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わがままフェアリーラブ!

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俺には世界一、いや宇宙一可愛い恋人がいる。
今日はその自慢話と・・そうだな、その目に入れても痛くないどころか入れたいぐらいの恋人とした喧嘩の話をしよう。
あれはそう、残暑の厳しい高校生である恋人の夏休みが終わったころのことだ。

恋人から可愛らしいわがままを言われたところから始まる。



「臨也さん臨也さん、僕、臨也さんが淹れてくれた紅茶が飲みたいです」
「ん?いいよ、もちろん。どの葉にしようか?」
「臨也さんが淹れてくれるならなんでもいいです」
「・・・っ!!可愛い帝人君!」

ソファに座る可愛い可愛い恋人をぎゅーっと後ろから抱きしめれば、苦しいですぅなんて言いながらも俺の腕を離すどころか抱きしめてくれる。
短い黒髪にキスを落とすと、ひぁっ、なんて可愛い声まで漏らしてくれて。

(あぁ可愛いなんて可愛いんだ!さすが俺の帝人君天使!)

心の中で恋人を絶賛してしまう。
そう、俺の恋人、竜ヶ峰帝人君は死ぬほど可愛い。いや、彼の可愛さで人が殺せる。特に俺。
おでこ全開の短い前髪も、そのつるんと白いおでこも、顔の3分の1は占めそうな大きな目も、ピンク色のまろやかな頬も、小さな鼻と唇も、もうすべてが愛らしい。
この折原臨也をしてべた惚れだ。
俺だって自分がこうなるなんて想像もしていなかった。
何しろ7歳近く年も離れているし、こういってはなんだが田舎から出てきた純朴な少年をそういう対象で見るなんてありえないだろう。
だけど、実際俺はこうしてその竜ヶ峰帝人君を可愛いと思うし、恋人にできて舞い上がってもいる。

彼を手に入れるのには大変な苦労があった。
まず彼自身が異様なほどに恋愛ごとに鈍かった。
好意をもって接してもあっさりと躱され、礼儀正しいゆえに「奢ってあげる」とか言っても申し訳ないといって断られ、外堀から埋めようにも俺自身が周りに信用がなさ過ぎた(悲しい話だけど、自業自得だから仕方ない)
しかもその周りの連中はどいつもこいつも過保護だからよりやっかいだった。
幼馴染には黄色いやつらを使ってタコ殴りにされそうになるし(このカラーギャングめ)、妖刀使いには普通に道で出会ったら切りかかられ(さすが通り魔)、運び屋にはバイクで挽かれそうになり(依頼失くしてやろうか)、この世から消えればいいと思ってる男からは自販機を投げつけられる(あ、これはいつもか)
そんなバイオレンスな日々を潜り抜け、やつらの目を掻い潜り、ようやく手に入れた恋人が可愛くないわけがない!

あぁちなみに恋人になった流れはこれだ。

「帝人君!君が好きだ!愛してる!!だから君にも愛されたいし、恋人になりたい!付き合ってくださぁぁいっ!!」
「ひぃぃっ!サンシャイン前での土下座は勘弁してください!なりますっ、なりますから早く立って!僕池袋で生活できなくなっちゃう!!」

そして俺は可愛い可愛い恋人と、コンクリに激突したせいでできた額の傷を手に入れたわけだ。

後悔はしてない。
が、反省はしてる。

(もう少し格好いい告白すればよかった・・・)

でもあのくらい帝人君が焦ってないと、もしかしたら今のような幸せは手に入れられてなかったかもしれない。
動揺したところに付け込んだのは確かだ。
いやどんな手を使っても手に入れる気ではあるけど、まぁやっちゃったものは仕方ないってことで。

「はいどうぞー。熱いから気を付けてね」
「ありがとうございます」

かちゃりとカップをテーブルに置く。
上目づかいにこっちを見てお礼を言う帝人君の額に軽く口づけて、俺も隣へ座った。
2人分の重みを受けてもソファは軋み1つあげない。
もしかしたらソファの上でそういうことに至るかも!と思って、大きくて頑丈でなおかつ座り心地のいいものを新しく買ったのだ。

(まぁまだそういうことはできてないんだけどさ・・焦って事を進めて嫌われたら目も当てられないし)

ちらりと横目で帝人君をうかがってみれば、ばっちり目があった。
つまり俺を帝人君も見ててくれたってことで!
思わずへらりと顔が笑う。
すると帝人君も頬を赤らめて微笑んでくれて

(し・・しあわせ・・・っ!!)

飲んでる紅茶の味もわからないほど舞い上がる俺の心。

(帝人君が可愛すぎるからいけない!なんていけない子なんだ俺の帝人君!!)

作品名:わがままフェアリーラブ! 作家名:ジグ