赤い糸
夜遅くまでうとうととプロイセンがテレビを見ていると、頭上から呆れ気味の声が降って来た。のろりと見上げると、そこには風呂上りのドイツの姿があった。
「兄さん」
「んあ、なんだよ、ヴェスト」
寝ぼけていたプロイセンはクッションを抱えながら、目元を擦った。テレビを見ていたはずが、意識が途切れていたようだ。いつの間にか、違う番組が画面から垂れ流しになっている。
欠伸をすると、目尻に涙が浮かんだ。
「もう遅い。そろそろ、寝たほうが良い」
しかし、心配そうに忠告する声も、プロイセンには届かなかった。船を漕ぐようにゆらゆらと揺れた挙句、ソファの肘置きを枕にした格好で転がってしまう。
唸る声もくぐもった。
「兄さん」
今度は優しく、ドイツはプロイセンを案じる。
しかしプロイセンは優しさを拒み、このまま放っておいてくれと体を丸めた。自分の体温で温めたソファが、今は一番心地良いのだ。
だが、ドイツが簡単に引くはずも無く、再度忠告が突きつけられる。今度は、少し怒った声だった。
「兄さん、だらしのないことはやめてくれ」
「ん、っっせーなあ……いいじゃねえかよ、俺もう眠いんだって。今日はここで寝る」
「兄さん……」
弟は、気難しく、神経質で、ルールというものが好物だ。もう少し柔軟に育ってくれても良かったのに、とプロイセンはもごもご唸り、涙の浮かぶ目尻を擦った。
「動きたくねえ」
「眠るなら、部屋に戻ってからにしてくれ。風邪もまだ完全には治っていないのだろう?」
「俺様は頑丈に出来てるから平気だって」
「そう言って、治り掛けからいつも悪化させるのはどこの誰だ?」
「う……」
図星を指されたプロイセンは、逃げるように視線を逸らした。
数日前から、プロイセンは風邪を抉らせている。雪の中を、子供のように散々駆け巡った挙句、ろくに体を乾かしもせずに、疲れたと寝転がっていた為だ。
ドイツの外出している間のことだったので、更に酷く叱られた。
しかし、既に熱も喉の痛みもほとんど引き、症状は和らいでいる。いつまでも心配するものではないんじゃないか、とプロイセンはそろりと上目でドイツを覗いたが、いつものように流されてはくれない様子だ。
プロイセンは、ちぇ、と唇を尖らせた。
「わかったって、戻る。戻ればいいんだろ」
「兄さん」
「んあ、なんだよ、ヴェスト」
寝ぼけていたプロイセンはクッションを抱えながら、目元を擦った。テレビを見ていたはずが、意識が途切れていたようだ。いつの間にか、違う番組が画面から垂れ流しになっている。
欠伸をすると、目尻に涙が浮かんだ。
「もう遅い。そろそろ、寝たほうが良い」
しかし、心配そうに忠告する声も、プロイセンには届かなかった。船を漕ぐようにゆらゆらと揺れた挙句、ソファの肘置きを枕にした格好で転がってしまう。
唸る声もくぐもった。
「兄さん」
今度は優しく、ドイツはプロイセンを案じる。
しかしプロイセンは優しさを拒み、このまま放っておいてくれと体を丸めた。自分の体温で温めたソファが、今は一番心地良いのだ。
だが、ドイツが簡単に引くはずも無く、再度忠告が突きつけられる。今度は、少し怒った声だった。
「兄さん、だらしのないことはやめてくれ」
「ん、っっせーなあ……いいじゃねえかよ、俺もう眠いんだって。今日はここで寝る」
「兄さん……」
弟は、気難しく、神経質で、ルールというものが好物だ。もう少し柔軟に育ってくれても良かったのに、とプロイセンはもごもご唸り、涙の浮かぶ目尻を擦った。
「動きたくねえ」
「眠るなら、部屋に戻ってからにしてくれ。風邪もまだ完全には治っていないのだろう?」
「俺様は頑丈に出来てるから平気だって」
「そう言って、治り掛けからいつも悪化させるのはどこの誰だ?」
「う……」
図星を指されたプロイセンは、逃げるように視線を逸らした。
数日前から、プロイセンは風邪を抉らせている。雪の中を、子供のように散々駆け巡った挙句、ろくに体を乾かしもせずに、疲れたと寝転がっていた為だ。
ドイツの外出している間のことだったので、更に酷く叱られた。
しかし、既に熱も喉の痛みもほとんど引き、症状は和らいでいる。いつまでも心配するものではないんじゃないか、とプロイセンはそろりと上目でドイツを覗いたが、いつものように流されてはくれない様子だ。
プロイセンは、ちぇ、と唇を尖らせた。
「わかったって、戻る。戻ればいいんだろ」