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【APH】本気出して菊菊について考えてみた

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「それだから。好きなんだ。わりと」
私のほうをむくこともなく花々の名前を言って彼はごろんと仰向けになり、かなしいともさびしいともつかない表情で咲き誇る梅の花を見ていました。花の重みでやや下を向く花々は今まさに見ごろで、豊満な花弁と豊かな香りがまるで私達を深く深く愛してくれているようでした。
梅は兄。一番最初に咲くから。菊は弟。一番最後に咲くから。雪は香不。花ではない菩提樹の白い花に似ているから。
「私はあなたを兄のように思っています。私が生まれるよりもっと昔のこともあなたは覚えているのでしょう」
彼は答えない。
「もちろん私にだってそういう記憶はあります。この土地に人が住み始めた頃からの記憶があるはずです。でも私が目覚めたのはきっとあなたよりもあとだし常にあなたに守られている。そんな気がします。だからあなたは大切な友人だけれど敬愛する兄だと思っているんです。六花」
寝そべったままの彼は横を向いてしまった。その背中にすがりつくように私も横になりその暖かになぜか安堵の息をこぼしました。
「おれはいつまでもおまえといるつもりだ。すくなくとも海神が王師から俺達を守る代わりどこまでも孤独な島に閉じ込めるあいだは」
誰に言うとでもないのでしょうが彼はそういって一度押し黙りました。
「一人では、戦さえできないだろう」
しばらくの沈黙の後のその色気のない言葉に私はにわかに笑いました。彼も気のきかない言葉だと思っているらしく苦々しく笑うのが背中の振るえで分りました。
まだ桜よりも梅が愛された頃のほんのつかの間の話です。

金色毛虫の時期だとおもう
(タイトル・KAITOオリジナル曲「月雪花」より)
<章=思い巡らせる空>

「北上はここでやめてくれないか。この先は不毛の地だ。おまえとは違う民がまだ残っている」
俺はおとうとにそう告げる。片手には剣、後ろには衰退と廃退を重ね細々と息づく民の村が。
「残念ながら、できません。私はこの土地がどこまで続くか見てみたいし、不毛の地を開拓するのが今の私の使命です」
おとうとは馬に乗り、弓を携え背後には開拓を試みる兵が控えている。
「そういいながら、おまえがほしいのは金じゃないのか」
この先の川の何箇所から砂金が取れることは朝廷もおとうともよく知ったことだろう。それをとりながら北の民は生活をしているのだから。
「金だけではありません。土地も、民も。ここは私だから」
この言い分はなんだ。傲慢としか思えない。だがおとうとの言い分にも一理ある。たしかに俺は国になるだけの力はなく、俺がここにいると言う時点でここは遅かれ早かれおとうとの一部になるのだろう。
「ここから先は通せない。押し通るのなら、相手をする」
その変化はきっとゆるやかだ。抵抗はし続けるだろうが行き場のない民はいずれおとうとたちに慣れて別物であったことを忘れてゆく。忘れられないものだけが――それを誇り高いともおろかだとも俺は思わない――さらに北へとゆき厳しい環境の中で独自に戒律と秩序を作ってゆくのだろう。俺はその過程のほんの一部を見守るに過ぎない。
「それならば、あなたには死んでいただきます」
ゆらりと彼の構える弓、死ぬ事はないけれど俺を消すのには十分な意味を持っている。きりきりと引き絞られる弦を形ばかり剣を構えて見つめる俺はいつもどおり余裕の笑みを浮かべているのだろうか。
「菊、また会おうな」

は、と息をついてはじめて自分が夢を見ていたことを知った。今でもたまに見る悪夢は徐々に薄れるものの完全に消えることもなければ何度も上書きされる怪我のおかげでねたの尽きることがない。しかし、最近は少し落ち着いたらしく、相変わらず領地の取り合いで小競り合いをする藩もいるし貧困から追いはぎや兵士になる農民が出てきたがこうして宿らしきものもでてきて昼近く(時刻で言うのなら午前9時ごろだろうか)まで眠っていても宿主にたたき起こされることはない。当然朝餉は食べそびれたし顔をあわせれば『遅いお目覚めで』と如実に語る白い視線とかち合うことは請け合いだが構うものか、どうせ一期一会なのだと気持ちを切り替え身支度を整えた。
布団代わりに敷いていた着物をたたみ、汗で湿った寝巻きもかえようかと思って替えの衣を持って考える。何も深く考えたつもりはないが寝起きのぼんやりした頭では結論を出すのにしばらくかかって着替えの前に行水をしようとなった。ついでに寝巻きも洗って、街で食料を買って質に行くあいだに少し風に当てるだけでも夏の晴れ渡る掃天の下でなら乾いてくれるだろう。もっともこの時間でも食料を売ってくれるのか心配になったが都のすぐ手前に位置するこの街は都に出稼ぎに来たものや貴族、旅人や商人など人の出入りがおおいからなにかしらあるだろう。

服を洗って、荷物をまとめ、流行と背格好にあわせて伸ばした髪も結いあげて、発つ準備をしてから街へ繰り出した。昨夜の遅くにこの街に着いたが意外なほど昼間から賑わいがあり点々と店も開いている。その一つ一つを見て回りたいところだが時間もないから米を少し、味噌を少し、それから肉や魚の干物と店主の妻が付けたと言う漬物を買って次は質に向かう。これでも特権階級をしているおかげで関も藩主の顔色もほとんど気にすることなくあちこちを歩き回っている、その旅先で手に入れたものを好きものの質屋に買わせて次の旅の資金に当てている。かつかつな生活だが気楽なものだった。それもこれも世に平安が伸びたおかげだろう。
あいつは俺のことを戦い好きのように思っている節があるがそれはとんだ誤解だ。人並みに痛いのは嫌いだし、俺がけんかする相手と言えば一人しかいないがそいつを傷つけるのはあまり好きじゃない。どちらかといえば俺の個人的な感情だけれどあの男のことをどこかおとうとのように思っている。実際には立場もあやふやで実態も経歴も他者からの認知もない俺のほうがよっぽど隠しただろうがまるで骨に染み付いた性のようにあの男を「いとし」と思うようになっている。どんなに派手に別れても、どんなに大怪我を負わされてもいまだかつて揺らいだことがない。
宿に戻ろうとした足を止めたのはふと思い付きがあったからだ。今から向かうのは都で、そのあとから鎌倉へ向かおうと思っていいる。都には今あいつがいるだろうから土産話を肴になにか杯をかわしてみようか、とおもった。それなら手土産の一つも持っていって驚かせてみようか、どれぐらいで都に着くかもしれないから食い物は持っていけないが工芸だって最近盛んだ。あいつの趣味が分らないなとすこし浮き足立っていたのも事実であらためて街の中を歩こうとしたとき、不意に後ろから声をかけられた。男の低い声だ。
「そこのお兄さん」
「俺の、ことか」
「ええ。別に見ていたわけではないのですがさっきからうろうろしているのが見えたので。道に迷いましたか?」
「いや、それは間に合っている」
ぼんやりとした穏やか・・・というよりはすこし眠そうな・・・黒い瞳にいまどき誰もしていない短く切りそろえた髪の男が俺に声をかけてきた。
「これから都に行くついでにそっちにいる知人に手土産でも持っていこうかと思って」
「都に知人ですか?お兄さんひょっとして結構得のある方ですか」