結婚狂騒曲3
《最終楽章》
門扉(故)を突き破り、先を争うように突っ込んでくるのは、黒塗りの高級車と、見かけ以上のタフさを発揮しているクラシックカーの二台だ。
そして彼らを追いかけて、後方を疾走するのはヴァリアー仕様の車。マーモンの念写でこの場を探り当てたヴァリアーの面々と、それに便乗したリボーンとコロネロ組だった。
先をゆく二台は、熾烈なカーチェイスの間も、互いに尽きることなく銃弾を浴びせている。
よくもまあ、これほどのスピードで疾走する車からあれほど正確な狙撃ができるものだと、平時なら感心するところだが、あいにくとそんな余裕はツナヨシたちには許されない。
二台の車は、ギャリギャリギャリと土を巻き上げ、砂煙とともにカーブを曲がりきると、ポーチにいた面々を轢き殺す勢いで突入してきた。
「ひぃ!来たーーーー」
「よけろ、ツナ!」「十代目!」「のわつ!」
あわてて飛び退いたツナ達を横目に搭乗者たちの地上壊滅(ハルマゲドン)的闘いは継続中だ。
蓄積されたドス黒い怒りのオーラに周囲の空間が歪んで見える。まちがっても、あの空間にだけは入ってはいけない。きっと煉獄よりも、地獄よりも、恐怖が支配する過酷な場所だ。
その恐怖をふりまく人間災害の筆頭たちというと、とっくに怒りの限界を振り切っていた。
「ちっ、いい加減うぜーな」
「ドカスが、かっ消えろ!」
ブチ切れた二人はそれぞれの武器を構えると渾身の一撃を放つ。ザンザスの二丁拳銃とリボーンのライフルが火を噴き、打ち出された炎弾と特殊弾が正面からぶつかった。
炎が炸裂し、熱と爆風があたり一面をふきとばす。
「ぐっ」「ちっ」
奇しくも互いに直撃は外れたため、乗員達にはたいしたダメージはみられない。しかし、今までの過酷すぎるカーチェイスを耐えてきた車には、致命的だった。タイヤが熱でバーストし、コントロールを失った二台の車はそのまま、屋敷横の林につっこむと、爆発、大破炎上した。
「リボーン!ザンザス!コロネロ!スクアーロ!」
何度殺しても死にそうにない極限に人間離れした彼らだが、あまりの爆発の激しさ(なにしろリボーンの銃弾とザンザスの憤怒の炎だ)にさしものツナヨシも悲鳴をあげる。
しかしその瞬間、ふたたび大きな爆発。そして炎と煙を突っ切って、四つの見慣れた人影が地面を転がる。所々着衣に焦げ跡が見られるものの、うんざりするほど無事なリボーンたちだった。
おそらくは、コロネロのマキシマムキャノンの一撃で炎を粉砕して飛び出してきたのだろう。彼のライフルの銃口からは白い煙がたちのぼっている。
「さすがリボーンさん・・・」
「なんつー反射神経してんだ。ふつー死んでるぜ」
絶句、驚嘆する獄寺と山本。あらためて、アルコバレーノとヴァリアーの戦闘力もとい、しぶとさを実感した二人だった。
その四人といえば、ほぼ同時にガバッと跳ね起きると、懲りずに再び武器をかまえる。
「てめーいい加減にしろよ」
「それはこっちのセリフだぞ」
「う゛ぉぉぉい、やってくれるじゃねぇか」
「いつでも相手になってやるぜ、コラ」
立ち上る炎を背景に睨み合い、剣呑で不穏な視線を飛ばし合う。
そこに、
「ボス!援護します」
「ししし、王子も殺る気まんまん」
「帰ったら報酬振り込んどいてね、ボス」
急停止した後続の車から、続々と降りてくるヴァリアーの主力メンバー。屋敷の庭は一気に臨戦態勢へヒートアップだ。
しかし、最後に運転席から降りてきたルッスーリアの一言でその場の空気がフリーズした。
「あらーーー!ツナちゃん、かわいい格好してるわね」
彼(彼女?)の声に、相変わらず睨み合い、戦闘態勢をとりながらも、皆がツナヨシを振りかえる。
――――すなわち、純白の婚礼衣装に身を包んだツナヨシを。
そしてその瞬間、恐怖の人間災害たちはものの見事に凍り付いたのだった。
彼らの中で、最も顕著な反応を見せたのは、コロネロだった。
顔面は急激な温度上昇をみせ、耳まで真っ赤。プシューと頭から湯気がたちのぼる。あまりに異常な発熱具合に心配になったツナヨシはコロネロに駆け寄ると、額に手を当てる。
「コ、コロネロ!大丈夫?」
「な、なななんのことだ、コラ」
「いや、何のことって・・・顔真っ赤だよ?
