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カッパの罠

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カッパに尻子玉を抜かれる話。全年齢ver

「――まずいね、迷った上に霧も出てきた。出来るだけこの場から動かないようにしよう」
「はあぁ……ただのお使いのはずだったのに……近道なんて考えなければよかった……」
ヒロトと木暮の二人は迷っていた。
かれこれ数時間は歩いただろうか。宿を出た時には東側の空に存在していた太陽が頭上を通り、段々と西の空へ角度を変えている。
ライオコット島の日本街エリア、宿屋と隣接した地域へのお使いの予定のはずが、抜け道を探り森林内へと足を踏み入れたせいで、本来の距離の数倍以上を歩く羽目になってしまった。
徒歩で数時間程度ならば、鍛えられたサッカー選手の脚や身体にはほとんど負担は掛からないだろう。
しかし明確な方向と目的地が示せず、自分の歩んでいる地点も曖昧となれば疲労感は何倍にも膨らんでいき、徐々に当人達の身体を蝕んでいく。
「……少し、休憩しようか」
丸太に腰を下ろし、ヒロトと木暮は今朝の風景を回想し現在の状況と対比して、長い長い溜息を吐いた。


「虎丸くんは何歳までカッパを信じていた?」
「カッパなんて……今時幼稚園の子でも信じないと思いますよ」
ヒロトの問い掛けに虎丸は呆れたような困惑したような表情で返した。
サンタクロースの存在を何歳まで信じていたか、そんな質問ならば訝しげな顔を作ることなく素直に返答していただろう。しかしカッパである。
物心付いた時には既にカッパは空想上の生物であると虎丸は理解していた。
母の帰省先の田舎では、近所の老人が度々子供を集めては「この川には昔から河童が出ると言われている」と語っていたが、虎丸含めて信じた様子の子供は一人もいなかったように思う。それどころか大人の目を盗んで川遊びするのが子供内でのステータスとなっていた。
「突然カッパなんて……どうかしたんですか」
ヒロトは子供が好きなのだと思う。
ただ、虎丸に対してイギリスエリアで「ビーフストロガノフは作れるのか」と問い掛けたように時折少しずれた疑問符を投げかけることがある。
今回も虎丸はヒロトの唐突な問い掛けの真意が掴めず、首を傾げざるを得なかった。
「いつだったか、お日さま園のメンバーでキャンプに行ったことがあってね……」
キャンプに同行した職員の一人が神話や伝承語りを好む人間で、夜話に河童や天狗等の自然界に存在する妖怪について触れた。ところがその翌日、膝までの水位の川で一人が溺れかけてしまった。
「浅瀬でも流れに脚を取られるというけれど、その時の俺にはカッパの仕業にしか思えなくてね……わりと長い間本気でカッパの存在を信じていたよ」
ライオコット島にもカッパに似た怪物の存在を語る伝承があると聞いて思い出したんだ、とヒロトは過去の自分に対して照れるように笑った。

作品名:カッパの罠 作家名:兎月