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Kiss & Cry

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――夜中にふと目が覚めたら枕元に座って覗き込んでくる白い影が。
 
 そんな怪談あったよなぁとか。最初に思ったのはそんなことで。
 やべぇ、何か変なモン憑れてきちゃった?とか思ったのは一瞬。直ぐにそれがよく見知った姿であることに気付いて俺はほっと息を吐く。
「………どーした?こんな夜中に」
 枕元に置いた目覚まし時計はちょうど丑三つ時を指していた。怪談にはうってつけの時間だ。こんな時間に枕元に座るのはちょっと心臓に悪いから止めて欲しい。
 しかし相手がそういう常識とかを持っているかはちょっと疑わしいなぁと思いつつ、人の枕元で律儀に正座していた零を見上げれば、零は少し困ったような顔をして首を傾げた。
「起こしてしまって、済まない。君の起床時間まで待っているつもりだったんだが…」
「……正座して朝まで待たれてたらそれもそれで驚くっつーか」
 相変わらずド天然なコト言ってくれるなぁと苦笑て俺は布団から身を起こす。温まった布団から出てしまえばひんやりとした冬の冷気が皮膚を刺して痛い。こんな寒さの中でまったくこのコは何をしてるんでしょうかね。
「オマエそんな薄着で。風邪ひくぞ」
 乾燥する空気で喉をヤられるのが嫌で暖房をつけずに寝る俺の部屋は室内とは言え結構寒い。羽毛布団と2枚重ねの毛布にくるまってぬくぬく寝てた俺と違って、朝子先生が用意してくれたアイボリーの寝間着姿で上に何も羽織らないなんて格好の零に、寒い部屋の中に正座してるなんて何の修行デスカ?と聞きたくなるものの、聞いたら聞いたでまたド天然なセリフが返ってくるだけだろうなと想像がついて、俺は無駄な口を利くよりもその見ている方が寒い姿を何とかすることを優先することにする。
「……千馗?」
「見てる方が寒いから」
 さっきまで蓑虫よろしく包まっていた毛布を一枚引っ張り出して被せてやれば、不思議そうに目を瞬かせる零につい苦笑する。なんかコイツってほんと弟みたいだ。いや、俺は一人っ子で兄弟なんていないから、弟ってこんな感じなのかなぁって思うだけだけど。因みに白は妹ね。気が強くて我侭でツンデレな妹。そういえば、そんな妹と言う生き物が居るなんて世のお兄ちゃんたちって羨ましいよなぁと以前に言ってみたら、中学生の妹が居ると言う燈治に呆れたような顔で「いや、世の中の妹が全部ツンデレなわけじゃねェだろ。しかも妹に萌とか普通はありえねェし」とツッこまれて、えええ、妹=ツンデレ=萌って世界標準のお約束じゃなかったのかとちょっとサンタクロースを否定された子供の気持ちになれた。世の中は無常だ。

「ありがとう、千馗。とても暖かい」
 毛布を肩から被せてやって、それじゃ足りないかと巻きつけるようにしてやると、零が微笑んで、その顔がまた可愛い。思わず頭を撫でてやれば白とよく似たふわふわの羽毛のような髪の感触が指に心地良い。白にこれをやると「子供扱いするでない!」と怒鳴られるんだけど、零は穏やかに微笑んだままだ。うわ、癒されるなぁコレ。

「で?何かあったのか?」
 ずっと撫でていたい欲求に指をわきわきさせつつも、改めて零の前に座り直し、向かい合って尋ねれば零はやっぱりちょっと困った顔をした。ううん?どーしたんだ、ほんとに。

