうですか。では改めまして、本田菊といいます」
「本田?」
「はい」
「・・・そうか」
「はい?」
「菊とは昔会ったことがあるはずなんだが、覚えはないか」
「いえ、ちょっとよくわからないです」
申し訳なさそうにするもののその所作は完全に他人に対する動きで俺が忘れられたことを知らしめた。必要がないものなら省くのも普通だろう。むしろ俺がこうしてここにいるほうが異常なんだ。分身と言えは聞こえがいいがありえないものがあるんだから。ためらう菊の前でみっともない姿を曝すまいといろんな言葉を並べてみるがやはり虚しい。片思いは実らないしい深い愛は受け止められさえしない。いや、これは恋でも愛でもない一方的な親しみのだけれども。
「どうかしましたか、六花」
菊が急に押し黙った俺を心配そうに声をかけてきたがそれよりもなによりも、いまこいつは六花とよばなかったか?とそのことに驚いて落ちていた視線を上げた。りっかはー雪はー六つの花弁の白い花。と教えたのは菊のほうだった。
「六花?」
「いや」
「どうしました」
「なんでもないんだ」
俺のことなんて覚えていないくせに名前を呼ぶときだけ親しそうな声色になるのが憎らしくって愛しくって気が楽になるのを感じたそこが俺の立ち居ちなんだと思い出しただけなのだけれど、親友で宿敵できょうだいみたいなのが菊で俺はそれの成長を近くて遠い場所から見守れればいい。
「今日中にここを発たなければならないんだ。せっかく気の会いそうだが俺はそろそろ行くことにする」
「今日発つのですか。私は今日着たばかりなので入れ違いですね」
「そうらしいな」
菊は困ったように笑ってから、道中お気をつけて、とお決まりの文句を言った。いわれれば名前を思い出せるけれど俺がなにかはやっぱり分っていないらしい。この体は実体もないしだれも認識しないし一人きりだけれど菊のために行き続けるのはいやじゃない。と言うことにしておく。二歩ほど歩いてから振り返ると菊はまだこちらを見て立ちすくんでいた。初夏の掃天と眩しすぎる光に目をすぼめながら俺は声を張り上げる。
「菊、また会おう」
俺は菊がすきなのだと思う。
「はい、きっとです」
次に会うのが戦場だとしても聞くが無事な姿を確認できればいいと思う程度にはすきなんだと思う。


るねっさんすの時期かな。
(タイトル・KAITOオリジナル曲「千年の独奏歌」より)