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カッパの罠

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「ヒロトくん、これからジョギング?」
朝の練習後にも関わらず、グランドの外へ駆けて行く素振りを見せるヒロトに秋が声を掛ける。
「日本街エリアのペンギーゴから、監督が頼んだミサンガが入荷したって電話が掛かってきて……」
「それならついでに取りに行くよ」
雑事を頼む形となり申し訳なさそうな表情を作る秋に、ヒロトは快く返事をする。
「――ついでに木暮くんもお願いします!」
二人の後ろから頬を膨らませた春奈と、引き摺られる形で連行される木暮の姿が現れる。春奈はヒロトと秋に木暮の行った悪戯の数々を陳情し、反省のために木暮にも雑用の負担をさせるように頼み込んだ。
「じゃあ木暮君、一緒に行こうか」
「ちぇっ……あいつ、いつも余計なことするんだよな」
ぶつぶつ春奈と別のメンバーに対する不平を述べる木暮の様子に、ヒロトは可愛らしさを感じたようで木暮本人に気付かれないように微かに笑った。

ペンギーゴに向かうためには森を迂回して進む必要がある。
ライオコット島はFFIの為に急遽開発された場所であり、隅々まで交通網は整備されていない。島の入り口からスタジアムまでの道のりが迷路じみているのと同様に、各地域でも所々面倒な道筋となっている。
「ここを突っ切れば早いのになぁ……」
「じゃあ特訓も兼ねて行ってみようか?」
木暮が小さく漏らした愚痴をヒロトが拾う。練習目的で外へ向かった所だったし、森ならば起伏に富んだ地面や、立ち並ぶ木々が良い特訓相手となるだろう。
そうして二人は森の中へと進み……今に至る。

作品名:カッパの罠 作家名:兎月