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きみこいし
きみこいし
novelistID. 14439
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大空たちの休息

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問題は彼の腕の中にあった。そこには、いつの間に来たのかザンザスの腕に抱えられ、たくましい胸板に頬を預けてすぴすぴと眠るツナヨシの姿があったのである。
むにゃむにゃと口を動かし、幸せそうに眠る表情は弛緩しきっている。殺し屋中の殺し屋ヴァリアーのボスに身を寄せ快眠する人間が、まさかこの世にいようとは。とてもじゃないが信じられない光景だ。
さすがは、サワダ・ツナヨシ。
並々ならぬ『血』と『炎』と『鈍さ』の持ち主だ。


サワダ・ツナヨシ。
薄茶色の髪と瞳の華奢な少女。だが彼女こそがイタリアマフィア界最強、ボンゴレファミリーの十代目ボスである。
誰よりも血と炎に愛され、絶対的な力でボンゴレに君臨するツナヨシだが、彼女の性質はことごとく争いを嫌う。もともと日本の平和な一般家庭に育ったツナヨシは、ボンゴレ十代目を継承したあとも極力、武力による交渉を避ける傾向にある。
マフィアのくせに。甘い甘い人間なのだ。
対するザンザスは、独立暗殺部隊ヴァリアーのボスであり、生粋のマフィアである。
生まれながらに破壊力抜群の『憤怒の炎』を宿し、ボンゴレ九代目の実子としてマフィアに必要なあらゆる教育を受けてきた彼は、荒事をことのほか得意とする。普段は怠惰に睡眠をむさぼり、めんどうな仕事はばっくれるか、部下に押しつける。常に偉そうにふんぞり返って命令するわ、殴る蹴るの八つ当たりなど日常茶飯事。何かとすぐ物騒なコミュニケーションをとる、暴君ぶりを発揮している。
―――――要するに対極にいるような二人なのだ。

その二人が何故この光景。
手元のローテーブルに書類が散らばっているところを見ると、どうやらツナヨシは仕事の打ち合わせで来たようだが。
それが一体、何を、どうしたら、この状態なのだ。
だいだいこの二人は過去、ボンゴレボスの座をかけてガチで殺し合いなんぞもした間柄である。当の二人には、表立って特に確執など見られないが、心臓に悪い光景だ。
それにツナヨシは普段からめっぽうザンザスを怖がっている。
――――――と思う。
彼の視線や仕草にあわてふためき、赤面し、時に怯えるクセに、この警戒心の無さはなんなのか。相変わらず、ある方面では極度の『鈍さ』を発揮している。
「ちゃんと躾とけ・・・」
思わず家庭教師と守護者達に呻きの声をあげ、頭を抱えたスクアーロだった。
そんなスクアーロの杞憂など知らず、ツナヨシはすぴすぴと幸せそうに眠っている。もともと実年齢よりも幼く見えがちな東洋人であり、かつご先祖譲りの脅威の童顔遺伝子を持つツナヨシが、堂々たる体躯のザンザスに抱かれて眠る姿はまるで黒獅子の腹に丸くなる子犬のようだ。一見ほほえましい光景だが。
だが、しかし。
「う゛ぉぉい、頼むから、アレ何とかしろぉ」
「あら、せっかく気持ち良さそうに寝てるのに、起こしちゃかわいそうよ」
「そうだよ。せっかくの金ヅルを」
「王子はヤだよ。ボスに焼き篭手押されたくないもん」
「うむ、ボスの邪魔はさせん」
「って復活したのかよ、レヴィ。うぜぇな。だいたい、てめぇーら考えてもみろ!このままで済むと思うかぁ?万一ボスがツナヨシに手ぇだしてみろ―――――即、内部抗争だろうが」
ツナヨシを敬愛しすぎる右腕を筆頭に、暴走した守護者たちが獲物を手に向かってくること間違いなしだ。そうなれば、守護者vsヴァリアー幹部、再び。別に戦闘なんぞ負ける気はさらさらしないが、前科があるだけに目をつけられやすいヴァリアーである。余計なもめ事は回避すべきだろう。
「いいじゃん、やろうよ。大歓迎」
「報酬はずんでくれるならね」
「それじゃ、また了ちゃんと勝負できるわね」
「目障りな連中は排除する」
「おまえらぁ!」
こそこそと小声で言い争いをはじめたスクアーロたちだった。が、もともとスクアーロの声はでかい。押さえていても全然小声ではないのである。ぎゃいぎゃいと、いい加減騒がしくなってきた扉口に、ザンザスは億劫そうに瞼をこじあげ、不機嫌かつ剣呑極まりない視線を向けた。
「・・・うるせぇ、何を騒いでやがる。カスどもが」
「あら、起こしちゃった?ごめんなさいね、ボス。
スクアーロがうるさくって」
「う゛ぉぉい!オレのせいかよ!」
といっても、ザンザスの双眸に眠りの余韻はカケラも見あたらない。それはそうだろう。何と言っても暗殺部隊の隊長なのだ。気配には敏感だ。実際にはルッスーリアが来た時点で既に目覚めていたのだろう。が、面倒くさくて彼らの気配を無視していたが、それが許容の限度を越えたというところか。

