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あへんちゃん公爵
あへんちゃん公爵
novelistID. 1390
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【イザシズ】 プレゼント 【オリジナルキャラ有】

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 目的のビルに到着しました。いよいよその瞬間です。おとうさまは柄にも無く緊張した様子でした。十六年もかけた計画です。当たり前の反応です。わたしはおとうさまの手を握りました。わたしという存在でおとうさまが救われるのです。緊張などなさらないで。わたしは、自分を、最高の作品だと、最高のプレゼントだと自負していますよ。おとうさまがチャイム押すと「あれ?勝手に入ってきていいのに」とインターホン越しに声がしました。どうやらわたしの姿はカメラが捉えなかったようです。
 目的の階に到着し、おとうさまが大きく深呼吸しました。おとうさまの夢が叶うのです。世界は貴方の思い通りだわ、おとうさま。
「やあ、シズちゃ…ん…そ、っちの子は?」
「プレゼントだ」
 頭のいい彼でも一度に理解するのは不可能だったでしょう。彼はわたしの存在を知らないからです。知られてはいけなかったのです。
「とりあえず、中に、入って・・・・・」
 わたしがプレゼントという事を理解できないのは、折原臨也だけの話ではありません。わたしとおとうさまにしかわからないのかもしれません。わたしは折原臨也にプレゼントされる為に生まれ、育ってきたのです。おとうさまの計画は高校時代まで遡ります。

 おとうさまと折原臨也は男同士でありながら強く惹かれ合い、付き合うようになりました。おとうさまは折原臨也に抱かれ、彼の女になりました。言い方は悪いかもしれませんがそういうことです。そして折原臨也はおとうさまにこう言いました。
「シズちゃんの子が欲しいな」
 勿論それは不可能です。おとうさまは性別上『雄』ですので。それと、ただ単に平和島静雄の子供が欲しかった訳では無かったでしょう。折原臨也と平和島静雄の子が欲しかったのだと思います。それに、不可能と分かっていても、つい口を付いて出てしまった言葉だったのでしょう。彼にとっては何気ない一言だったのです。
 おとうさまは表面には出しませんが、この折原臨也の事を誰よりも愛していましたし、誰よりも大切にしていました。そこでおとうさまは自身で子供を作り、その子供、つまりはわたしですが、を、折原臨也に捧げようと考えたのです。深い愛があればこその『贈り物』です。おあつらえ向きにわたしは女性に産まれました。折原臨也が欲しがっていた平和島静雄と折原臨也の子も産む事が出来ます。

 もうお分かりいただける事とは思いますが、わたしは折原臨也の子を産むためのプレゼントなのです。手塩にかけて育てられた平和島静雄の愛の形なのです。
 おかしいですか?わたしはそうは思いません。わたしは愛するおとうさまの幸せがそこにあるのならば何でもします。今までもそうでしたし、これからもそうです。

 折原臨也は驚き、ただ黙ってしまっています。青天の霹靂というやつでしょうか?分からなくも有りませんが。愛する恋人にそっくりな隠し子が居て、しかも突然その子供を自分にプレゼントだ、と連れてこられた訳ですから。常軌を逸しています。わかっています。でも折原臨也に拒否権はないのです。
 何故ならわたしはおとうさまが用意した最高のプレゼントだからです。おとうさまと折原臨也に愛されてこれからも生きていくのです。もしかしたら折原臨也はわたしを愛さないかもしれません。それもいいでしょう。それだけ折原臨也がおとうさまの事を愛しているという事だからです。
 わたしはおとうさまの願いどおり折原臨也の子を孕み、愛するおとうさまを更に喜ばせたいのです。子はきっと可愛いでしょう。男の子ならおとうさまにきっとそっくりな子で、女の子なら眉目秀麗な折原臨也似の美人が生まれてくる事でしょう。今から楽しみです。
 こういう愛し方がある事を、知っておくのも悪くないと思いますよ。