M.I.S
「美味しいものを我慢するくらいなら、太ればいいではないですか。私はピアノを弾いて太るなら、別に太ったって構いません」
「それはオーストリアだけなんだぞ」
「流石オーストリア君だねえ。僕オーストリア君のそういうところ、凄いって思うな」
「お前さん達だってウォッカだのハンバーガーだのの為なら何だってするだろーがよ」
「えーそうかなあ。そうかも」
「そんなことないんだぞ!」
「素直に生きればいいんです」
「いや、こいつらはちょっと自重するべきだとお兄さん思うけど」
「あー美味しかったァ」
ロシアが4つ目のケーキを平らげ、更にフランスから半分分けてもらったのも最後の一口を腹に収めて、幸せそうにホットチョコレートを飲み干した。
「食べ終わったかい? そろそろ次に向かうんだぞ!」
「そうだね、行こうか」
「お前らほんとにまだ食うのか……」
ぞっとしたようにフランスが肩を竦める。それをオーストリアが、余計なことを口出しするんじゃありません、と叱り、立ち上がったアメリカとロシアを見上げる。
「わが国自慢の菓子です。たっぷり堪能してきなさい」
「うん、ありがとうねー」
「行ってくるんだぞ!」
見たことがないほど機嫌よく送り出してくれたオーストリアに手を振って、アメリカ達はカフェを出た。
「よし! じゃあ次へ出発するんだぞ!」
「煩いってばアメリカ君。いちいち喚かなくていいよ、もう。それより地図出して」
「俺がリーダーだぞ! 命令しないでくれよ!」
「だったら命令される前にちゃんと動いてよね」
言い合いながら、大通りを大股で歩いていく二人を、次々と人々が振り返っていく。だが二人は気にしない。
多少の諍いはあるものの、M.I.Sの活動は、アメリカとロシアの行く手に美味しいお菓子がある限り、まだまだ終わらないのであった。