「ずっと、君に聞きたかったことがあって」
 黙って待つのとかあんま得意じゃないんだけど、零を相手にするとついお兄ちゃんぶりたくなって。こんな夜中に真剣な顔して俺の枕元に座ってたくらいなんだからきっとコレは大事な話しなんだろう。根気良く零が口を開くのを待っていればやがて零がおずおずと切り出した。
 ――ずっと聞きたかったこと?
 何だろ?呪言花札をめぐるアレコレはつい先日解決したし、それについて今更聞きたいことなんてあるんだろうか?しかもずっと?  
「君は、壇と恋人同士なんだろうか?」
「――――」
 首を傾げる俺を子犬のような純粋な目で見つめた零が次の瞬間に口にした言葉に、俺は思いっきり硬まった。
「千馗?」
「………あ、あの、な。零。どこでそんなコトを…っ」
 不自然に声が上擦るのはこの際仕方ないことだと思って欲しい。それくらい衝撃的な言葉だった。
 いやいやいや。何で。どーして。誰がこんなコトを零に吹き込んだ!?

「前に君と壇が洞の中で接吻しているのを見てしまって」
「……」

 爆弾二発目キタ━━━━━━┌(_Д_┌ )┐━━━━━━ !!!!!
 じゃなくて!!!!
 しまった。その発想は無かった。そうか、見てたのか。見られてたのか。そういえばコイツ、姿くらましてる割には妙にこっちの動向には詳しかったもんな。あれか。影から見てたってコトか。そうか。それじゃあ仕方な…くねェよ!!!

「接吻と言うのは恋人同士で行われる愛情行為のひとつだったと思うんだが。しかし君は壇のことを親友だと言っていたし、壇も君の事を親友で相棒だと言っていた。確か友人関係では接吻と言う行為は行われなかったと思うんだが…俺の情報の誤りだろうか?」
「………」
  
 誰か助けて!千馗のライフはゼロよ!
 真っ直ぐな目がメテオ並みの攻撃力なんだけど!

「もしかして、君と壇は親友であり相棒であり恋人同士であると言うことなんだろうか?人間同士にはそういった多重の関係性も存在するんだな、そういえば」
「………」
 
…すみません、もう許してください。
 ああああああ!!!なんだコレ!!なんで夜中にこんな思わぬ攻撃受けてんの俺!?
 しかも当事者って俺だけじゃなくね!?燈治にも責任あるだろコレ!?なのに何で俺だけこんな、「お父さんとお母さん、昨日の夜お布団の上で何してたの?」攻撃受けてんの!?
 
「千馗?」
「………零。それには深い事情があってだな」

 ようやく言えたのはそんな言い訳にもならない言葉で。いや、事情があるのは嘘じゃない。そうだ。確かに零が言うとおり、俺と燈治は零の言うところの接吻とやらをしたことがある。零が見たのはたぶんあの時だ。あの時ってのは、いちるから花札の封印には執行者の命が必要なんてとんでもなく重たい話を聞かされた数日後のことで。
 俺は敢えて重たい空気を引き摺らないように振舞うつもりで、何時もの通りクエストの消化の為に燈治を誘って洞に潜ったんだけど、その日の燈治は何だかやたらにナーバスになってて。俺も俺でうっかり花札で作った武器の副作用で視力を失うようなミスをして。そうだよ、お互いに変だったんだよ、あの時は。ちょっと特殊な精神状態だったんだ。
 切欠は何だったかよく覚えてない。ただ、気がついたら燈治に抱き締められていた。抱き締められて、よくわかんないけど恥ずかしいのと妙にくつぶったい気分と泣きたいような気持ちがぐっちゃぐちゃになって。

 そうだ。燈治が。
燈治が真剣な顔で、あんなことを言うから。

「千馗、大丈夫か?何だか顔が赤く…」
「――だ、大丈夫!つーか零!そのことに関しては、だな!ちょっとした間違いってヤツだ!」
「間違い?」
「そう!ほら、ちょっと酔っ払っていい気分になって隣の人とハグしてちゅーしてみたらあら男だったー、みたいな!」
「……ハグして、ちゅー…」
「つまりだな。深くツッコんじゃいけない。そういう類のコトだ」
作品名:Kiss & Cry 作家名:ゆうや