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こんぺいとう

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「ユー…子ども相手にいけないですよ…。」
そこには彼らの兄、金剛が冷たく男を見下ろしていた。榛名と男の間に立ちそう言い放つ、ゆっくりとした口調だったが、男を竦ませるには十分だったようだ。ヒッ…。と呻きながらペコペコと頭を下げると、男は早足で向こうへ行ってしまった。しばらくポカンとする榛名と霧島。
「ユー達は、大丈夫ですか?」
にっこりと話し掛ける金剛。先程までの威圧感はどこへやら。
コクコクと頷く二人に金剛はすっと目を細める。「そうですか…よかった。」
「ありがとうございます!こんごー兄様」「あ、ありがとうございます。」
お礼を言う弟たちを見つめ、いえいえ。と金剛は二人の頭にポンと手を置いた。
「おや、榛名…。金平糖をプレゼントしようとしていたのですか?」
榛名の握る自身が渡した小瓶を見つめて、金剛が)尋ねると榛名はコクリと頷いた。
「ほれ、金平糖!きりにもやる!」
榛名は瓶から赤いそれを取り出すと、霧島に手渡した。「あ、ありがとう。」と言う霧島。しかし榛名のもつ金平糖を見ると、なにやら難しい顔をして俯いた。
自分の瞳と同じ、あおいろの金平糖。
俯く霧島に眉をひそめた榛名は彼の顔をばしっと両手で掴む。思いッきりぱしんといい音がしたが、音の割にはあまり痛くなかったようだ。むにゅーと頬をつねる榛名に困惑しながら霧島が抗議の声をあげる。
「にゃ…にゃにしゅるのれあう!ひゃうにゃ!」
「なに辛気くさい顔しとんや!」
榛名の言葉にポカンと呆ける霧島。後ろで見ていた金剛もじっと彼らの様子を見ていた。
「言わせたい奴には言わせとけばええんや!そないクヨクヨするんやない!」
まっすぐな鳶色の瞳が空色の視線とぶつかる。
「…お前は…いやではないのか?」
「…?いやってなにをや?」
榛名が尋ねると、霧島は掴まれた指を退け、せき止められた水が勢いよく流れ出るように震えた声で叫んだ!
「わ、私の目の色だ!!」
「いややない!」
「ウソだ!」
「ウソやない!!」
即答する榛名に叫ぶ霧島だが、榛名の目は霧島から離れることはない。
「そんなこっ!!…」
ぺしん。
小気味よい乾いた音が響く。否定の言葉を口にしようとしていた霧島に榛名がその額にデコピンしたのだ。額をおさえる霧島に榛名は畳み掛けるように言い放つ。
「えぇい!この分からず屋が!!お前の目の色俺はいややない!!」
「…っ…。」
榛名の言葉に霧島の瞳がゆらりと揺らぐ。そんな様子を後ろで見ていた金剛はそろそろ止めようかと構えた…が、その前に榛名が霧島の手を握る。
「お前は日本国のせんかんなんやで!日の国の、お日さんの国のふねなんや!」
お前の瞳の色、お日さんをずっと側で守ってる青空と同じ色なんやで!
霧島がまだ握っていたあかい金平糖を前にだして、榛名は続けた。
「だからいやなんかやない!お前も胸張ってりゃええんや!」
…霧島の瞳からポロリ、ポロポロ…と涙の粒がこぼれ落ちた。いつも、いつもいつもまるで化け物を見るような目で見られていたと言うのに、目の前のこいつはどうしてそんな言葉を言える…言ってくれるのか。
ただ…涙が止まらなかった。あふれてくるように止めどない涙が瞳からこぼれ落ちていった。

「泣きたいときは思いっきり泣けばええんやで。」
にかっと笑う榛名に、霧島ははっとして、ごしごしと袖を顔にこすりつける。未だに涙で濡れた顔をこすって赤くしながらもいつもの調子で榛名に言い返した。
「な、泣いてなんかないのである!!」…明らかにバレバレの嘘だったが、霧島がいつもの調子に戻ったことへか、はたまた彼が立ち直ったことへか、榛名は笑みを濃くして霧島にまた減らず口を言い放つ。いつもの調子でいつもの口喧嘩を、いつものように。

そんな二人を少々離れて見守りながら、金剛がポツリと口をこぼす。
「…お日サマを守る空ですか…。」
「あなたも同じですよ。金剛兄様。」
ポツリとこぼした言葉を聞かれるとは思わなかった…。しかし特別驚いた様子もなく金剛が後ろに目をやると
「いつからいましたか?比叡。」
「ご想像にお任せしておきましょう。」
ふっと現れた比叡に何も言わない金剛だが、その視線の先は二人とも同じものを捉えていた。同じような優しげな目で彼らの弟を見つめながら。
彼らの未来を見つめながら…。



「…よっしゃあ!!じゃあ決着は試合で決めようや!!」「よかろう!!乗った!!」
「仲は悪くはないと思うんですがね…。」「たまにはぶつかるコトも大切だと思うがね。」「そうですか、ね…。」

金平糖みたいにあまくまるく、彼らの未来に幸多きことを。


***
作品名:こんぺいとう 作家名:橙路