彼岸花
闇夜にポツン・・・・・・と、紅い花が一つ咲いていた。
魔実也は屈んでその茎を手折った。
ほんの少しだけ肌寒くなったこの時期に、取り残された様に咲いている花。
ここは。
秋になると彼岸花が群生して咲く場所だった。
そして。
ある少女が強姦されて、殺された場所だった。
少女の遺体はもうないのだけれど。
少女の思念だけがとり残された。
秋になればその少女の身体から流された血を己の糧とし、少女の思念で鮮やかに花が咲く。
そして、毒々しくも鮮やかな紅い色で。
繰り返し繰り返し己の記憶としてまた再生するのだ。
「なかなかの見物だったけどね」
魔実也はうっすらと笑った。
それから興味を失った様に彼岸花を落として、魔実也は闇に消えた。
そして後に残ったのは、紅い花。
彼岸とこの世の接点を持った・・・・・・・花。
fin.