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【DRRR】本音【臨帝】

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 時間はもう夜中だ。新宿の街は閑散としている。
 池袋だって、夜の時間になってもあれだけうるさかったのに、今はもう客引きも見当たらず、煌々とした光を放つ看板はいくつもあったが、中の喧騒までは届かない。
 帝人くんのアパートの近くにくれば、いっそ人が誰もいないんじゃないかと錯覚するくらい、静かで、何の気配もしなかった。

 こんな世界は寂しい。
 誰もいない。でも誰でもいいからいて欲しいわけでもない。
 寂しいよ、帝人くん。

 簡素すぎる鍵をこっそり作った合鍵で開けて、慣れた手つきで家に入る。
 もう何度こうして夜中に忍び込んだことだろうか。
 いつもは翌日に繰り広げる予定の作戦を頭の中で練りこんで、帝人くんの行動パターンを予測して期待して、たまらなく楽しい気分で彼を見、そして荷物を探ったり、仕掛けを施したりしていたんだけれど。

「寂しいよ、帝人くん」

 君が眠っているのがこんなにも寂しい。目を開けたところでまた俺を否定して拒まれるんじゃないかと思うと苦しい。
 あ、そうか。
 これって、恋なんじゃないの?

「み、みか…」

 泣きそうになった。だってこんな熱情、今まで誰もくれなかった。教えてくれなかった。
 誰かから誰かに向けられているのは知っていても、自分から誰かに向かうところなんて想像も出来てなかったんだ。
 俺が愛したら、愛して、くれるんじゃなかったのかな。
 昔に読んだ本に書いてあった、おままごとみたいな人間と人間との関係の築き方。
 人に愛して欲しいなら、まず自分から愛しなさい、と。
 でも俺はこんなにも人間を愛しているのに、人間の方は俺のことをみんな嫌っている。

 彼も、そうだ。
 俺今日もう、フラレちゃったんだ。

「…う~…」

 自分が出したとは思えない情けない声が漏れて、視界が歪む。
 笑いすぎて涙が出る以外で、自分が泣くことなんていつ以来だろう。ごくごく幼い頃にしかそんな記憶はない。
 泣き方なんか当然知らないし、止め方もわかんない。
 どうしよう。

「―――臨也、さん―――」
「…っ!!」

 突然名前を呼ばれて、ビクッと顔を上げる。
 帝人くんはまだ眠っているように見えた。寝言、だったんだろうか。俺の夢、見てるのかな。
 …夢の中の俺は、まだ帝人くんと話をして、名前を呼んでもらえてえるんだ。
 いいな。
 帝人くん、俺にもう飽きたって。起きてもまだ、俺のこと、呼んでくれるかな。
 自分が今まで「飽きた」と言った人間について思い出してみる。ことごとく完全なまでに自分の周りから排除して、その後、彼らがどうなったかも知らない。そのほとんどの名前や顔も思い出せない。
 俺も、そんなふうに扱われちゃうとしたら。

「う、うう~…」

 そんなの辛すぎる。
 本当は、俺がこんなにも愛しているんだから、君にも愛して欲しい。
 でもでも、もう嫌ってもいい、憎んでもいいから、俺の方を振り向いて欲しい。
 無視しないで、俺のこと存在しなかったみたいに切り捨てないで。
 俺が再び帝人くんの顔を見上げるのと、そのまつげがゆっくりと震えるのは、ほぼ同時だった。
 薄っすらと開いた目が、ここにいることを知っていたように、横に座る俺のほうへ向く。

「……おはようございます、臨也さん。…夜中に、不法侵入ですか?」

 普段通りだ。
 その優しい目で俺のことを真っ直ぐ見て、ちょっと棘のある言葉で微笑んで、名前を呼ぶ。


「…おはよ、帝人くん。…どうしても、そうしなきゃならない理由があったものだから、ね」

 俺、まだ見捨てられてないのかな。
 そう思ったら、悲しいわけじゃないのにまた涙が出てきて、自分でも情けないことに止められない。
 きっとまたうんざりされる。
 俺、拒否される。
 なのに君は、その細い腕を伸ばして、俺の肩と頭に手を乗せた。そのまま、ゆっくりと引っ張られ、俺は帝人くんの小さな腕の中に、抱きしめられる。

 ああ、俺は人間全部じゃない、全然それとは比べものにならないぐらい。

「俺は、”君”を愛してる」

 言った。
 言ってしまった。
 もう戻れない、引き返せない。どんな言葉で覆そうとしても隠せない。
 
 でも帝人くんの優しい拘束は、突き放すことはなく、予想していたように頷いて、さらに柔らかく強く力を込めた。

「僕は―――」

 俺はもう、全ての人類に愛を求める必要はないようだ。