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きみこいし
きみこいし
novelistID. 14439
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結婚狂騒曲1

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藁にもすがる思いでザンザスに飛びつくツナヨシに、ザンザスは不敵な笑みをうかべて、こう宣った。
「先に結婚しちまえばいい」
「は?」
なるほど、イタリアはカトリックの国。重婚は禁忌である。ならば先に結婚するのも一つの手段だ。
――――しかし、一体、誰と?
ツナヨシの疑問を晴らすかのように、ザンザスが彼女を抱き寄せる。
「安心しろ、一生添い遂げてやる」
「いやーーーー」
ここにも暴君がいた。
嫌がるツナヨシを無視し、ザンザスはいそいそと携帯電話をとりだすと、指示を出し始める。
「・・・ルッスーリアか、いますぐ婚礼衣装と指輪、それから神父を用意しとけ。あ?サイズ?ボンゴレ本部にデータあるだろ、マーモンに調べさせろ・・・」
「う゛ぉぉぉぉい、マジかよ。ボス・・・」
頭を抱えるスクアーロに暴君が無茶ぶりを発揮する。
「うるせーカス鮫が、五分でアジトに着かねぇなら、かっ消す」
「無理に決まってるだろうがぁ!どんだけ距離があると思ってる!それにそいつに手をだしゃ、守護者どもが黙ってないぜ」
「ちっ、カスどもが。うぜー」
「そうだよ!ザンザス、早まるな」
青い顔でコクコクとうなずくツナヨシを、じっと見つめる。
血のような紅い瞳で凝視されている方は気が気でない。まるで大型肉食獣の前に、差し出されたエサの気分だった。
ジッとツナヨシを凝視したザンザスはぼそりと呟く。

「・・・既成事実もつくっとくか」
「って、何言ってんの!ひぃぃぃ」
抗議の声を無視し、ザンザスはツナヨシに覆い被さる。
ザンザスの吐息が耳朶にかかる。
「ツナヨシ」と囁く低い声は、思いの外、甘く。
思わずびくっと震える体をザンザスはいとも簡単に組み伏せる。
硬い胸板とシートに挟まれ、両腕はザンザスの片手に拘束される。まるで手枷をはめられたかのように、びくともしない。
近づいてくるザンザスの顔を避けようと顔を背けると、あらわになった首筋を彼の唇が蹂躙する。いつもは冷酷な言葉を発する唇は、驚くほど熱く。
まるで炎で烙印を押されたかのように、ピリピリと肌を刺激する。
「ふっ・・・や、やだ」
ツナヨシの反応に気をよくしたザンザスは、さらに悪戯を加速させる。首筋にゆっくりと舌をはわせると、突然、がぶりと噛みついた。
「んぎゃ!」
肉食獣の甘噛みのつもりなのだろうが、場所が場所。頸動脈を押さえられ、ツナは固まった。ザンザスは、くくくと笑うと、トクトクと脈打つ血を舌先で堪能する。
痛みと驚愕に目を見開き、震えるツナだったが、脇腹をなでる不埒な手に気付くと、じたばたと抵抗を再開した。
「ふぎゃ、手!この手は何!何するつもり!」
「あぁ?オレのガキでも孕めばあいつらも諦めるだろ?」
「こどっ、バカ!いやだ!離せ!ばかぁ」
「うるせーな」
ツナヨシの抵抗を毛ほども気にせず、彼はシャツの裾を引きだす。シャツの内側にごつい男の手が潜り込んでくる。
「ツナヨシ・・・」
わき腹からゆるやかな曲線をなであげられるわ、耳たぶに噛み付かれるわ、吐息とともに名前を囁かれるわで、ツナヨシの体を電流が駆け抜ける。
思考回路はショート寸前。げ、限界だ。
「いやーーーー助けてーーーー」

―――ツナの叫びを聞きつけたわけではないだろうが、救いの手はすぐ背後に迫っていた。

作品名:結婚狂騒曲1 作家名:きみこいし