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【DRRR】 emperorⅠ 【パラレル】

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「この前、新羅の家であのCDのジャケットを見せてもらってね。まぁそうしたかったからわざと怪我したなんて帝人くんはこれっぽっちも知らないんだろうけど。わざわざそのために大ッ嫌いなシズちゃん連れて歩いて、一緒に鍋食べたんだよ、思い出しても吐き気がする」
「…どうでもいいわ。鍋、食べられて良かったわね」
「帝人くんと食べられたのは良かったけどね!それにそこまでしてCDを見に行って本当に良かったよ。そのときの帝人くんの反応と言ったら!!」

臨也は声を上げて笑い、自分の胸の前で手を交叉させる。
すかさず波江はその光景から目を離し、(こいつきめぇ)と口の中でだけ呟いた。

「帝人くん、虚ろな目でCDのジャケットを見ながら、悲鳴にもならない怯えた声を上げてたよ。アレ、もうちょっと放っておいたらたぶん、完全に壊れてたと思うんだ。ふふ、かーわいいなー」

竜ヶ峰帝人は波江から人生における全てを奪ったが、この上司に彼が気に入られてからは比較的同情したり親身に思ったり出来るようになった。
それもこれも、この上司があまりにも変態であるためだ。

「その状態から、俺が救ってあげたんだよ。俺の腕の中で安心して肩の力を抜く、帝人くんはほんと堪らなかったね。本気であのCDの存在に怯えきってたからさ。でもそれ以上に」

思い出しても興奮するのか、臨也はゾクゾクとする体をぎゅっと抱きしめる。

「落ち着いた帝人くんは、何も、本当に何もなかったように楽々と話題を変えて、無理をしてるわけでも取り繕ってるわけでもなく、本当に普通に笑ってたんだよ」

だから、やめられない。あの子の狂気は本当に面白い。
臨也がガクガクと椅子を揺らしながら、ラブだの何だの声を上げて笑いだす。
異様にキモチワルイ。

「はぁ、ほんと、帝人くんには楽しまされるなぁ。ジャケットを見ただけで怯えるってことは、曲がトラウマなんじゃない。あの”エンペラー”の存在自体が彼の恐怖に直結してるんだよ。本当に調べ甲斐があるよね。それで、調べてたら別に面白いことも見つかったんだ。ねぇ、誠二くんもたぶん知ってると思うんだけど」

誠二、と愛する弟の名前が挙げられ、急に波江が振り返って真剣に臨也の話を聞き始める。
それは当然ながら予想通りであり、臨也は嬉しそうにまた続けた。

「帝人くんはね、学校でもそれ以外でも、絶対に歌を歌わないんだって。普通に聞くし、流行の曲の話にもある程度ついてこれるのに、それって異様だよね。本当に、一切歌わないんだって。そして”エンペラー”と帝人。どう見てもぱっと聞いた瞬間に同一のものを指しているとしか思えなくない?」

尋ねたところで、弟の話でなかったため潔く仕事を再開している波江から返答はなかった。
それでも特に気にはならない。

「ほんと、反吐が出そうなほど楽しみだよ」

臨也が楽しみにしていることは、そのほとんど全てが彼以外の人間にとって災厄でしかない。
それを波江も、臨也自身も理解していたが、それを止める者はここには存在していなかった。