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学園天国

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夜の風が少しだけ冷たくなってきた中。帝人はPCの前でため息をついた。
そして帝人と背中合わせに座っている学徒を肩越しに見やる。

「そんなに気になるなら会いに行っておいでよ」

帝人の言葉に異常に反応した学人は首を横に振る。

「無理です・・・だってあんな事言っちゃったし・・・」

いつもの優しげな笑みはどこかへ行き、暗い影を落す学人の顔を帝人は見ていられなかった。
帝人は一瞬何かを思案視した後、mailformを開き、ある人間へとメールを送りつける。
簡潔で簡素。
でもこれで充分だろうと帝人は確信している。
なぜなら、きっとこの学人よりあのボカロの方がやっかいで、
きっとあの男も帝人以上に手を焼いているだろうから。
あれから数分後、簡潔な文面が帝人の元に届いた。
帝人はほっと息を吐き、学人に振りかえる。

「学人。仕事だよ」

「・・・マスター・・・今日は」

少し冷たいかなとは思うが、ここで甘やかしたらきっとずっとこのまま。
帝人は意を決して冷たい声音で学人に話しかけた。

「今日も?だろう。いい加減に気持ちを切り替えてくれないと、僕も生活できないよ」

「・・・申し訳ありません。了解ですマスター」

漸く学人は重い腰を上げ、帝人からの情報を持って部屋を出て行った。
帝人は学人の寂しそうな背中を見ながら、心の中でわびる。

(それでも・・・きっかけしか僕らは作れない。進むも戻るも君たち次第なんだよ)

帝人の情報通りの場所。
人気もない公園に学人は立っていた。

(えっと・・・ここの自動販売機の場所でいいんだ・・・よね?)

あたりをキョロキョロ見渡すが、人っ子1人いない。
明るくてらすのが自動販売機の光だけだというのも心細さを増長させた。

(時間・・・過ぎてるよ。マスター・・・)

ため息をつきながら自動販売機に背を預ける。
見上げれば暗闇に星々の輝きと満月が煌めいている。
また自然とため息が漏れた。

(サイケ・・・元気なかなぁ)

意図的に避けている学人が言える言葉ではないと分かってはいるが、
やはり考えてしまうのは性分だろう。
あの後、キスの騒動以来まともにサイケとは話をしていない。
サイケを見ると、どうしても思い出してしまうのだ。
あの時の感覚を。サイケの温もりを。あの笑顔を。
今だってあの時を思い出すだけで身体が熱くなるのに。

(絶対あったら僕、サイケを傷つけそう・・・)

恥ずかしいのだ、と学人は理解していた。
サイケを見るとあまりにも恥ずかしくて、きっと絶対傷つける。
避けてしまうのは傷つけたくないから。

(・・・・あぁ、でも今も傷つけてるんだよね)

何度もサイケからメールがあった。
会いたいと。会って話したいと。会って話して謝りたいと。
何度も、何通も。
その全てを学人は蹴った。拒絶した。無視をした。
サイケの悲しそうな顔が目に浮かぶ。
泣いてはいないだろうか、しょんぼりしていないだろうか、いじけていないだろうか。
会わなければ分からない。でも会いたくない。何という矛盾。

(僕って案外優柔不断・・・)

またため息。
いったい幾つため息をつけば気が済むのだろうというほど先程からため息しか出てこない。
時間をとうに過ぎているのに依頼主は現れないし。
後30分してもこなければ帝人に連絡して帰ろうと学人は心に決めた。
そう、決めた瞬間自分以外の気配を感じる。
学人は漸く来たと思い、身体を自動販売機から離して相手がいるだろうと思われる暗闇を見つめた。
けれど、暗闇の中から現れたのは純白。
学人は驚愕に緑の瞳を見開いた。小さな声が口から漏れる。

「サイケ・・・」

サイケは暗い顔で学人を見下ろしていた。
無表情冷酷残虐無感情冷徹残忍。色々な言葉が目まぐるしく学人の頭を駆けめぐる。

(・・・だってこの前まで子供で、漸く大きくなって、あんなに可愛い笑顔を浮かべていて・・・)

頭が痛い。混乱困惑戸惑い不安。
支配される感情はどれもこれも目の前に起つサイケに対しての恐怖。

(どうして・・・サイケを怖いと僕は思う・・・・?)

ゆっくりとサイケは歩いてくる。学人の前まで。
無意識に学人は後ずさっていた。
背中が自動販売機に当たり、がつんという音がする。

「がっくん・・・どうしてそんな瞳で俺を見るの」

「ぁ・・・」

「どうして俺、いっぱいメールしたよ。連絡したよ。会いたいって。話したいって。謝りたいって。
なのにどうして全部全部全部無視したの。届いていなかったわけじゃないよね。だって全部臨也に確認してもらったもの」

「サイ、ケ・・・」

「がっくんは俺のこと嫌いになった?嫌いになったから無視するの?嫌いになったから俺を捨てるの?
ねぇ!ねぇ!ねぇ!がっくん!」

がしゃん!
サイケの右腕が自動販売機に当たる。
自動販売機の光に照らされているサイケの顔。
サイケの明るい綺麗な色だった瞳はどこか濁った色をしている。

「答えてよ・・・がっくん」

「っ・・・」

サイケの顔が苦痛に歪む。
そして、ゆっくりとサイケの頭が学人の肩に当たった。
力強くサイケは学人を抱きしめる。どこにも行かないように、逃げないように。

「・・・・サイケ?」

「嫌いなら嫌いな所を言ってよ。俺直すから。だから言ってよ。・・・・お願いだからこのままなんて俺、嫌だよ」

弱々しい悲しい声。
学人は心が痛かった。辛かった。泣きたかった。

(ここまで僕はサイケを追いつめてた・・・・)

学人は鼻の奥がつん、と痛くなったが歯を食いしばり自分より多くなった子供抱きしめた。
サイケの腕に更に力がこもる。

「・・・・ごめんねサイケ。サイケを僕、とっても傷つけてた」

「・・・」

「ちゃんと伝えれば良かったんだ・・・でも、僕は、その・・・恥ずかしくて。
恥ずかしくて絶対サイケを傷つけると思ったんだ・・・」

サイケがのろのろと顔を上げ、学人をのぞき込む。
瞳は揺れていて、今にも泣き出しそうだった。

「・・・だから、だから会ってくれなかったの」

「うん、ごめん」

サイケは肩を振るわし、とうとう嗚咽を零し始めた。
ぽたぽたと綺麗な雫が学人の頬を濡らす。

「お、おれ・・・がっ、がっぐんにきっ、嫌われたとっ、お、おもっで」

涙を拭うことなくぼろぼろと泣くサイケ。学人ももう限界だった。
サイケの涙につられて涙を流す。

「ごめんねごめん・・・泣かないでサイケ。ごめんごめんね」

「うぅっ・・・がぁっくぅん」

サイケは泣きながら学人に抱きついた。わんわんと泣くサイケの頭を学人は撫でる。
何度も何回もいつまででも。

「がっぐんっ」

「うん、サイケ・・・」

「もっもうねっ・・・お、俺を避けないでっ」

「うん、もうしない。しないよ・・・・約束する」

「う゛ん」


二人はお互いが泣きやむまで、落ち着くまでずっとそのままでいた。


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学人が出て行ってから数分後。
帝人の携帯のバイブ音が部屋に響く。

「もしもし・・・あ、臨也さん。あ、はい出ていきましたよ」
作品名:学園天国 作家名:霜月(しー)