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【DRRR】かれシャツEND・前【静帝】

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 振り返れば、普段照れたような困ったような笑顔をしていることの多い彼女が、珍しく口角を引き上げてきっちりとした作り笑いを浮かべていた。
 ああ、営業スマイルの怖さ。
 そんな感想を抱きながら目を細めていれば、いつの間にか顔を上げた静雄さんが園原さんを見上げ、次に僕を見た。
 まだその表情は困惑しているような顔だったが、ようやく僕が傍にいることをはっきりと理解したようだった。

「み、帝人、本当に悪かった!!け、怪我とかないか?どっか痛いとこは?」
「ないですよ。園原さんが助けてくれたので、ね?」
「はい」

 もう1度確認に振り返るが、やっぱり園原さんは思い切り両方の頬を引っ張ってニッコリと強く強く笑っていた。
 正直、すぐ近くまで自販機が迫っていたときよりも怖いのはなぜだろう。

「私がいて良かったです」
「う、うん、もちろんだよ。本当にありがとう園原さん」

 今の確認で、加害者:静雄さん、被害者:僕、救済者:園原さんという構図が完全に静雄さんの頭の中に出来上がったようだ。
 普段、絶対に頭を下げたりしない人が、園原さんに大きくお辞儀していた。
 膝をついたまま手は膝の上なので、その姿は土下座に近い。
 そして何だかこの構図はとても怖い。

「すまなかった。もう2度と帝人を傷つけたりしねえ」
「あれ?僕、怪我してないですって」
「本当ならもう2度と暴れたりしないって誓っていただきたいんですが、仕方ありません。出来るだけ物を投げないようにすると約束して下さいますか?」
「おう、出来るだけ物を投げないようにするし、飛ばさないようにする」
「はい」
「帝人が近くにいるときには暴れないようにもする」
「はい。お願いしますね」

 完全に僕はスルーされていた。
 何だろう、この人たち。まさか園原さんまでこんな。ああ、今の園原さんなら凄く欲しい、ダラーズに欲しい。きっとこの人がダラーズのリーダーと言われてもみんなついて行ける。
 そんな想像は置いておいて、完全に師弟関係のような構図になっている2人を返り見る。
 ちょうど同じタイミングで2人ともが振り返った。
 その視線の押されて後ずさりそうだ。
 瞬間的に寒さを感じて、体がビクリと震えた後、堪え損ねたくしゃみが突いて出た。

「ッくしゅ!」
「あ、だ、大丈夫か帝人!」
「大変です。早く帰って体を拭いた方がいいんじゃないでしょうか」
「あ、うん。大丈夫だよ、大したことな……っくしゅ!」

 フォロー中にもくしゃみが出てしまえば、説得力はゼロだった。

「ここからなら俺ん家の方が近い。うちに来い」
「静雄さんの家!?」
「それがいいと思います。早く暖まらないと本当に風邪をひきますよ」

 何その結託、いつの間にそんなに仲良くなったの!?
 静雄さんの家になんて行ったことないし、すごく興味あるけど、こんな状態で行くのは勘弁させて欲しいし、正直もう自宅に帰りたい。

「ほら、行くぞ」
「竜ヶ峰君の傘です。明日は日曜日ですから、雨が止むまでゆっくりしてきて下さい」
「あれ!?何かおかしいよね園原さん、ゆっくりしてきて、ってそれ自分ちじゃないんだからさ。っていうかそんなことよりそうじゃなくて、僕は自分の家に」
「駄目です」
「そんなきっぱり!?」

 つい正臣につっこみを入れるように訴えたが、僕がいつもしているようにすっぱりと切られてしまい、どちらかと言えば僕の方が正臣側になっていた。
 あの2人、実は最初からグルだったんじゃないのかな。
 そう思ったのは、最終的に静雄さんの肩に担がれて、遠ざかっていく園原さんを見たとき、本当に楽しそうな笑顔をしていたからだった。