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10years

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後藤は降参するように両手の平を上げて見せた。
「まぁ俺が勝手に思ってるだけだ。仕事に持ち込みやしない。だからお前は安心して…」
そこまで告げると思わず目を見開いた。
視界がふいに暗くなって、達海が椅子の上で膝をついたまま伸び上がり自分に抱きついて来たことを知る。
そして次の瞬間には唇に温かい感触が伝わった。
達海のまつ毛が瞬くのが見えて、そこでようやくキスをされたと気づく。
「…なんで俺の意見聞く前に結論を出すんだよ、後藤」
不敵な笑みが浮かぶのを目にして、後藤はようやく我に返り声を張りあげた。
「た!達海!お、お前、突然何す…!」
「いい歳してリアクションが十年前と同じとかすごいね、後藤」
「お前こそ監督なんてやって少しは大人になったかと思ってたら、いつまでもガキみたいな悪戯をしかけやがって!」
「それは誤算だったな。お悔みをいうよ」
「…ったく。知らないからな」
昔から達海に口で勝てた試しはない。早々に諦めると、黙って目の前の人を抱きしめた。
めまいがするほど懐かしくて、愛おしいぬくもりだ。
こんなシーンはこの十年夢で何度も見た。けれどこれほどまで胸が熱くなるような温かさは、一度だって感じたことは無い。
これが確かな現実であると教えてくれる誰よりも愛しい人。
諦めかけていた人生で一番大切な人が、今またこうして自分の腕の中に居るのだ。
それだけで奇跡のような出来事で、だからこそ一層相手のことが大切でたまらない。
「達海…達海…」
名前だけを何度も繰り返し呼ぶと、背中に回った腕が後藤を力強く抱きしめ返してくれた。
「…後藤」
「うん」
そして今度は互いにゆっくりと、大切に唇を重ねていく。



「あ、しまった!今何時だ!荷造り!」
我に返った後藤がベッドの上から跳ね起きたのは、この地の日付が変わって三時間もしてからのことだ。
「んー、いいよ。そんなのどっちでも」
後藤の肩の上へすり寄るようにして眠りの続きをむさぼるかわいい顔には、ついほだされそうになる。
しかし何とかそれを振り払うようにして体を起こすと、ベッドの下へ散らばった二人分の衣服をかき集めた。
「おい、達海起きろ。服を着ろって」
「脱がせたり、着ろって言ったりいそがしいなぁ」
「ああ、ああ俺が悪かったよ。だから起きてくれ。朝には業者が来るんだ。荷作りしないと」
「んー…大丈夫。必要最小限のものは詰めたよ。…あとは置いてく」
「お前なぁそうは言っても」
「んー…」
シーツの下から伸びてきた少し細い手が後藤の腕をつかむと、そのまま見かけによらない強い力で引き寄せられる。
「うわ、こら達海」
「大丈夫。俺、これさえあればいいから」
微笑むその人の顔を眺め、後藤は諦めたようにもう一度キスをした。
作品名:10years 作家名:ミナト