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敵わない人

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帝人は思う。己の恋人は百獣の王のようだと。
あの髪色や、力に身を任せている姿だけでそう言っているわけではない。
静雄の中身を知っているからこそ、そう思うのだ。

「トムさん、昔から思ってたけど静雄さんってライオンみたいですよね」

「・・・なんでまた?」

トム、と呼ばれた男は苦笑を零しながら高校時代の先輩である帝人を見る。
帝人はそんなトムに笑いかけると、今一度目の前で『戦争』と言われる行為に没頭している男を見つめた。
獣のような咆哮を上げ標識を引っこ抜き、それを振り回す。空気が揺れる音がやけに大きい。
帝人は瞬きするのも惜しむかのように、金色の獣を見つめ付けた。

「あの姿から、そう見えたわけじゃないんですよ。ただ、僕の中でライオンって言うのは孤高で、気高くて、
絶対に群れないけれど、己の群れの雌に危害を加えようとする他の雄には容赦ない、そんな姿が似ていると思ったんです」

「帝人さんは本当に静雄が好きなんっすねぇ」

トムは苦笑をそのままに、帝人が見つめ続けている男を見た。
帝人とトム、そして静雄は高校時代を共に過ごした。といっても3人一緒にいたのはほんの1年。
静雄が入学してきたときに帝人は3年で、トムが2年だったからだ。
けれどよくこの3人で遊びに行った。もっぱら帝人がトム経由で静雄を誘うという形が多かった。
帝人は学園でも一二を争う美人で、告白などは日常茶飯事。しかも頭も良く面倒見がよい。
男に媚びるわけでもなく、また媚びてくる男を毒舌ではねのける高嶺の花。
男なら絶対に放っておけない女性だった。けれど、帝人はそれだけの女性では断じてなかった。
彼女の裏の顔、それは池袋を根城とするダラーズの創始者であり、ネットの申し子。
知っているのはごく僅かな身内のみだったが、帝人の実力は確かだった。
彼女に目を付けられた者はこの池袋にはいられない。それは大人も例外ではなく。
高校時代、まだ静雄が入学してくる前の事だ。トムに絡んでくるあるカラーギャングが存在した。
トムがダラーズの顔だという噂が立ったため、ある日大怪我をおってしまう。
入院中帝人が見舞いに来たとき、トムは帝人のあまりの消沈ぶりに小首を傾げた。
理由を聞いてみたが帝人は首を振るだけで、何も答えてはくれなかった。
帝人が見舞いに来たのはそのたった一度きり。寂しくなかったと言えば嘘になるが、学生の身分で早々何度も病院には来られないだろうと納得した。
そして何だかんだかんだで漸くトムは退院して、あの絡んできたカラーギャングがどうなったのかを調べてみると、
池袋から跡形もなく消えていた。噂埃一つもない。これは明らかにおかしいと思ったトムは、すぐさま帝人に尋ねた。
あの時の帝人の笑顔を、トムは忘れないだろう。帝人は笑った。にっこりと。けれどあの蒼い瞳には怒りがありありと見て取れ、
いつもは可愛らしく見える笑みを絶対零度の笑みにしていた。

『トムさんを傷つけのに、この僕が野放しにしているわけがないでしょう?』

その時、トムは心に決めたのだ。絶対にこの女性を怒らせてはいけないと。
その裏の顔のせいであの折原臨也にも目を付けられたようだが。

作品名:敵わない人 作家名:霜月(しー)