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パロ詰め合わせ2

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1.ねこたりあ



 朝は新聞を取り込む仕事から始まる。
 アメリカのように身体がおおきくも、便利な手足がついてるわけでもない自分にとって新聞をリビングまで運ぶのはけっこうな大仕事だ。
 それが終わったら今度はベッドルームにアメリカを起こしにいく。目覚まし時計がふたつもあるうえに携帯のアラームもセットしているのに、なぜかアメリカはきちんと起きることができなくて、よく大慌てで部屋を飛び出していくのだ。そうなると、ひどいときにはご飯を忘れられてしまうときがある。それを回避するためにも、自分で起こしにいくようにしているのだ。
 ほんのすこしだけ開けておいてくれるベッドルームの扉をすり抜ける。室内にはまだカーテンがかかっていて、隙間から太陽の光が細い線になってベッドの上に模様を描いていた。そのベッドの上で、安らかな寝息を立てているアメリカに近づく。仰向けで寝ているので横顔しか見えないけれど、幸せそうな寝顔だ。
 このまま眠らせておいてやりたいが、朝ごはんを抜かれるのは死活問題である。ベッドの下で助走をつけて、思いっきりベッドのうえに飛び乗る。すると「ぐえ」といううめき声が聞こえ、シーツの中の身体が一瞬びくりと震えた。
「ちょ、また、この起こし方かい……相棒」
「にゃーん」
 当然だ、と言うと、アメリカがゆるゆるとまぶたを押し上げて迷惑そうに言った。
「でも相棒、今日はオフをもらったから起こしてくれなくて大丈夫なんだぞ」
 か細く、消え入りそうな声でアメリカはそう言い、胸元に置いていた腕をばたりとベッドの上にちからなく倒れた。
 なんだ、今日はおやすみだったのか。がっしりとしていて安定感のあるアメリカの胸の上に座りこんで「にゃーお」と鳴くと、相棒はちろりと瞳をこちらに向けてちょっと気の抜けた笑みを浮かべた。
「でも、きみにはオフとか関係ないもんね。朝ごはんにしようか。おなか減ってるだろう?」
「みゃーお!」
 さすが俺の相棒だ。よくわかってる。
 幸せな気分でベッドから飛び降りると、続けてアメリカも立ち上がる気配がした。ベッドルームの扉の前まで小走りに近づいて、背後を振り返る。アメリカはまず窓に近づいてカーテンと窓ガラスを押しあけ、嬉しそうに「今日も良い天気だぞ、相棒!」と声をあげた。それに「にゃう!」と答えると、アメリカがこちらを振り返って「だよね」と笑う。正直なところ、早くご飯にしようと声をかけたのだが通じていなかったようだ。
 ベッドメイキングもそこそこに、アメリカは扉を抜けてキッチンへと向かう。きっちりと栓をしてあるおおきなガラス瓶からカリカリをお皿に注いで、水も新しいものに取り替えてくれる。
 アメリカも朝ごはんを作るようで、冷蔵庫からたまごとベーコン。それにトースターにパンをセットした。カリカリに焼いたベーコンのおいしさを知っているだけにあれを見てしまうと我慢ができない。あとでもらおうと決めて、がつがつとカリカリをかきこむ。
 トースターから香ばしいにおいが漂い始めた。アメリカは機嫌良くハミングしながらフライパンにベーコンを置こうとした、そのときだ。
 リンゴーンと玄関ベルの音がリビングにも響いてくる。空になった皿を舐めるのをやめてアメリカを見あげると、彼も首をかしげてこちらを見下ろしていた。
「こんな早くにだれだろう?」
「にゃーお」
 不思議そうにつぶやいて首をかしげながら、アメリカは玄関に向かって歩いていった。ついていくこともないので、乾いたのどに水を流し込むことに専念することにする。
