ゆめみごと
安心させるような声色で白蘭が言うと、ゆっくりとまぶたを開かせて、正一の口元が綻んだ。ほっとしたような、嬉しそうな顔をして、それから再びまぶたを閉じる。隠れた緑色。深く上下する胸は、正一が今度は完全に眠りについたことを白蘭に知らせていた。
(行かないで、かぁ)
どっかに行っちゃうの、正チャンのくせに。近いうちに正一は日本のメローネ基地へと発つだろう。そういった物理的な別離だけではないことを、白蘭は知っていた。もうとっくに別離は始まっているのだ。それもたぶん正一の方から。それなのに。
「…これだから正チャンは」
このどうしようもない気持ちが伝わってしまえばいいのに。なんて、相変わらず握ったままの正一の左手から伝わるのは、どうしようもない熱だけだった。