恋文
水谷へ
下駄箱開けた瞬間にびっくりしたよ。
まさかお前がこんな強引な手段に出るなんて思わなかったからさ…。そりゃ確かにメールも電話も無視して、部活以外じゃ徹底的に顔合わさないようにしてた俺が悪いんだけど…。
でもさ、やっぱり嬉しかったんだ。あの封筒を見つけたのはミーティングのあとの日誌を書いて一人で帰る時で、誰も周りにいなかった。だから、手に取るまでにすごく時間がかかったんだ。
もしあの場に泉とかがいたら、「さっさと開けろよ栄口!」とか言って背中叩いてくれてたんだろうけど。あいつ最近俺がおかしいって気づいて一人にさせてくれるんだ。最初は何かあったか聞いてくれたんだけど俺が何も言わないから。
優しいよね。だけどさ、俺は泉と同じくらい、ううん、泉よりもお前の方が優しいんじゃないかって思ってる。
お前の優しさがさ、俺には大き過ぎたんだ。
温かくて優しいから、ついお前に甘えちゃうよ。どこまでもお前が許してくれるから、気を抜いていいんだって思った。無理して笑わなくても、いいんだって思った。
お前が寂しがってるのも、物足りなさそうにしてたのも気付いてたけどでも、見てみぬふりをしたんだ。底抜けに優しいお前はどこまで許してくれるだろうって、試したかったのかな…。
言い訳をさせてくれるなら…さ、俺この間お前が呼びだされるの見たよ。クラスの女子も水谷のことすごく褒めてて。実はこの間呼び出された女子いたろ?うちのクラスの子なんだけど、水谷に手紙を渡してくれないかって頼まれたんだ。
それを頼まれた瞬間に、カッとなっちゃって…。勿論手紙を渡すのとか、そういうの普通に考えて良くないだろうから断って正解なんだろうけど。
でもさ、そんな建前なんかじゃなくて。俺、お前とそういう風に見られないっていうのが、悲しくてたまらなkった。公言なんかできるわけないし、お前よりも隠すのに必死だったのは俺だったのに、だよ。
自分で自分が分からなくなった。
だから、一度くらいなら距離を置いてもいいかなって思ったんだ。
俺もお前が好きだよ。お前がそうやって言ってくれるのすごくうれしくて、堪らないんだ。
お前がもしこれを読んでくれたら、きっと俺恥ずかしくて素直になんてなれないんだろうけど、でもさ。
俺もお前になら誓ってもいいよ。お前のことが、自分でもびっくりするくらい好きなんだ。