you are my hero.
静雄は、能力的にはモンスターだが、その力を抑制しようとしているので、モラルは高い。暴力を振るうことに、常に言い訳を求めている節がある。そんな中で、悪意、悪行としか言えない方法で自分に近づく臨也には、公然と暴力を奮える。いや、法的に許されることではないが、静雄のモラルでは、臨也は『いつでも全力で暴力をふるっていい相手』として認識されているのは明らかだ。
悪意と暴力で、二人はゆがんだ共依存の関係を結んでしまっている。
臨也はどこまで自覚しているのだろう。どこまでも理解しつつ、最後の1ピースだけを意図的にはめようとしない、そんな風に思えた。
それは、おそらく…。
***
それでも、事件のあと、うまくやろうとしていたんだ、俺は。
でもね、昨日はゴメンね、なんて声をかけた人間の鼻柱を折る奴だからね、アイツは。処世術というのを知らなさすぎるよ。とりあえずやり過ごすのが大人でしょう。まあ、あいつはいつまでも小学生レベルだけどね。
それからは滅茶苦茶だった。
俺がちょっとした企みを始めると、警察犬みたいな嗅覚でかぎつけて滅茶苦茶に壊していく。気がついてなくても壊す。軽くからかうと壊す。破壊神以外の何者でもなかったね。
俺は人間を愛しているから、殺しには手を染めない。常識人だし、犯罪も犯さない。でも、あいつだけはいつか殺してやろうと思ってる。もはや人間ではないからね、あれは。
もちろん、自分の手は汚さずに。
俺はあいつが嫌いだ。あいつだけが、嫌いなんだ。
あいつさえいなければ、人生は満ちたりて、幸せになると思うよ。
そうしたら、好きなように生きるんだ。今でも好きなようにしているけどね。今以上に。思い通りに、なにもかも、想定どおり、味気なく、希薄に…。
それはもしかしたら、すこしだけつまらないことかもしれないな、と思いながら。
作品名:you are my hero. 作家名:さわたり