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ネイビーブルー
ネイビーブルー
novelistID. 4038
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力の名前

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「見えるはずのないものを見る力がある。遠く離れた物であったり、過去であったり、曖昧だけど未来もね。もっとも、ぼくは滅多に未来は見ないけど」
「どうして」
「厳しい修行を積んで手に入れたんだよ。もっとも才能がなければいくら修行しても無駄だけどね。……家系なんだ。そして、千里眼を持つ物がジムを守るという掟」
 彼のそれは、素質を除けば生まれつき持っていた物ではないという。しかし努力して得た物でも、人が持っていない物であると他者はそれを迫害する。
 また、それが千里眼なら尚更だ。
「ぼくを怖がる人は多いよ。何でもお見通しだと思ってるみたい。勘違いなんだけどね? ぼくだって、さっきみたいに集中しなきゃ何も見えないさ」
 マツバは肩をすくめるが、Nは彼を少し恐ろしいと思っている自分に気づき、恥じた。人にない能力なら、自分にだってあるのに。それ故父親に目をつけられ、「化け物」と呼ばれるような存在に育て上げられたのに。
 ……生まれつきであるが故に、自分のほうがむしろ、化け物に近いかも知れないのに。
「マツバ」
「なんだい?」
「ボクにも実は、人にない力があるんだ」
 それ故化け物と呼ばれたとは言えなかった。自分でも考えているより、ダメージが大きいようだ。マツバは何も言わなかったが、気づかれている気がした。それは彼が千里眼を持っているからではなく、彼の気が細やかだからだ。
「ボクはね、ポケモンと会話が出来る」
 そう言うと、彼は「あ、やっぱり?」と言って、安心したような顔をした。その反応にNはぽかんとする。今までこの話をすると、誰も彼もが疑うか、ぽかんとするかのどちらかだったのだ。あの英雄ですら、ぽかんとしていた。それなのに、マツバは「あ、やっぱり?」……やはり彼は千里眼により、Nがポケモンと会話が出来ることを知っていたのだろうか?
「簡単な話だよ。今日、傷ついたサニーゴとその兄弟と、君は話をしていただろう」
「うん」
「君は本当に会話をしているように見えたよ。トレーナーのなかには、自分のパートナーとまるで言葉が通じているような振る舞いをする人たちもいるけど、それはあくまでパートナーだからだ。野生のポケモンと話せる人なんていない。……だけど、君はどう考えても意思の疎通が出来ているみたいだったから、ひょっとして、ポケモンの言葉が分かるんじゃないかと思って」
「……気味が悪くないの?」
「どうしてだい?」
 Nが尋ねると、逆に尋ね返された。
「素晴らしい能力じゃないか。ぼくも欲しいくらいだよ」
 Nがポケモンと会話が出来ると知ったとき、ゲーチスは喜んだ。しかし彼は、自分もその能力がほしいとは言わなかった。プラズマ団も、このことを誇りに思っているようだった。だがその中の誰も、羨ましいとは言わなかった。自分では持ちたくない類の能力で、それ故自分は化け物なんだと思っていた。
 けれど彼は、羨ましいという。
「マツバって、変わってるよね。君の思考回路を数式化して欲しいくらい」
「そうかな。君のほうが変わっていると思うけど」
「……その台詞は解せないな」
 ふ、と笑いが漏れた。こんな気分になったのは初めてだった。マツバもちょっと微笑んで、「人にない物はね、誇れば良いんだ」と言った。
「ぼくを化け物と呼ぶ人がいるように、君のその能力も、一部の人間には気味悪く映るのかも知れない。でもね、そんな一部だけの評価を気にすることはないよ。ぼくは素晴らしいと思う。それじゃあ駄目かな」
「駄目なわけがないよ。ボクも君の力をそう思う」
「ありがとう」
 傷の舐めあいともとれる言動だったが、その時は素直にそう思った。そして、改めて自分の力を考える。
 もしこの力がなかったら、あのサニーゴは救えなかったかも知れない。
 もしこの力がなかったら、あのサニーゴは兄弟に会えなかったかも知れない。
 だとしたら、この力があって本当に良かった。
「マツバ」
「なんだい?」
「ありがとう」
「なんだよ、そんな改まって」
 照れたように微笑む彼の表情は柔らかく、視線は温かい。ジョウトに来て始めに出会った人間が彼で良かったと、心底思った。
作品名:力の名前 作家名:ネイビーブルー