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恋文

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栄口へ

封筒に名前は書かなかったけど、きっと栄口はこの手紙を誰が書いたかなんて一瞬で分かっちゃったんだろうね。俺はそれが嬉しくて、少しだけ悲しいんだ。
だって、それってまるでノートに書いてある自分の文字を見て当たり前みたいにそれが自分のノートだってことが分かっちゃうのと同じでしょ?
俺のこと考えてももう、栄口はきっとドキドキしたりとかしなくなったよね。
付き合い始めたばっかりの頃は、朝の挨拶なんて当たり前なものを交わすだけでも顔と耳を真赤にして笑ってくれたのに、最近の栄口はおはよーって眠そうに返してくれるだけ。
……最初はね、それでも別にいいかなって思ったんだ。
当たり前みたいに俺が栄口の隣や、心の中にいるってことで。それって凄いことじゃない?って、思ってたんだ。
前みたいにひまわりみたいに笑ってくれなくても、きっとそれが栄口の素なんだなーって思った。だから嬉しかったんだよ。こんなに近づけたって。
でもさ俺不安なんだ。
俺ばっかり栄口のこと好きなんじゃないかって思って。キスだってしてくれるけど、でもいつも俺がねだって栄口が渋々許してくれるみたいな、感じでしょ?
信じてるよ。うーん違うな。信じたいんだ。だって俺は栄口のことが今でもずっと大好きだから。愛してるって、なんか口にすると重みが無いみたいに聞こえるけど。
神様なんて信じて無いから、俺は栄口に誓うよ。
だからさ。俺たち、昔みたいに戻れないかな。
電話もメールも繋がらなくて、会えなくて。どうしたらいいのか分からなかったから手紙にしたんだ。
読んでもらえたのかな。
もしこの手紙が読まれもせずに捨てられてゴミ箱にこの手紙があるんだったら、俺はどうやって生きていけばいいの?
……読んで無かったらこの気持ちも伝わらないのか。でも、いいんだ。
俺は、栄口がいるから毎日が楽しくて、輝いて。……うん。
鬱陶しかったらごめんね。
だから、これで最後にするよ。大好き。これだけは、信じてくれる?

作品名:恋文 作家名:東雲