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ありえねぇ!! 3話目 前編

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前日に準備し忘れた訳だが、彼なりの理由もあった。

かぼちゃはとにかくデカイ。
だから一緒の班のやつ六人が、大量に食えるだろうと。

だが、そんな静雄の気遣いは、皆に『これって食べられないよ』と大顰蹙を買った。
だが、意地になった彼は、怪力を駆使して本来食用でないそれを、綺麗なイチョウ型に薄く切り、油でカリッカリに揚げ塩コショウを振り、ポテトチップ風に仕上げるという力技でねじ伏せた。

結果は大好評だったと言える。
ここまでは良かった。

だが、同じ班だった新羅がにこやかに「静雄、私もこれを、フライにしていいか?」と、差し出してきたものが、最悪だったのだ。

『……静雄、何だったんだ?……』
恐る恐る、セルティがPDAを突きつけてくる。

「前日解剖した【ウシガエル】を冷凍した肉」

静雄が嫌そうに手のひらを上に向ける。
「しってっか? それってこう、俺の手に余るぐらい大きいカエルだ」

帝人の首の顔が、引きつっている。
セルティも、想像したのか、己の両肩を抱き、震えている。

《……それ、食べたんですか?……》 
「ああ、知らずに塩と胡椒つけて、から揚げにしたぜ。味も見た目も小粒な鶏肉そっくりだから、皆気がつかずにペロリと食っちまって。なのにあいつだけは手をつけなくてさ、不思議に思ってたら、そのうち手を鳴らして大笑いしながら種明かししやがって……」


あの後の阿鼻叫喚ぶりは、思い出すだけで腹が立つ。

女子も男子もひっくるめ、泣くわ喚くわ吐くわで大騒動になり、ぶちきれた静雄は速攻で、教卓や食器棚、調理器具やガスコンロ等、手当たりしだいに投げまくって、新羅を追いかけ回したのだ。
ガステーブルは破壊され、漏れたガスが引火し、火が噴いてしまった。
スプリングクーラーが作動し、急遽消防車が駆けつけなければ、家庭科の調理室だけでなく、多分学校も黒こげの消し炭に変えてしまっただろう。

結果、次の家庭科の授業から、新羅と静雄は教科そのものが免除となり、卒業まで一切調理室に近づく事は許されなかった。

当時静雄は11歳の少年で、またとても素直だったから。
大人である家庭科の先生の言葉通り、心の底に【お前は料理をしてはいけない】という命令を、インプットしてしまったのだ。


今日まで。
十二年間も。
自分でも気がつかないうちに。
ずっとずっとずっとずっとずっと!!


「……新羅、コロス……」

《静雄さん、気持ちは判りますが落ち着いてください。トラウマが一つ綺麗に消えたから、良かったって思いましょう!!》
『そうだ静雄。 これでお前は今日から自由に料理できるんだから!!』


そんな時だった。
諸悪の根源が、白衣を翻し、にこやかにダイニングキッチンへとやって来たのは。


「やあ静雄、心配していたけど、とても良い匂いだね。今日は一体何を作ってくれているのかなぁ?」
「死ねぇやぁぁぁぁぁ!!」

割れたフライ返しを、力任せに投げつければ、金属の平たい部分が、壁にカッターの刃のように突き刺さった。



《静雄さぁん!! ブレイクブレイク!!》
『馬鹿新羅!! 今すぐ逃げろ!!』
「ええええ!! やっぱり私、死亡フラグだったの!!」
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!」


セルティが影でぐるぐる巻きに静雄を縛り上げ、一応新羅の危機は去ったけれど。
フライパンで長時間熱せられた鶏肉は、見事に焼け焦げてしまい、その晩食卓に並んだ静雄特性【半熟卵のデミグラスソースオムライス】は、残念な事に、とても炭臭く、微妙な味わいになってしまった。

「残すんじゃねーぞ」
「……はい……」

男二人の情けない晩餐を、遠くから首無しライダーと帝人の首が、胃薬と水を待機させつつ、心配げに見守っていた。


★☆★☆★


静雄のトラウマ話でした♪
料理ネタを引っ張ってきたのは、このエピソードが書きたかったから(撲殺)

カクテルって、ある意味芸術品だと思います。
あんな小さなグラスに、色々飾り付けられるバーテンさんなら、料理の上達もきっと早いでしょう♪

後半は一転シリアスになります(ガクガクブルブル)