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家庭教師情報屋折原臨也2

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 授業後、静雄はハンズの中にいた。話は簡単。帰ろうとしていたところを岸谷新羅に捕まり、そのままずるずると引きずられて連れてこられたのであった。そして静雄と新羅がいるのはキッチン用品が集まったフロアである。機能性を重視したシンプルな鍋から、デザイン性を重視した変形フライパンまで、様々なものが集まっていた。ここに来た理由を聞けば「愛しのセルティが俺のために料理をしてくれると言うから一式揃えたいんだ」というなんとも甘い理由とのことだった。どれにしようかなと並べられた品物を物色している新羅の横で、静雄は腕を組んで立っていた。彼の醸す暗い空気のせいで、近くに客は誰もいなかった。
「で、それと俺がここに連れてこられたことに何の理由があるんだ」
「男一人じゃ恥ずかしかったから」
「帰る」
「ちょ、ちょっと待ってって」
どうでもいい、どうでもいい。静雄は新羅に背を向け、下りエスカレーターの方に向かおうとした。しかし腕を掴まれ、仕方なく足を止めた。
「ごめんさっきのは冗談。静雄って料理出来るでしょ」
「…何で知ってんだよ」
それは事実であり、よくある家庭環境事情の結果であった。しかし誰にも言った覚えはないし、家族以外の誰かに料理を振る舞った覚えもない。なぜこいつが知っているのか。じと、と静雄は新羅を睨んだ。けれど、それに慄くことなく新羅はあっさりと情報源を言った。
「幽君のインタビューに載ってたんだ。『兄の料理が時々食べたくなります』って」
「……」
「だから、参考になるかなーって」
「……どーでもいいだろ、道具なんて」
それが静雄の答えだった。別段道具に拘るようなことも無かった。だがその答えは新羅の気に入る答えで無いのは当然のことであった。
「そんなことないよ!可愛いものを持っていた方がいいじゃないか」
新羅に妙な啖呵を切られ、静雄は大きく溜息をついた。
「好きにすりゃあ良いじゃねーか」
「よし、じゃあこれとこれと…」
「ってちょっと待て。同じようなもの二つも買うな。用途考えろ」

帰り、新羅が持つ袋の中には、フライパンからゆで卵切り機まで、さまざまな料理器具一式が詰め込まれていた。静雄がいたからこそ大袋一つで済んだのだが、もし何も言う人物がいなければ、この三倍四倍近く、新羅は買っていたことだろう。主に『これ持ってたら可愛いよね』というかなり軽い理由で。そして会計を済ませたときに、奇妙なものを見る目で店員が一瞬自分と新羅を見たことに、静雄は気がついていた。
 ――― あり得ない
はぁ、と溜息をつけば、「どうしたんだい?」と新羅が顔を覗きこんできた。確かに新羅は自分より背が低いし声も高めで、顔も童顔だ。対して自分は全く反対で、それだけでああいう風に見られるのは迷惑だった。かといって新羅に責任はない。そのように見たあの店員の思考が悪い。静雄は近くにあったガードレールを軽く蹴飛ばすことでその怒りを発散させた。
「何でもねぇよ」
「……そう」
無残にも曲ったガードレールを、新羅は見なかったことにした。軽く蹴とばしていたようだが、蹴りを受けたガードレールは大きく歪み、急な放物線を描いていた。
60階通りを池袋駅方面に下っていく中料理のことを考えたとき、静雄はふと、臨也は何を食べているのだろうかと疑問に思った。大抵ああいう系統の人は外で買って家で食べていそうだが、案外自炊しているのではないか、と考えた。けれど高級レストランも普通に通っていそうで、益々分からなくなっていった。
「ねぇ、静雄」
「何だ?」
「あれ」
そう言って新羅の指す先には、同じ上着を着た青年が八人、標識の傍でたむろしていた。顔をそちらに向けると、視線が合った。ぼんやりと、静雄は彼らの羽織る上着には見覚えがあった。しかし具体的にどこで、どうして見覚えがあるのかまでは思い出せなかった。
彼らは目が合うなり急ぎ足で去っていった。
「…あ?」
「…何だったんだろうね?」
「さぁ…」
興味も何も引かれなかったので、静雄はそのまま新羅と一緒に駅方面に向かった。