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フジシロマユミ
フジシロマユミ
novelistID. 5831
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1991のアドベント

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「嫌だ!やめろ!ちきしょう!離せって・・あ、い、痛い・・・。」台所の戸口のところでドイツの腕から離れクロアチアが崩れ落ちた。
先ほど押さえた腹の辺りから出血し始め、ついには床に血だまりが出来てしまうほどだった。
「あ・・・、おい!しっかりしろ!気は確かか!」
苦しそうに息をして何とか返事をしようとしているが、声にならない。ようやく出た言葉がこれだった。
「あ・・・ブコヴァル・・・が・・・ブコヴァル・・・・みんな・・どこかに・・・・みんな・・・死んで・・・」
「え!なんだって!死んで・・って」

ブコヴァルはクロアチア北部、セルビアとの国境の町だ。かつて町には多くのセルビア人とクロアチア人が共存して暮らしていたのだが、この独立戦争が始まった頃からお互いに激しい戦いが行われていた。それは、ブコヴァルだけではなかったのだが、特に酷かった戦闘が行われていた。それこそ装備が十分な連邦軍に対するクロアチア軍・・・軍とは言ってもこの時点では民兵に毛が生えた程度のものだったが、この二つがどの家を奪うかで争うと言う後に「クロアチアのスターリングラード」とも呼ばれるほどの市街戦だったという。この年の八月から戦闘が始まっていたと言うことはドイツも知っていたのだが、どうもこのクロアチアの様子からすると、連邦軍に「陥落」されたようだ。それも、かなりの酷い状態で陥落したのではないか、つまり、国の似姿が大怪我の状態と言うことからも、予想は付いた。

とりあえず、止血をとバスタオルを取りにドイツは向かった。戻ってみると、三匹の犬、アスター、ブラッキー、ベルリッツが横たわったクロアチアのそばに血だまりも気にせずぴったりと寄り添っている。
戻ってきたドイツの姿を見るとベルリッツがワン!と吠え、台所のオイルヒーターのところへ行き、しきりに爪で引っかき始めた。
ようは暖房をつけろと主人に命じているらしい。
そうだ、自分は気が付かなかったが、この日は外で食事をしていたので、台所は使っていなかった。だから火は使わないし、まして暖房なんてつける必要も無かった。しかし、このミュンヘンの別宅は石造りの古い家だったので、当然暖房をつけなければ冷え切っている。
いくらクロアチアが「台所でいい」と言っても、怪我人を冷え切った部屋にいさせるのはあまりにも酷い。

「・・・だめよ・・・・ワンちゃん・・・おいたしちゃ。パパに怒られちゃうよ・・・。」

パパ・・・え!なんて言った・・・・おい!急にそ・・そんなこと・・・・

しかし、戸惑ってばかりもいられないので、そばに駆け寄り犬をどけると、クロアチアの出血しているわき腹にバスタオルを当てて包帯を巻く。
下手に動かすと出血が酷くなるので、とりあえずその場に横にしたまま、床に広がった血だまりの始末をしようとした。
すると「・・悪かった・・・・。本当はこんなことではなかったんだが・・・。」とクロアチアが小さな声でつぶやく。
「悪いも何も・・・そんな状態でよくミュンヘンまで来たほうが、どうかしている。しかし・・・、其処までして、俺のところに来たのはよほどのことだな。・・・まさか・・」

まさか、武器とか、兵士とかを派遣してくれじゃないだろうな、しかし、自分だけだったら、命の危険を冒してまで遠いところまで来たこいつのために、何か手助けをしなくてはならん。しかしだ。事はそう簡単ではない。こいつに肩入れしたとなったら、他の国、フランスとロシアが黙ってはいないだろう。イギリスもそうだ。こいつらは、昔からセルビアと関係があって、フランスはあの革命のときにセルビアが手助けしたらしいし、ロシアは同じスラブ人ということから、何かと裏で手を回しているし、イギリスはWW2のとき以来何かとセルビアの肩を持ったりしているし。
それに、今回ばかりはあのイタリアですら、セルビアとともに連邦軍として残ったモンテネグロと取引しようとしていたし。アメリカも「バルカンのことは苦手だし」と言う態度だったし。
こいつ・・・クロアチアには・・誰も・・・いない・・・・。