詰め合わせ
・イギリスさんが狐の妖怪
・もちろん狐耳狐尻尾 人間に化け切れてないわけではないよ!あえて残してるんだよ!
・残してる理由は兄ちゃんの我儘よりにっさまの要望だといい←
・メリカは考えてなかった。狼か犬かなんかそんな感じ。尻尾見てたら大体機嫌がわかっちゃう分かりやすい子
・にっさまは神主とかだといいな。
・ただ、実際は兄ちゃん自身が気付いていないだけでアーサーが機嫌の良い時は兄ちゃんが構ってくれそうな日とかだといいな。
目の前で柔らかな尻尾が揺れる。
右に左にほわほわ揺れるその尻尾は、その尾の持ち主が機嫌の良いことを如実に表していた。
その尻尾は空気をふくんでいるのか触れるとすごくふわふわで、そして太陽の香りがするためフランシスのお気に入りだ。
しかし生来意地っ張りな性格であるらしいこの目の前の妖怪は機嫌の良い時以外はあまり触れられることを好まない。
では機嫌の良い時は触れられたがるのかといえばそうではない。
機嫌の良い時は単に触れるのを許してくれる、というだけである。
しかしこのチャンスを逃すわけにはいかない。
いつ次の機嫌の良い時が来るかなんてわからないからである。
この意地っ張りの機嫌の良くなる時というのは結構パターンがある。
例えば、菊が会いに来てくれた日。
例えば、アルフレッドがいつも通り家屋の何処かしらを破壊しつつも訪ねて来た日。
(いい加減妖怪の自身の力を自覚して欲しいところである。妖怪に家屋の修繕費を出せと言っても聞くはずもない。)
例えば、好きなご飯が出て来た日。
こうやって列挙するとこいつはなんて単純なんだろう、とすごくくすぐったいような、温かいような気持ちになる。
ただ、今回はどれにも当てはまらない。
珍しい例である。
機嫌の良くなるパターンはどれも、自分以外の他人が絡むものである。
他人が理由で機嫌の良くなったアーサーに甘えるのは、
甘えさせてくれる嬉しさのある反面、
正直なところもやっとするものも胸にたまるのをフランシスは自覚していた。
決して口に出したりはできないような、醜い嫉妬心である。
アーサーの世界は自分だけで完結するはずもない。
アーサーにはアーサーの、友達がいて、仲間がいて。
それに嫉妬することは間違っていることはよく分かっている。
分かってはいる、がそのもやもやを抑え込めるか否かは別問題である。
自分以外の人間の方がアーサーの中に入り込んでいる、と突きつけられているような、そんな気持ちになるから。
自分が一番、で、あってほしい、などという。
醜い嫉妬心を見せたくはない。
知られたからといって何を言われるわけでもないことも、分かってはいても。
ぽふり、と。
そこまで考えていたフランシスのお腹に軽やかな重みがかかる。
そっと、お腹を見下ろすとアーサーがお腹に顔を埋めていた。
ふるふる、とふるえる尻尾は未だにアーサーの機嫌が良いことを示していた。
単なる気まぐれかもしれない。
機嫌が良かったから故の行動かもしれない。
ただ、ふんわりとお腹にかかる重みと。
その尻尾の柔らかさと。
あと、
許されている、その甘えが。
これだけでもやもやがなくなるだなんて、
単純すぎて笑みがこぼれる。
アーサーが、とても強大な力を持っていることは知っている。
その強さ故にずっと孤独に生きてきたことも知っている。
こうして、あまり他人に甘えられないことも知っている。
だからこそ。
こうして、「甘えてくれる」優しさは、自分以外には与えられないことも知っている。
この特別は、もう少し自分だけのために残しておいてくれないかな、なんて舌先だけで転がして、声にはしない。
きっと、こいつの真っ赤に染まった耳が、それの答えだと思ってもうぬぼれではないだろうから。