 しばらくすると、玄関の扉を開く音がした。続けてアメリカの声と、それに答える別の男の声が聞こえてくる。聞き覚えのある声だ。たしかアメリカが「イギリス」と呼んでいた人物の声だった思う。
 水の入っている皿から顔を離して、玄関の方へ視線を向けてぺろりと口元を舐める。扉が閉まる音がして、室内にふたりぶんの足音と話し声がリビングにゆっくりと向かってきた。それとどうじに、いままで嗅いだことのないにおいが鼻に届いてきて首をかしげる。
 相棒のアメリカのにおいでも、よく家にくるので覚えたイギリスという男のものでもない。いうなれば、自分とおなじ四足のにおいだ。
 リビングにアメリカとイギリスがもどってきた。そして、イギリスという男は黒いカバンのほかに、籐で編まれたバスケットを持っている。しかもあの形には見覚えがあった。たしか外に連れだされるときにアルフレッドに有無を言わさず突っ込まれる、ペット用キャリーバックとか言うやつだ。
 あのバックがリビングに入ってきてから、気になるにおいが強くなった。なんだろうとテーブルの上に飛び乗って、アメリカの顔を見あげる。彼は子どもみたいに輝いた笑みを浮かべて、キャリーバックとイギリスを交互に見つめていた。
「きみが猫なんて信じられないぞ」
「なりゆきでな。……それで、ほんとはこんなことおまえに頼む義理もなにもないんだが、」
「義理とかほんとーにきみは頭が固いな! 困ったときはお互い様さ。それにうちには相棒もいるし、猫を飼うことでは俺のほうが先輩なんだぞっ」
 アメリカが胸を張っていうと、イギリスは苦笑いを浮かべてうなずいた。そしてキャリーバックをテーブルのうえにそっと乗せて扉を開き、中からタオルケットを取り出す。
「体調が良くなくて、家にひとりで置いておけないんだ。仕事も外せないし、だから、頼めるか?」
「もちろんだぞ!」
「あんまり食欲ないんだけど、飲めそうだったらミルクをやってくれ。これが哺乳瓶で、こっちがミルク。人肌に温めてくれな」
「オーケー!」
「休みのところ、ほんとに悪いな。仕事が終わったら飛んで帰ってくるから」
「お土産頼むぞー」
「バーガーとアイス、コーラもつけて買ってくる」
「わお! 楽しみだ」
「ほんと、頼むな」
「大丈夫、ちゃんと看ておくから。ほら、仕事遅れるぞっ」
 イギリスは不安そうに眉をしかめたまま腕時計を確認してうなずき、タオルケットの中に手を突っ込んでぐりぐりしてから慌ててリビングを出ていった。アメリカはその背中を追いかけて玄関に行ってしまう。
 慌ただしい声をテーブルの上で見送り、姿が見えなくなってからちろりとタオルケットに視線を向けた。においは強くするが、なんの変哲もないただのタオルケットに見える。イギリスはこれをどうしてアメリカに預けていったのだろうとタオルケットに前足をかけて中を覗きこみ、驚いた。
 自分とおなじ猫がいた。しかも、自分よりも身体がずっとちいさい。真っ白な毛のところどころに茶色い模様がある、耳の垂れた子どもの猫がタオルケットに包まってぶるぶると震えていた。
「きみ、だれだい?」
 声をかけるけれど子どもの猫はぴくりとも動かない。眼をつぶって、丸くなって、ずっと眠っているだけだ。
 無視されているのだろうか。触れば反応するかなと右手を伸ばして子どもの腹のあたりをちょいとつついた瞬間に、背後から「こらっ」とアメリカの声が聞こえてきた。
「悪さしちゃダメだぞ!」
「にゃーう」
 そんなつもりじゃないんだぞ、と必死で弁明するが、当然のようにアメリカには通じない。悪い子はこうだぞと、すこし乱暴にごしごし頭を撫でられて、ぐわんぐわん世界が揺れた。
作品名:パロ詰め合わせ2 作家名:ことは