庭火の花
冷たささえ感じる声が、はっきりと拒絶の言葉を吐く。臨也は眉を顰めた。四木がこうもしっかり断言したときに、その言葉を覆させたことは未だかつて臨也にはない。
あの男、静雄は、臨也と上手く付き合っていけるような人間には見えなかったし、そもそも臨也は男に興味はない。だが、あの姿。青紫の花被を指先でなぞって笑った顔が、いっそ胸糞悪く思えるほどに目に焼きついてはなれない。その感情に、臨也は敢えて名前を付けようとは思わない。
ただ、どうしても彼を、手に入れたかった。
(庭火の花)
※「しずのおだまき」の歌の「おだまき」は、花の苧環ではなく、花の由来となった麻糸の玉の方を指しています。