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好物=甘いもの

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友人宅で、季節外れの鍋パーティーをやるから来いと誘われた。

人並みはずれて切れやすい自分は、昔からパーティーなどというものには縁がなかった。
小学生の頃にやる「お誕生日パーティー」なんかにも呼ばれたことがない。

いや、何度かあったか?
あったにしてもきっと何もしないうちに何かに切れて暴れて色んなものを破壊していくうちに呼ばれなくなったんだろう。
覚えてねえし、まあ、当然だ。


だが、今回は知り合いばかりの気が置けないメンバーだから大丈夫だと。
そう言われて珍しく参加しようという気になった。

一度も切れることなく、今日の仕事を順調に終えた静雄はいつもより
非常におだやかな気分だったからだ。

日々の糧をジャンクフードでまかなっている自分には季節外れであっても「鍋」という料理は魅力的である。

仕事で少し遅れると連絡を入れ、はるばる足を運んでみれば、
鍋パーティーは既に始まっており、和気あいあいとした楽しい雰囲気が自分を迎えてくれた。

日々のほとんどを「取立て」なるものに費やす自分にはトゲトゲしてない空気のほうが珍しい。
並んだ顔ぶれを見れば、新羅やセルティのほか、門田や遊間崎など、たしかに見慣れたメンバーがそろっていて
これならば、と思った。


そんなとき、聞き覚えのない声が
自分の名を呼ぶ。


「え?」



振り返って、声の持ち主を見る。
脱色などいっさいしていない黒髪を短く切った、童顔の少年。


「あー…お前……?(誰だっけ?)」


相手は自分の名前を呼んだのだから、自分のことを知っているのだと思う。
だが、自分にいたっては全く心当たりがなかった。

思い出そうとして、いる内に向こうが慌てだした。。


「あっ!す、すみません、僕、竜ヶ峰帝人っていいます!し、静雄さんとは初対面ですよねっ!!…す、すみません!」


真っ赤になって、あわてて自己紹介をはじめる少年が自分のことを“静雄さん”と呼んだ。
ああ、やっぱりさっきの声はこいつだったか。

「お前…今、静雄って…」
「っ!!わあっ…すみませんっ!僕、初対面なのに馴れ馴れしかったですよねっ!!すみませんっ平和島さんっ」

ここまで人は赤くなれるのかと思うほどに、少年の顔は真っ赤だ。


「いや、別に構わねえし、静雄でいい」

もう一度、こいつの声で自分の名前を聞いてみたかった。
さわやかで、瑞々しくて、耳に甘い。

「え、と、で、でもっ」
「いいから」

慌てふためく竜ヶ峰を見かねたのか俺と竜ヶ峰の間を割るようにセルティのPADがヌっと目の前に差し出された。

『すまん、静雄と帝人は初対面だったよな、彼は竜ヶ峰帝人、私の友人だ』

りゅうがみね…み?



作品名:好物=甘いもの 作家名:しば