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もうひとつの日常2

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独立国家やまとの先輩・・・?




「シーくんグリーンティよりオレンジジュースが良いですよ!」



オレンジジュース・・・、やまなみ、いや、独立国家やまとの一員となった船員達は無意識のうちにそう呟いて、お互いの顔を見合わせる。・・・・オレンジジュースなんて、そんなもの艦に積み込んだだろうか?いや、そもそもこの金髪の子供はいったいどこから・・・?――――独立国家やまと、そう海江田が世界へ向けて宣言した。いよいよこれからだ、そう誰もが顔を見合わせ息を呑んだ瞬間、発令所に子供の声が響いた。


「独立国家なんですね!シーくんの後輩です!」
えっ、と振り返った先に、セーラー服を着た金髪の少年が目をきらきらと輝かせて立っていたのだ。









「だからぁ、シーくんは人間じゃないんですってば!国家なんですよぅ」


潜水艦の艦内。訓練された適正のある人間でなければ狭い潜水艦で海底へ行くことに恐怖や不安を覚え、中には過呼吸やパニック症候群を起こすものもいるというのに、少年はさきほどからそんなことばかりを言いながら不貞腐れたように唇を尖らし、隊員のひとりからもらったチョコレートにかぶりつきながら、ぺらぺらとそんな事を話し出し、潜水艦のこの異様な雰囲気にも脅えた様子がまるでない。日本人離れした容姿でありながら、ぺらぺらと日本語も話しているようだし、もう隊員達はワケが分からない。いや独立国家として今、今まさに世界を動かそうとしているんだ。そんなときに、こんな場所で全員揃ってノイローゼで幻覚を見るようではいけない・・・!!!



「でも潜水艦が国だなんて、前代未聞ですよー。シーくんはまあ立派な海洋国家なんですけど、潜水艦のせいかどうもいつもと勝手が違うみたいですね。国が出てこないです」
「・・・・・・・その、国、というのはなんだ?」

副長、副長ほらがんばっ、と内海に背中を押され、頭痛のする頭を押さえながら山中は恐る恐る訪ねる。聞きたいような、聞きたくないような。いや、こんなわけのわからない子供に構っている暇なんてどこにもない。だがしかし、こんな子供程度が侵入できるような国家最高機密の潜水艦ではこの先が思いやられる。まずは子供の目的、侵入経路などを聞いておかなくてはいかん。これがまだ大人の男であれば尋問でもなんでもできるが、この無邪気で論理的な思考パターンなどまるでない子供を相手にするのはどうも気が重い。自分が子供に好かれるタチではないのはよく理解しているからだ。



「国は国なんですってば。だーかーらー、国が生まれると国も生まれて・・・」
「それで、君はその国家の象徴のような、人間でない存在だというのだね?」
「か、艦長!」
ちょっと考えさせてくれ、と艦長室に篭っていたと思われた海江田の登場でその場の皆の表情がぱっと明るくなる。どう考えたって、このわけの分からない子供の相手など自分達の手には負えない!!だがシーくんの表情も輝いた。



「やっと話のわかるやつが出てきたですよ!」
「おい、やつだと?このお方は・・・!」
「国の上司ですよね、それくらい知ってるですよー、もうカクガリは黙ってろです」
「か・・・っ」
言葉もでない角刈り・・・山中を手で下がらせて、シーくんに向かい合うように海江田は椅子に腰を下ろして微笑んだ。



「それで、その国である君は、この原子力潜水艦である“やまと”を国として認めたからここへ現れた、という事だね?」
「そういうことですよ!やぁっと話が通じたですよ!シーくんは常に世界の最先端から最小国家を応援するです!」


そういうわけで、シーくんが先輩として友達になってやるです、とそれはもう嬉しそうに微笑んだ少年に海江田を除くその場の全員がどっと溜息を漏らすが、海江田はにこにこと人好きのする笑みを浮かべているばかりで、山中はイライラとじれったく思う。今はこんな事をしている場合ではないのだ。国家として宣言したからには、これから米軍や自衛隊、そしてソ連からの追尾が始まる、これからという要なのだ。このわけの分からない子供を相手していい訳では・・・!!!ああ、艦長おおおお!!!そんな子供は無視して、早く作戦指揮を・・・!!




「少なくとも、先ほどの独立宣言がこうして“国”に影響を与えているという事が分かった事に、私はまずは満足している。君は国家の“言霊”のような存在なんだろうからね」
そんな山中のじれったさを我慢できない心の底での咆哮が聞こえたのか、海江田はくるりと山中に目線を向けて微笑んだ。
「しかし、自分にはまだ信じられません。こんな子供が・・・国家であるなんて・・・・・」
「子供じゃないですよ!そりゃ見た目は子供ですけど、シー君は1967年に独立したですよ!」
「・・・・・・ほとんど俺とかわらない年なのか・・・」
「内海、海図を」


えっへん、と威張りかえったシーくんと、途方に暮れる山中をさらりと無視して内海にとりにいかせた海図をその場に広げる。今自分達が航海している場所をシーくんに教えてやりながら、そのシー君の“本体”であるはずの国はどこにあるのか指を指させると、シーくんが指差した場は海だった。島でも陸でもない、海であり、山中は内海と顔を見合わせる。
しかし海江田はふむ、と少し考え込んだかと思えば、シーくんと海図を見比べて微笑んだ。


「君は海上要塞だね?」


えっ、と更に顔を見合わせた面々と、ぱぁっと表情の輝いたシー君。「ビンゴですよ!!!」と嬉しそうに笑って、やまとは頭が良いですよ、すごいですよ、と無邪気にはしゃぐ様子に全員が頭痛を覚える。どうやってわかってですか!?シーくん有名人?と海江田の鼻先まで顔をくっつけて喜ぶシーくんに海江田は微笑む。


「ここは世界大戦中に英国によって海上要塞や海上プラントの作られた海域だ。まさか、とは思ったが、シーくんの体の大きさや外見の年齢、そしてシーくんの言った1967年に独立という言葉から考えてそれ以前に建設されたものだろうと考えればすぐ分かることだよ」
「いっやぁ、すごいですよ!どっかのカクガリとは大違いです!!」


もういやだ・・・・・・!!!と頭を抱えて叫びたくなるのをぐっとこらえる。国?言霊?海上要塞?ああ、もう意味がわからない!!!自分は艦長ほど感性が豊かでもなければ、科学や言葉で説明のできぬことを信じられるほどの心の持ち主ではないのだ!!!できることならさっきの米軍にこの子供をタグボートなりなんなりに乗せて引き渡してやればよかった!!!



「おっと、どうやらお客が来たようだ」
海江田が微笑んだとき、溝口が声を上げる



「艦長!!たつなみです!!!」










「我が国へようこそ、深町艦長」
「は!こんな野朗ばかりで国家か!」
「ぴっちぴちのシーくんもいるですよー!」
作品名:もうひとつの日常2 作家名:山田