恋文
「さかえぐち!」
そろそろ来る頃だろうと思っていた予感が的中した。
随分前のことだけれど、すきだと言われて頷いてから毎日この時間に水谷は間に挟まれた教室をいくつも駆け抜けて俺の教室まで来てくれた。
あのときと同じように、大好きな茶色の髪を揺らしながら走ってくる。
「水谷」
あの頃と同じように彼を迎えようか、それとも何か彼の意表をつくような言葉で迎えようかと一瞬迷った。けれど、結局俺はいつだってこうやって迎えるしか無い。
「「廊下は走っちゃだめだろ」」
小さく肩で息をする水谷に向かう気持ちが溢れてくる。好きで、仕方がない。
「屋上行こうか」
頷いて肩を並べて歩く。
今日からまた始めれば良い。
だって今日は、付き合い初めて丁度一年半の記念日なのだから。