ザンザスが覚醒したとなれば遠慮は無用だ。ズカズカと部屋に入るスクアーロを筆頭に、ルッスーリアたちも続く。そして我らが大空たちが横たわるソファを取り囲んだ。
「ししっ、ツナヨシだらしねー。ヨダレたらしてるじゃん」
「む!ボスのシャツになんたる無礼!丸焼きにしてやる」
「やめなさいよ、レヴィ~」
「ボクとしてはもう少し刺激が欲しい構図だね」
「そんなもん、断固として阻止するぞぉ」
口々に勝手な感想を言い合う部下達にザンザスの機嫌は急転直下に下降する。
「うぜぇ、うせろ。・・・コイツが起きたら掻っ消す」
「ってもよぉ・・・ボス、こいつどうするつもりだぁ?」
「は、てめぇには関係ねぇ。消えろ、ドカスどもが」
ドスのききまくった重低音には、殺気がにじみまくっている。凶悪なご面相でギロリと睨まれ、ボスの機嫌が『最悪』にあることを察したベルたちは、即座に撤収の構えをみせた。彼らだって命は惜しい。それに我らがボスには『手加減』などという単語は存在していないのだ。
だが消え去るには少々遅く、ざわめく気配にかすかに身じろぎをしたツナヨシは「う、んー」と眠そうな声をあげると、目をあける。
そして、ザンザスの胸からもぞりと顔を上げると、状況を把握すべくあたりを見回した。
ツナヨシとザンザスを取り囲むのは見慣れた黒い集団。
相変わらず奇怪なダンスを踊るルッスーリアに、寝起きのツナヨシを納めるべくデジカメを構えるマーモン、偏光板を構えるベル、恐ろしい表情で睨み付けるレヴィ、苦虫を百匹くらい噛み潰したかのように盛大に顔をしかめるスクアーロ。
ぼんやりといまだ夢見る瞳は、勢揃いした一同を順々にながめていく。そしてすぐ間近にザンザスの真紅の双眸を見つけると、
――――ツナヨシはふにゃりと満足そうに微笑んだ。
さらには、もぞもぞと居心地のいい体勢をさがし、再びザンザスに体を預け眠りの世界にご帰還だ。スヤスヤと非常に幸せそうな寝息が聞こえてくる。
「「「「「・・・・・」」」」」
室内を非常に微妙な空気が支配した。呆気にとられた彼らに共通する言葉は『もう勝手にしてくれ』だ。

「何コレ。やってらんねー」偏光板を投げ捨て、理解不能とばかりに首を振るベル。
「まったくだね」がしかし、いそいそとデジカメをしまうマーモン。
「ふぬっ!」再び撃沈、観光地土産の置物と化したレヴィ。
「ま、お邪魔虫は退散しましょうか」うふふと笑うと、ルッスーリアは石化したままのレヴィを回収し、ずるずると引きずりながら扉へ向かう。
「・・・いいかぁ、ボス。くれぐれも自重しろよぉ」重たいため息とともに、無駄だとは思うが一応の釘をさすスクアーロ。

作品名:大空たちの休息 作家名:きみこいし