さっき、どっか打ったんじゃない?」
「んなことないぞ、コラ。いつもどおりだ、コラ」
「ホントに?」
「だ、だから、あまり近づくな、コラ」
「だったらいいけど、あんまし無茶しないでね」
ホッとはにかみ、笑いかけるツナヨシにコロネロ、ノックダウン。
対していち早くフリーズ状態から回復したリボーンとザンザスが、ツナヨシに歩み寄る。
「おい、ツナ」
「ツナヨシ」
が、しかし、同じくツナに近づく邪魔者に気付くと、二人は瞬時に行動にでた。ヒュッと風切音がしたかと思うと、リボーンの銃口がザンザスの心臓に、ザンザスの銃口はリボーンのこめかみに突きつけられていた。ごりっ、と音をたて互いの銃口を相手に突きつける。指はもちろんのことトリガーに。今の彼らにセイフティーガードなんぞ無用の長物だ。
「邪魔だ、どけ」
「死ね、アルコバレーノが」
睨み合うリボーンとザンザスに呼応するかのように、ヴァリアーに守護者、コロネロ、ディーノすらも武器を構えてあちこちで対峙しはじめる。
「十代目は、オレがお守りする」
「しっしし、おもしれー」
「ああ、ツナは渡せねぇな」
「う゛ぉぉぉい、それはオレを倒してからにしろ」
「ボスの邪魔はさせん」
「ランボさんの実力みせてやるんだもんね」
「極限ナイスファイトだーーー」
「あらーじゃあ、今朝の続きといきましょうか」
「オレも今回はツナ側につかせてもらうぜ」
「やってみろよ、跳ね馬。カテキョーがリボーンじゃ大したことないだろうがな。バイパー、てめーもまとめて片づけてやるぜ、コラ」
「むむ、ボクはマーモンだって言ってるだろう。
まったくこれだから筋肉バカは」
と、そこに相変わらずハイレベルに迷惑な戦闘を繰り広げながら、ムクロと雲雀が飛び込んできた。
「ツナヨシくんはボクがいただきます」
「何勝手なこと言ってるの。全員まとめて咬み殺す」
ピリピリと空気が張りつめていく。背中をイヤな汗がツツと流れる。ツナヨシは青ざめながらも制止の声をあげる。無駄とは理解してたが、諦められなかった。なにせ最大に被害を被るのはツナヨシなのだ。そう簡単に諦められるはずがない。
「や、ちょ、みんなおちついて・・・」
「「「「「うるせー!」」」」」
こんな時だけ、みごとにハモった。
皮肉にもツナの制止の声を合図にイタリアマフィア界屈指の戦闘力を誇る男たちが激突したのだった。
門扉(故)を突き破り、先を争うように突っ込んでくるのは、黒塗りの高級車と、見かけ以上のタフさを発揮しているクラシックカーの二台だ。
そして彼らを追いかけて、後方を疾走するのはヴァリアー仕様の車。マーモンの念写でこの場を探り当てたヴァリアーの面々と、それに便乗したリボーンとコロネロ組だった。
先をゆく二台は、熾烈なカーチェイスの間も、互いに尽きることなく銃弾を浴びせている。
よくもまあ、これほどのスピードで疾走する車からあれほど正確な狙撃ができるものだと、平時なら感心するところだが、あいにくとそんな余裕はツナヨシたちには許されない。
二台の車は、ギャリギャリギャリと土を巻き上げ、砂煙とともにカーブを曲がりきると、ポーチにいた面々を轢き殺す勢いで突入してきた。
「ひぃ!来たーーーー」
「よけろ、ツナ!」「十代目!」「のわつ!」
あわてて飛び退いたツナ達を横目に搭乗者たちの地上壊滅(ハルマゲドン)的闘いは継続中だ。
蓄積されたドス黒い怒りのオーラに周囲の空間が歪んで見える。まちがっても、あの空間にだけは入ってはいけない。きっと煉獄よりも、地獄よりも、恐怖が支配する過酷な場所だ。
その恐怖をふりまく人間災害の筆頭たちというと、とっくに怒りの限界を振り切っていた。
「ちっ、いい加減うぜーな」
「ドカスが、かっ消えろ!」
ブチ切れた二人はそれぞれの武器を構えると渾身の一撃を放つ。ザンザスの二丁拳銃とリボーンのライフルが火を噴き、打ち出された炎弾と特殊弾が正面からぶつかった。
炎が炸裂し、熱と爆風があたり一面をふきとばす。
「ぐっ」「ちっ」
奇しくも互いに直撃は外れたため、乗員達にはたいしたダメージはみられない。しかし、今までの過酷すぎるカーチェイスを耐えてきた車には、致命的だった。タイヤが熱でバーストし、コントロールを失った二台の車はそのまま、屋敷横の林につっこむと、爆発、大破炎上した。
「リボーン!ザンザス!コロネロ!スクアーロ!」
何度殺しても死にそうにない極限に人間離れした彼らだが、あまりの爆発の激しさ(なにしろリボーンの銃弾とザンザスの憤怒の炎だ)にさしものツナヨシも悲鳴をあげる。
