【DRRR】かれシャツEND・前【静帝】
》静帝
『かれシャツEND』
雨は小雨。それでもたぶん台風が来てるんだと思う。
恐らく、この池袋にだけ。
そう思うのは、街路樹も標識も自販機も雨の降り注ぎ続けている空を、勢いよく舞っているから。
いやそれとも、たった1人の周りにだけ竜巻が起きてると言うべきなんだろうか。
そもそもあの人が竜巻なんだ、と誰かに説明されれば、それはそれで納得できた。
池袋の街に溢れていた色とりどりの傘を散らしたように一斉に、人影がその場所から離れていく。
「園原さん、回り道して帰ろうか」
進行方向にその竜巻を発見して、そこに園原さんを巻き込むわけには行かない、と踵を返す。
しかし隣を歩いていた彼女は体をそちらに向けたまま、首だけ僕を振り返ってコテンと傾げた。
とても可愛い仕草だと思い、自然に顔が少し赤くなっていくのが分かる。
「いいんですか?」
ドキッとする表情に気取られて、その言葉の意味を理解するのに少し時間がかかった。
そしてその言葉の意味を理解すると更に顔が熱く茹だっていく。今ごろ耳まで真っ赤になっていることだろう。そう思えば恥ずかしさでまた熱くなる。
つまり彼女はこう聞きたいのだ。
「平和島静雄がいるけれど、会いに行かなくていいのか?」と。
静雄さんが男子高校生の1人と仲がいいことは、池袋に住んでいる人にはよく知られていると思う。何しろそこにいるだけで目立つあの静雄さんと頻繁に並んで歩き、一緒に食事をしたり、出掛けたりしているので、目撃情報が相次いでいるのだ。
そして、来羅学園の生徒の大半が、それが僕であることを知っていると思う。
さすがにダラーズに限らずネット上の掲示板などに自分の名前が挙がったときにはすぐに消すようにしているし、その事実を快く思っていない情報屋が名前や目撃写真などを消しまわって更に別の情報を流しているので、学校外では顔は知られているとしても名前までは知られていないはずだ。
そして園原さんは、僕と静雄さんが特別仲がいいことを知っている。
つまり、そういうことだ。
「いや、あんなふうに暴れてる静雄さんの傍にいたら、たぶん僕なんて簡単に潰されちゃうしさ。今はたぶん機嫌悪いんだろうし、ね」
「そうですか」
何となく言いたいことが残っているような響きはあったけれど、同じように違う道の方へと向き直ってくれた。時々、園原さんは鋭いことを突いてくるので驚かされる。
そして、さぁ進もうと言うときに、ようやく僕は気が付いた。そんな会話をしている間に、自分たちの周りからそれまで溢れていた沢山の傘の集団がすっかりいなくなっていることに。
振り向けば、鮮やかな赤が空に浮いている。
有名ドリンク会社の名前が側面に印刷されたその金属の塊が、やけにゆっくり動いて見えた。
ゆっくり、それでも確実なスピードで近づくソレに対して、僕の反応もやけにゆっくりとしていて。降ってくるソレを避けられるわけもなく。
鼻先に当たるんじゃないかと錯覚するほど近づくまで見つめ続けて、最後の瞬間に目を瞑った。
これは確実に死んだかも知れない。
最後に見たのが間近に迫るお茶のパッケージという切ない記憶で。
「帝人君!」
…ズン…!!
『かれシャツEND』
雨は小雨。それでもたぶん台風が来てるんだと思う。
恐らく、この池袋にだけ。
そう思うのは、街路樹も標識も自販機も雨の降り注ぎ続けている空を、勢いよく舞っているから。
いやそれとも、たった1人の周りにだけ竜巻が起きてると言うべきなんだろうか。
そもそもあの人が竜巻なんだ、と誰かに説明されれば、それはそれで納得できた。
池袋の街に溢れていた色とりどりの傘を散らしたように一斉に、人影がその場所から離れていく。
「園原さん、回り道して帰ろうか」
進行方向にその竜巻を発見して、そこに園原さんを巻き込むわけには行かない、と踵を返す。
しかし隣を歩いていた彼女は体をそちらに向けたまま、首だけ僕を振り返ってコテンと傾げた。
とても可愛い仕草だと思い、自然に顔が少し赤くなっていくのが分かる。
「いいんですか?」
ドキッとする表情に気取られて、その言葉の意味を理解するのに少し時間がかかった。
そしてその言葉の意味を理解すると更に顔が熱く茹だっていく。今ごろ耳まで真っ赤になっていることだろう。そう思えば恥ずかしさでまた熱くなる。
つまり彼女はこう聞きたいのだ。
「平和島静雄がいるけれど、会いに行かなくていいのか?」と。
静雄さんが男子高校生の1人と仲がいいことは、池袋に住んでいる人にはよく知られていると思う。何しろそこにいるだけで目立つあの静雄さんと頻繁に並んで歩き、一緒に食事をしたり、出掛けたりしているので、目撃情報が相次いでいるのだ。
そして、来羅学園の生徒の大半が、それが僕であることを知っていると思う。
さすがにダラーズに限らずネット上の掲示板などに自分の名前が挙がったときにはすぐに消すようにしているし、その事実を快く思っていない情報屋が名前や目撃写真などを消しまわって更に別の情報を流しているので、学校外では顔は知られているとしても名前までは知られていないはずだ。
そして園原さんは、僕と静雄さんが特別仲がいいことを知っている。
つまり、そういうことだ。
「いや、あんなふうに暴れてる静雄さんの傍にいたら、たぶん僕なんて簡単に潰されちゃうしさ。今はたぶん機嫌悪いんだろうし、ね」
「そうですか」
何となく言いたいことが残っているような響きはあったけれど、同じように違う道の方へと向き直ってくれた。時々、園原さんは鋭いことを突いてくるので驚かされる。
そして、さぁ進もうと言うときに、ようやく僕は気が付いた。そんな会話をしている間に、自分たちの周りからそれまで溢れていた沢山の傘の集団がすっかりいなくなっていることに。
振り向けば、鮮やかな赤が空に浮いている。
有名ドリンク会社の名前が側面に印刷されたその金属の塊が、やけにゆっくり動いて見えた。
ゆっくり、それでも確実なスピードで近づくソレに対して、僕の反応もやけにゆっくりとしていて。降ってくるソレを避けられるわけもなく。
鼻先に当たるんじゃないかと錯覚するほど近づくまで見つめ続けて、最後の瞬間に目を瞑った。
これは確実に死んだかも知れない。
最後に見たのが間近に迫るお茶のパッケージという切ない記憶で。
「帝人君!」
…ズン…!!
作品名:【DRRR】かれシャツEND・前【静帝】 作家名:cou@ついった