しかしその瞬間、ふたたび大きな爆発。そして炎と煙を突っ切って、四つの見慣れた人影が地面を転がる。所々着衣に焦げ跡が見られるものの、うんざりするほど無事なリボーンたちだった。
おそらくは、コロネロのマキシマムキャノンの一撃で炎を粉砕して飛び出してきたのだろう。彼のライフルの銃口からは白い煙がたちのぼっている。
「さすがリボーンさん・・・」
「なんつー反射神経してんだ。ふつー死んでるぜ」
絶句、驚嘆する獄寺と山本。あらためて、アルコバレーノとヴァリアーの戦闘力もとい、しぶとさを実感した二人だった。
その四人といえば、ほぼ同時にガバッと跳ね起きると、懲りずに再び武器をかまえる。
「てめーいい加減にしろよ」
「それはこっちのセリフだぞ」
「う゛ぉぉぉい、やってくれるじゃねぇか」
「いつでも相手になってやるぜ、コラ」
立ち上る炎を背景に睨み合い、剣呑で不穏な視線を飛ばし合う。
そこに、
「ボス!援護します」
「ししし、王子も殺る気まんまん」
「帰ったら報酬振り込んどいてね、ボス」
急停止した後続の車から、続々と降りてくるヴァリアーの主力メンバー。屋敷の庭は一気に臨戦態勢へヒートアップだ。
しかし、最後に運転席から降りてきたルッスーリアの一言でその場の空気がフリーズした。
「あらーーー!ツナちゃん、かわいい格好してるわね」
彼(彼女?)の声に、相変わらず睨み合い、戦闘態勢をとりながらも、皆がツナヨシを振りかえる。
――――すなわち、純白の婚礼衣装に身を包んだツナヨシを。
そしてその瞬間、恐怖の人間災害たちはものの見事に凍り付いたのだった。
彼らの中で、最も顕著な反応を見せたのは、コロネロだった。
顔面は急激な温度上昇をみせ、耳まで真っ赤。プシューと頭から湯気がたちのぼる。あまりに異常な発熱具合に心配になったツナヨシはコロネロに駆け寄ると、額に手を当てる。
「コ、コロネロ!大丈夫?」
「な、なななんのことだ、コラ」
「いや、何のことって・・・顔真っ赤だよ?
さっき、どっか打ったんじゃない?」
「んなことないぞ、コラ。いつもどおりだ、コラ」
「ホントに?」
「だ、だから、あまり近づくな、コラ」
「だったらいいけど、あんまし無茶しないでね」
ホッとはにかみ、笑いかけるツナヨシにコロネロ、ノックダウン。
対していち早くフリーズ状態から回復したリボーンとザンザスが、ツナヨシに歩み寄る。
「おい、ツナ」
「ツナヨシ」
が、しかし、同じくツナに近づく邪魔者に気付くと、二人は瞬時に行動にでた。ヒュッと風切音がしたかと思うと、リボーンの銃口がザンザスの心臓に、ザンザスの銃口はリボーンのこめかみに突きつけられていた。ごりっ、と音をたて互いの銃口を相手に突きつける。指はもちろんのことトリガーに。今の彼らにセイフティーガードなんぞ無用の長物だ。
「邪魔だ、どけ」
「死ね、アルコバレーノが」
睨み合うリボーンとザンザスに呼応するかのように、ヴァリアーに守護者、コロネロ、ディーノすらも武器を構えてあちこちで対峙しはじめる。
「十代目は、オレがお守りする」
「しっしし、おもしれー」
「ああ、ツナは渡せねぇな」
「う゛ぉぉぉい、それはオレを倒してからにしろ」
「ボスの邪魔はさせん」
「ランボさんの実力みせてやるんだもんね」
「極限ナイスファイトだーーー」
「あらーじゃあ、今朝の続きといきましょうか」
「オレも今回はツナ側につかせてもらうぜ」
「やってみろよ、跳ね馬。カテキョーがリボーンじゃ大したことないだろうがな。バイパー、てめーもまとめて片づけてやるぜ、コラ」
「むむ、ボクはマーモンだって言ってるだろう。
まったくこれだから筋肉バカは」
と、そこに相変わらずハイレベルに迷惑な戦闘を繰り広げながら、ムクロと雲雀が飛び込んできた。
「ツナヨシくんはボクがいただきます」
「何勝手なこと言ってるの。全員まとめて咬み殺す」
ピリピリと空気が張りつめていく。背中をイヤな汗がツツと流れる。ツナヨシは青ざめながらも制止の声をあげる。無駄とは理解してたが、諦められなかった。なにせ最大に被害を被るのはツナヨシなのだ。そう簡単に諦められるはずがない。
「や、ちょ、みんなおちついて・・・」
「「「「「うるせー!」」」」」
こんな時だけ、みごとにハモった。
皮肉にもツナの制止の声を合図にイタリアマフィア界屈指の戦闘力を誇る男たちが激突したのだった。